株式分割は買い材料?
今回は、株式分割について取り上げます。株式分割が実施されると、株価水準が大きく変わってきます。また、発表直後や分割前後では値動きが大きくなることも多いです。分割を発表した銘柄を買って良いのかどうかについて、 注意しておきたいポイントなどについて解説します。
企業が株式分割を発表すると、保有者の株式は増加します。ある企業が1:2の株式分割を発表した場合、その企業の株式を100株保有している投資家は、特定の時点で保有株数が100株から200株となります。ただし、その際に株価は半分になりますので、 保有資産の価値が急に2倍となるわけではありません。
増配は配当利回りを上昇させます。また、自社株買いは経営効率の改善につながります。これに対して株式分割は、株価への直接的な影響はニュートラルです。
それでも、分割を発表した会社の発表直後の株価は、一般的には上昇することが多いです。分割すれば現状よりも少額の資金で購入できるようになりますので、より多くの投資家から注目されやすくなります。「分割を発表する=先行きの業績に自信を持っている」との連想も働きやすいです。なお、会社側からみた株式分割のメリットとしては、投資家層の拡大や流動性の向上が期待できるといった点があります。グロース市場やスタンダード市場の銘柄であれば、株主数が増加することで将来的にプライム市場に昇格するのではといった期待も高まります。こういった様々な思惑が、分割発表銘柄への買いにつながります。
株式分割で最低購入単価が引き下げられれば、その銘柄は買いやすくなります。ただ、それは同時に売りやすくなることも意味します。
ある投資家が株価1万円の株を100株(100万円)持っており、購入単価は5000円、50万円の含み益があったとします。そのまま売れば50万円の実現益は得られますが、保有株はなくなります(手数料・税金は考慮せず)。ただ、この銘柄が1:2の株式分割を発表した場合、保有株数は100株から200株に増加します。株価は2分の1になりますが、保有者からすれば100株売却すれば投資元本が回収できます。そうなると、100株しか持っていない時と比べて、売りを出すハードルは下がります。売りの量が多くなれば、上値は重くなります。
株式分割は株価への影響はニュートラルですので、分割を発表したからといってやみくもに買いを入れるのはリスクがあります。分割発表銘柄を買えるかどうかについては、以下のような点をチェックしておきましょう。
業績の裏付けがあるか
企業が株式分割を行う動機の一つとして、自社の株価が高くなったという点があります。ただ、値がさ株だからといって、必ずしも実績を伴っているわけではありません。その時々のテーマや時流に乗って株価が押し上げられることも多いです。
そういった銘柄が株式分割を発表した場合、株数が増えることで需給のバランスが崩れ、分割後は鳴かず飛ばずとなることもあります。PERがあまりにも高い銘柄などは要注意です。なお、新興企業などでは先行投資がかさんで利益は低水準となっている結果、
PERが高くなることもあります。そういった銘柄は、売上高がしっかり伸びているかという点を確認することをお勧めします。
ブランド力があるか
業績に多少波があったとしても、ブランド力の高い企業というのは、分割して株価水準が下がったところは買っておきたいと考える投資家は多いです。業績が右肩上がりではなかったとしても、過去のショックなどをしっかり切り抜けた企業や、
同業他社との比較で利益率が高い企業などは狙い目といえます。
高嶺の花であり続けられるか
株式分割が好感される銘柄というのは、基本的には分割前は最低購入代金の高さが購入のネックになっていたと言えます。言い換えると、最低購入代金がそれほど高くない銘柄が株式分割をしたとしても、急いで買いたい投資家はそれほど多くないと考えられます。
分割プラスアルファがある銘柄は要チェック
1:2の株式分割を発表したのであれば、普通はそれに合わせて1株配当も半分にします。しかし、中には配当を変更しないところもあります。この例の場合、実質増配で配当利回りは倍増します。株主優待なども、分割に合わせて調整するといったことをせず、
実質拡充とするところもあります。そういった分割プラスアルファがあれば、それは素直にポジティブといえます。ただし、会社側からすれば大盤振る舞いにはなりますので、それを正当化できるくらい業績が伸びているかという点は確認しておいた方が良いでしょう。
株式分割は、一般的には株価にとってポジティブに反応することが多いです。ただ、株式価値を高める材料ではないということは認識しておく必要があります。最近ではリリースに対する反応が強めにでることも多く、分割直後の値動きが派手になりやすいため、売買の判断に悩むこともあるでしょう。「分割=買い」ではなく、その企業が長きにわたってファンを引きつける魅力があるか、業績面での伸びしろがあるかといった点を見極めることが重要です。