出来高を制す者は株価を制す
人気化した銘柄が天井を打ったような動きを見せた場合、株価の値動きだけをみていると、大きな方向性を見誤ることも少なくありません。 出来高の推移にも注意を払うことをお勧めします。
これは神戸物産(3038)の週足チャートです。
リーズナブルさが売りの「業務スーパー」を展開しており、メディアで大きく取り上げられたこともあって業績も絶好調です。
そんな神戸物産も、2019年8月から9月にかけては大きめの調整が入りました。
しかし、株価が下落基調を強める中で出来高はむしろ増加しており、10月以降は上昇再開。2020年2月にも全体株安の流れに抗えず大きく値を崩しましたが、ここでも下げたところで出来高が増加して、その後に大きく上昇しました。
基本的には下り坂となった銘柄に関しては、投資家は「まだ下がるかも」と冷ややかな目で見ていますので、下げ局面で出来高が増加するということは、押し目を待っていた投資家が多いと推測されます。
そういった銘柄は結果的に底打ちも早くなることが多く、その後に切り返してくれば、「あの時買っておけば良かった」という投資家の追随買いも入りやすくなります。
これはワークマン(7564)の週足チャートです。 カジュアル衣料への進出などが大当たりし、2019年に大相場を演じました。 しかし、今年に入って株価は失速。 ただ、先ほどの神戸物産と比べると、値を崩したところで出来高が増加していないことがわかります。 これは、押し目を積極的に拾いたいと思う投資家が少ない状況であるといえますので、注意が必要です。 実際、2019年12月の高値10570円から2020年3月の安値5400円まで、株価は半値近くまで下落しました。
上昇続きではなく、下げ基調にあった銘柄に関しても、出来高をウォッチしておくことは重要です。 これはオリエンタルランド(4661)の株価です。 2019年後半から上値が重くなっていましたが、2020年に入り、新柄コロナウイルス感染拡大の影響を受けて休園を余儀なくされました。 これに伴い、株価も大きく下落しましたが、下に突っ込んだ2月後半から3月中旬にかけて出来高が急増しています。 まだこの時点では再開の見通しは立っていません。 ただ、優待人気の高い銘柄で3月の権利取りが意識されたこともあり、押し目を絶好の買い場と見た買いも入りました。 そして、出来高のピークとほぼタイミングを同じくして、底打ち反転となっています。 このように下げ基調にあった銘柄が下に突っ込んで出来高が増加した場合には、ボトムを打つことも多いです。
出来高が増えるということは、買いたい投資家と売りたい投資家の両方が多いことを意味します。
そのため、上昇基調にある銘柄が失速した場合、そこで出来高が増加すれば、「まだ買いたい投資家が多い→上昇トレンドは継続中」とみなすことができます。
一方、失速と同時に出来高も減少した場合には、一相場終わった可能性を意識すべきでしょう。
下落基調にある銘柄に関しては、出来高の急増が相場の転機となる可能性があります。
なお、上昇局面で出来高が減少することは、それほど悪いことではありません。
多少の高値警戒感はあってもそこで売りたいと思う投資家が多くない状況ですので、スルスルと上昇が続くということもよくあります。
下落局面での出来高の減少は単に人気がなくなっただけの場合が多いです。
また、1日単位では材料のあるなしで出来高に大きく差がつくことはありますので、週ベースで推移を見る方がトレンドを把握しやすいと言えるでしょう。