益利回りと配当利回りで増配可能性を探る
増配可能性を探る方法の一つに、1株当たり利益(EPS:Earnings Per Share)と1株当たり配当金(DPS:Dividend Per Share)を比較する方法があります。会社の1株当たり利益と1株当たり配当を同時にみることは難しくありませんが、同時にその会社の配当利回りをみたり、多くの会社を一気に比較したりするのは難しいものです。今回は銘柄スクリーニング機能を利用して、多くの会社の増配可能性を一覧で確認する方法をご紹介します。
今回、株式益利回り(以下、益利回り)と配当利回りを使います。それぞれの定義を確認しておきます。
益利回りは1株当たり利益を株価で割った指標です。なお、株価を1株当たり利益で割った指標はPERであり、投資家にとってはこちらのほうがなじみ深いと思います。益利回りはPERの逆数(1をPERで割る)となりますので、PERが高いほど益利回りは低く、PERが低いほど益利回りは高くなります。
配当利回りは、1株当たり配当金(DPS:Dividend Per Share)を株価で割った指標です。
トレーダーズ・ウェブの銘柄スクリーニングの条件設定は、32:益利回りと34:配当利回りの表示にチェックを入れるだけです。ただし、この設定だと銘柄数が多く、結果の表示まで時間がかかってしまいます。「益利回りを5%以上とする」、「01:市場を全市場から東証1部のみに変更する」、「02:業種で業種を絞る」などにより、対象銘柄を減らせば結果の表示を早くすることができます。
以下はスクリーニング結果の画面です。このままでは見づらいですので、益利回りを2回クリックしてソートをかけます。
2回クリックすると、以下のように益利回りが高い順に表示されるようになります。
スクリーニング結果で出てくる益利回りと配当利回りは、基本的にどちらも今期の予想をもとに算出されています。業績修正などにより数値が変わる可能性がありますので、その点は注意してください。なお、結果一覧は一番下に表示しています。
ここでは2つの銘柄を参考に、このスクリーニングの活用方法をご紹介します。最上位の川崎汽船<9107.T>
ですが、益利回りが82.47%と非常に高いのに、配当利回りは6.24%しかありません。このような場合、「増配の余地があるのではないか」とみることができます。もちろん、会社の状況などにより、実際にそうなるとは限りません。川崎汽船の場合、これまで無配でしたが今期は復配を見込んでいます。利益が出る見通しでも、復配早々に大きな金額を配当するというのは難しいのではないかと考えることができます。
次に、配当性向で考えてみます。例えば、会社が「配当性向は30%にする」と定めていた場合、1株当たり利益が100円であれば配当金は30円程度となることが見込まれます。この関係は%表示でも同じです。益利回りが20%であれば、配当利回りは6%程度になるのではないかとみることができます。
JFEホールディングスは株主還元方針として「配当性向(連結ベース)を30%程度とすることを基本として検討する」としています。同社の益利回りは30.95%、配当利回りは8.55%となっていますので、配当性向はおおよそ30%です。配当性向30%と定めているのに益利回りと配当利回りが大きく離れている会社があれば、増配の可能性があるのではないかと考えることができます。
スクリーニング結果には、業績が良くても悪くても一定の配当を行う会社も含まれますので、益回りの水準が高いからといって大幅な増配はしてこないかもしれません。そして、そういった会社の傾向まで踏まえた上でスクリーニングを活用して総合的に分析すれば、増配の確度は高まります。増配可能性を探る第一歩として、このスクリーニングをぜひ活用してみてください。
結果一覧(すべては掲載できませんので一部となります)