グランビルの法則で８つの売買タイミングを知る

　移動平均線による相場の分析手法では、「グランビルの法則」が一般的です。「グランビルの法則」は米国の J.E. グランビル（Joseph E. Granville）が考案したもので、主に200日移動平均線を使用した分析手法です。 相場に携わる多くの人たちが使用しており、数多くのテクニカル分析の中でも代表的な手法として知られています。売買転換サインは以下のイメージ図ように8つのパターンに分類され、これを「グランビルの 8 法則」といいます。

4つの買いサイン

下向き基調にあった移動平均線が横ばいになるか、上向きつつある局面で、価格が移動平均線を上に突き抜ける。これは重要な買いサインとなる。	価格が上向き基調にある移動平均線に向けて下落し、交差した後にすぐに再び上昇に転じる場合は買いサインとする。
価格が上向き基調にある移動平均線に向けて下落したものの、交差することなく、再び上昇に転じる場合は買いサインとする。	価格が下向き基調にある移動平均線からかけ離れて下落した場合、自律反発の可能性が高く、買いサインとなる。

4つの売りサイン

下向き基調にあった移動平均線が横ばいになるか、上向きつつある局面で、価格が移動平均線を上に突き抜ける。これは重要な買いサインとなる。	価格が上向き基調にある移動平均線に向けて下落し、交差した後にすぐに再び上昇に転じる場合は買いサインとする。
価格が上向き基調にある移動平均線に向けて下落したものの、交差することなく、再び上昇に転じる場合は買いサインとする。	価格が下向き基調にある移動平均線からかけ離れて下落した場合、自律反発の可能性が高く、買いサインとなる。

　以下の図表は、ドル円相場と200日移動平均線の推移です。実際、上記イメージ図のように明確には判断しづらい面もありますが、「グランビルの 8 法則」のサインが所々で確認できます。

　グランビルの法則のうち、最も重要なのは、「買いサイン①」と「売りサイン⑤」です。過去、200日間の平均値である200日移動平均線は投資家の売買平均コストに近いといえます。
　株式市場で例えると、移動平均線よりも株価が下に位置することは、この期間の買い方は平均的に評価損を抱えていることになります。移動平均線近くに株価が戻った場合、売り注文を出したいという心理が働き、手仕舞いの指値売りが出て株価は上に抜けにくい。一方、株価が移動平均線を上回ってくれば、買い方の評価損が評価益に変わります。評価益になると買い方の心理は強気に変化し、売り控えの動も出てきます。加えて、信用取引でカラ売りをしている売り方は買い戻しを急ぎ、結果的に株価上昇に勢いが付くことになります。
　一方、株価が天井近くになるともみ合い場面となり、移動平均線も次第に上昇力が鈍ります。株価が移動平均線よりも上に位置する間、買い方は強気を堅持し押し目買いの姿勢をとります。しかし、次第に株価が下落してくると、移動平均線の上昇力はさらに鈍化し、株価が移動平均線を下回れば買い方の評価益が評価損に変わり、心理が弱気になって手仕舞いすることや、信用取引の買い方の見切り売りも加わり、株価はさらに下がります。

　「グランビルの法則」では、価格推移は移動平均線の傾く方向に強い力が働くことを理解することができます。長所には、
（1）価格と移動平均線のみで簡便に利用できる
（2）トレンド判断と売買サインが明快に決められている
（3）視覚的に理解しやすい
などがあります。短所には、
（1）移動平均線は価格に遅行するためリアルタイムでの天底の判断には使いにくい
（2）トレンドが転換した場合にダマシが出やすい
（3）上下にかけ離れた場合の定量的な把握が難しい
などがあります。そのような短所の克服方法としては、
（1）移動平均線を単線だけで利用するのではなく、期間の異なる複数の移動平均線によってトレンドを判断する
（2）MACD（移動平均収束発散法）などでトレンド転換の兆候を把握する
（3）移動平均乖離率、ボリンジャー・バンドを併用すること
などが挙げられます。