四半期決算ごとの特徴をつかむ
企業は3カ月に1度、四半期決算を発表します。本決算、1Q、2Q、3Qでは企業のリリースの傾向や、出てくる内容を市場がどう捉えるかという点について、ちょっとしたクセというか傾向があります。今回は、それぞれの特徴について整理していきます。
一般的に、企業から発信される情報量が最も多いのが本決算となります。1年間の総括となる上に、多くの企業が新しい期の見通しを公表します。業績が好調な企業も苦戦している企業もいったんリセットするタイミングとなりますので、ここで出てくるリリースに対しては、株価の動きも大きくなることが多いです。
本決算で気をつけておきたいのが、ガイダンスリスクです。一般的に企業は下方修正を出すことを嫌います。そのため、期初の見通しというのは保守的になりがちです。業績好調な企業などは投資家の期待値も高くなりますので、期初の段階では期待と実際に出てくる計画との乖離が大きくなってしまうこともあります。
また、業績が急拡大している企業などでは、その成長を一段と高めることを目的に、特定の年に投資を強化することがあります。将来的に大きな利益を得るための布石ではありますが、単年度で見ると費用増で大幅減益となることもあります。そのことが必ずしも株式の売り材料になるとは限りませんが、期初は企業側から変化に向けた材料なども出てきやすいということは頭の片隅に入れておいた方が良いでしょう。
1Qはスタートして3カ月の成績表となります。まだ先が長いため、通期見通しの上方修正などは見送られることが多いです。ただその分、1Q決算発表の時点で通期の見通しを引き上げてきた企業に関しては、リリースに株価が好反応を示しやすいと言えます。
利益の計上時期にバラツキのある企業でなければ、1Qでは通期の営業利益計画に対して25%以上、上期計画であれば50%以上の進捗率を期待したいところです。1Qで計画に対する進捗率が低い場合、先の上方修正期待が剥落します。1Q決算は、企業の期初計画が保守的か、妥当か、達成ハードルが高い努力目標なのかを見極める材料になると言えます。
2Qは折り返しとなりますので、本決算の次に注目度が高いと言えます。上方修正や下方修正が多く出てきやすいほか、増配、減配、自社株買いなど株主還元絡みのリリースも多くなる傾向があります。
決算プラスアルファが出てきやすい分、それがない企業が逆に目立つとも言えます。景気が良く、多くの企業から上方修正や増配のリリースが出てきている際には、見通し据え置きや株主還元強化の話がなかった企業の株価は埋もれてしまいます。一方、下方修正や減配が続出しているような時には、見通しを据え置いている企業に対する相対的な買い安心感が高まります。
なお、1Q時点で進捗率が高く、上期で計画を上振れたような企業が、上期の決算発表時にボーナス的なリリース(上方修正、増配、自社株買いなど)を出さなかった場合は要警戒です。先々で業績が鈍化するリスクを抱えている可能性があります。
3Q決算を確認する時期というのは、市場の目線が既に来期に向かっています。四半期が終わり、それを集計して発表にこぎつけるまでは、1カ月程度のタイムラグがあります。3月決算企業の3Q決算は1月後半から2月にかけて多く出てきますが、この時点でその期は残り1~2カ月となっています。
そのため、業績が好調な企業に関しては、次の4Qでどれだけの上積みがあるのかということよりも、好調が来期も続きそうかそうでないかということが市場の関心事となります。為替や商品価格など企業努力ではコントロールしづらい要因で業績変動が大きくなる企業などでは、なおさらその傾向が強まります。
また、既に期初の計画を大きく超過している企業などでは、この辺りからは無理をせず、次の期に好スタートを切るための種まきに力を入れるところもあります。前の期に余裕残しであれば、新しい期のガイダンスが強いものとなることが期待できます。投資家目線ではどの四半期でもポジティブサプライズに期待してしまいますが、3Qに関しては、「進捗率が高いのに上方修正がなかったから売り」とするのは、結果的に早売りとなってしまうリスクもあります。
これらはあくまで一般的な傾向であり、1Q時点の進捗率が低くても通期では帳尻を合わせてくる企業もあれば、3Qに株主還元強化を打ち出す企業もあります。とは言え、企業も期初に計画を提示し、それに沿って新しい年度が始まりますので、大まかな傾向を把握しておくことは意味があります。昨今は決算発表直後の値動きが荒くなることが多く、短期的な上げ下げに惑わされやすくもなります。企業側の立場に立ってみて、「自分が経営者でこの実績であったら、このタイミングで上方(下方)修正を出すかなぁ」などと考えてみると、株式投資においてもまた違った景色が見えてくるかもしれません。