自己資本比率で財務健全性をチェック
企業の財務健全性を確認する際に有効な指標の一つに自己資本比率があります。自己資本比率は自己資本÷総資産で求められます。この数値が高いほど、安全性が高いと言われており、一般的には30%を上回っているかどうかが一つの目安となります。
自己資本は返済の必要がない資金となります。これに対して、借入金や買掛金など、返済義務が生じる資金を他人資本と言います。企業はその時々に応じて自己資本と他人資本のバランスを考慮し、財務戦略を決定します。
ペッパーフードサービス(3053)のデータを見てみましょう。同社は「いきなりステーキ」業態が大当たりし、一時期業績が急拡大しましたが、積極的な投資(店舗拡大)が仇となり、直近の決算では営業赤字に転落しました。
17.12期に営業利益は飛躍的に伸びましたが、自己資本比率は若干低下しています。
翌18.12期も大幅増益ではありますが、自己資本比率は約半分に低下しています。
さらに業績が悪化した19.12期には一桁にまで落ち込みました。
新しいサービスを提供する企業では、まずシェアを拡大することに重点が置かれることが多く、借入金や買掛金の比率が高くなる傾向があります。
積極投資が軌道に乗れば、規模の拡大を伴って資本も厚みを増すことが期待できます。
ただ、財務とのバランスという点でみると、ペッパーフードの戦略は前のめりすぎたと言えるかもしれません。
なお、株価の方は2017年10月をピークに下降トレンドが続いています。
ただ、自己資本比率が高ければ高いほど良いかというと、必ずしもそういうわけではありません。
自己資本比率が高いということは、裏を返せば他人資本を有効活用できていないとも言えます。
今は低金利環境が長く続いていますが、このような局面では、むしろ上手に借金をすることで会社全体としての利益水準を高めることが求められます。
ペッパーフードサービスのようにチャンスと見れば一気に攻勢をかける企業がある一方、「石橋を叩いて渡る」スタンスで、もう少し他人資本の活用に柔軟になっても良いのにと思える企業もあります。
オーナー色の強い企業では極端な傾向が出てくることも多いので、投資の際には注意を払っておく必要があります。
自己資本比率は企業の安全性をチェックする尺度ではありますが、投資家目線でみると、この比率が高い銘柄イコール良い銘柄というわけではありません。 ただし、景況感が悪化する際には、健全経営を行っている会社の方がより安心して買えるという側面はあります。 当コラムを執筆している時点(2020年2月)では、新型コロナウイルスが猛威をふるっており、多くのイベントが中止になるなど、各方面に悪影響が出ています。 このような局面では、財務悪化による株価急落リスクを避けるという点で、自己資本比率の高い銘柄の注目度が高まると考えられます。