覚えておきたい値幅の話
今回は値幅について掘り下げます。株価は1日に動く値幅に制限があります。その制限は価格の水準によって変わります。制限いっぱいまで上昇するとストップ高、下落するとストップ安になります。では、ストップ高(安)になると、株価はどのくらい動くことになるでしょうか。この点を整理してみたいと思います。
なお、今回の話はどちらかというと、前日に大幅高(安)となった銘柄を狙って売買したいといった、値動きのある銘柄を短期でトレードしたい方向けの内容が中心となります。
こちらは値幅制限の一覧となります。ここでは15万円未満までを表示していますが、実際には5000万円まであります。ちなみに5000万円以上の制限値幅は上下1000万円です。
値幅が切り替わるところでは、株価が大きく動いた際の振れ幅にも差が出ます。999円の銘柄がストップ高になった場合、999+150=1149円となり、上昇率は15%となります。一方、1000円の銘柄がストップ高になった場合、1000+300=1300円となり、上昇率は30%となります。株価は1円しか違わないのに、ストップ高になった場合の1日の最大上昇率は15%も変わってきます。
当然、逆の場合も振れ幅は大きくなります。999円の銘柄のストップ安は999-150=849円ですが、1000円の銘柄のストップ安は1000-300=700円となります。
上述の表では制限上限の変動率というものも載せています。「1000円以上1500円未満」のところは「20%以上~30%未満」となっていますが、これは下限である株価1000円の銘柄がストップ高となった場合30%、上限、これは1500円未満なので1499.9円となりますが、この水準でストップ高となった場合、20%上昇することになりますので、この値段の範囲の銘柄がストップ高になった場合、20%~30%上昇しますよということを意味します。なお、100円以下のところで3100%というのがありますが、1円の銘柄が31円になった場合は理論上そうなるということで、まず見られないケースです。
これを見ると、1000円、1万円、10万円など、桁が一つ上がった際の変動率が、他と比べて若干ではありますが大きいことがわかります。投資家心理的にもわかりやすい節目を超えてくる時は注目を集めやすいので、値動きが荒くなることが結構あります。一方、500円、5000円、5万円に乗せたところでは、若干ではありますが、変動率が他と比べて小さいこともわかります。
こういった点をどうトレードに活用するかといえば、ハイリターンを求めるスタンスであれば、1000円や1万円など、桁が一つ上がったばかりの銘柄が狙い目と言えます。ちなみに、2021年9月には大手海運株の日本郵船が1万円の大台に乗せ、このあたりから海運株の値動きが非常に荒くなりました。値幅が出やすい水準に達したことで、デイトレードの妙味がより大きくなり、買い手も売り手も殺到したものと考えられます。一方、リスクはできるだけ抑えたいというスタンスであれば、500円~700円、5000円~7000円レベルの銘柄を狙うという戦略が立てられるかと思います。
テーマ性のある要素で複数の銘柄が動意づいた時なども、ファンダメンタルズは度外視して動くことは往々にしてあります。超短期勝負であれば個別の要因は脇に置いて、変動率が大きい価格帯の銘柄を狙ってみるというのも一つの考え方です。
長期志向の投資家の方も、こういった点を押さえておけば、銘柄の売買にも役立てることができるかと思います。例えば、500円で買った銘柄が950円になり、いつ売っても良いという状況であったとします。心情的には1000円まで待ちたいというところでしょうが、1000円に乗せた後には値動きが荒くなる可能性もあります。ですので、十分利が乗っている銘柄であれば、大台乗せを待つ前に利益を確定しておくといった考え方ができるかと思います。
また、売りから入りたいスタンスであれば、明らかに過熱感が強い銘柄が1000円や1万円など大台に乗せてきた時は、その後の値動きを注意深くウォッチし、頭打ち感が出てきたところでエントリーするといった戦略もあります。
基本的には値幅に関してはある程度標準的に設定されてはいますので、今回の話は重箱の隅をつついたようなニッチな内容です。個別のファンダメンタルズなどは全く加味していません。ただ、デイトレードで取引回数が多い方などは、勝ちやすいフィールドで勝負するという点で、今回の話を頭の片隅に置かれておいても損はないかと思います。バイ&ホールドのスタンスの方でも、値幅が変わる水準を意識しておかれると、値動きが大きくなりそうなタイミングをイメージしやすくなると思われます。