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原油と株価

 今回は原油価格と株価について解説します。原油価格は時として株式市場を大きく揺さぶります。原油価格を大きく動かす要因について整理するとともに、原油の値動きが株式市場でクローズアップされた際の注意点を確認しておきましょう。

原油価格は景気や産油国の思惑に左右される

 原油価格は一般的に経済活動が活発な時に上昇し、停滞する時に下落する傾向があります。ただし、原油価格が上昇しすぎると、そのことが景気にブレーキをかける要因にもなり得ます。身近な例が原油と連動性の高いガソリンです。日本でも時々ガソリン価格の上昇がニュースで取り上げられることがありますが、ガソリン価格が大きく上昇すると、運輸系の企業にとっては、利益を大きく圧迫する要因となります。個人でもガソリンが高くなりすぎると車移動を控えるといった行動が起きやすくなります。

 また、産油国のさじ加減で価格が大きく動くことがあります。産油国がそれぞれの利益を守ることを目的とした組織として、石油輸出国機構(OPEC:Organization of the Petroleum Exporting Countries)があります。これにロシアなど非加盟国を加えた「OPECプラス」が、それぞれ協調して原油価格の安定に努めています。需要が強い時には増産して市場に出回る量を増やす一方、需要が弱い時には減産を行います。

 産油国と石油輸入国は、立場が180度異なります。産油国からすれば原油価格は高い方が望ましく、輸入国からすれば、低い方が望ましいです。日本は輸入国となります。直近では、原油価格が2021年10月に約7年ぶりの高値をつけ、それに対して米国が11月に、備蓄を放出して価格を下げるよう働きかけたことがありました。これ自体の価格抑制効果は限定的とみられてはいましたが、この後、新型コロナウイルス「オミクロン型」の警戒が強まったこともあり、原油価格は急落しました。経済が上げ基調の時に原油価格は上がりやすいという側面はありますが、産油国と輸入国の対決色が強まってしまう状況にまでなってしまうと、価格上昇が混乱を招くとの警戒も強まるため、一転して弱材料に敏感になることがあります。またその場合、高値圏では投機的な資金が流入していることも多く、上昇一服感が鮮明となった場合には、下がり方が鋭角的になることもあります。

 産油国間の足並みがそろわない場合にも、価格が大きく動くことがあります。原油が市場でダブつきそう(価格が下がりそう)と予想される局面では、産油国は減産を実施するなどして価格を調整しようとします。しかし、産油国からすれば利益が削がれることになるため、これに反発する国が出てくることがあります。そういった報道が出てくると、先々で原油の余剰感がさらに強まるとの懸念から、値動きが荒くなるといった事が生じやすくなります。

 特殊なケースとしては、中東などで軍事的緊張が高まった場合には、原油価格が急上昇することがあります。この場合、株式市場はリスクオフによる株安が予想されます。

急伸もリスク、急落もリスク

 株式同様、原油価格も日々動いていますが、原油の値動きが毎日株式市場に大きな影響を与えているわけではありません。注意しなければいけないのは、価格が大きく動いた時となります。大きく上昇した場合はインフレ加速や地政学リスクの高まり、大きく下落した場合は景気減速が警戒され、どちらの時にも株安や、ボラティリティの上昇を招くことがあります。

 世界的に新型コロナウイルスに対する警戒が強まった2020年4月には、NY原油価格がマイナスになるという異常事態が発生しました。需要が一気に減少し、原油の保管ペースが満杯になるとの懸念が強まったため、保管コストの上昇が警戒されました。そしてこの時は、株式市場も警戒売りに押されました。原油価格がマイナスとなったのは一時的ではありましたが、マイナスで取引が成立するという事実は、市場にも驚きを持って受け止められました。

原油が動く際に注目される業種

 原油価格が上昇した場合、日本では鉱業株が連想で買われやすくなります。象徴的な存在となっているのがINPEX<1605.T>で、原油価格の値動きが大きくなる際には、非常に連動性が高くなります。ENEOS<5020.T> や出光興産<5019.T>などのほか、住友商事<8053.T>や三井物産<8031.T> など商社株も、原油高でメリットがある企業となります。その際に売られやすいのが、燃料高が警戒される空運・陸運株や電力株となります。一方、これらは原油安局面では選好されやすくなります。

それぞれの局面で買われやすい業種
各国の「脱炭素化」の取り組みにも注目

 ここまでの話を整理すると、「原油価格の値動きが荒くなった場合には、株式市場も波乱が予想される。」という点が挙げられます。上下どちらに傾いたとしても、株安の可能性を意識しておいた方が良いです。その際には、キャッシュポジションを厚めにすることがリスクを回避する戦略にはなりますが、中東の軍事的緊張など、原油価格だけが騰勢を強めそうな局面においては、INPEXなど原油との連動性が高い銘柄にフォーカスするといった策もあります。

 また、緩やかにトレンドが続いている場合には、原油高であれば景気敏感系の業種、原油安であれば燃料安が見込まれる業種のパフォーマンスが良くなると期待できます。

 最後に、こういった原油価格と株価の関係を押さえた上で、この先、注目しておかなければいけないのが、世界的な「脱炭素」の潮流です。直近で原油価格が上昇して、米国が戦略備蓄を放出するとアナウンスした際には、脱炭素の観点からそういったことをすべきではないといった声も挙がりました。原油が高止まりしていた方が、代替エネルギーへのシフトが進みやすいという理由からです。ガソリン車からすべて電気自動車に置き換わった場合には、多くの人にとってガソリン価格の上昇はそこまで困る事象とはならないかもしれません。そうなると、原油高が実体経済に与える悪影響が小さくなる可能性があり、株式市場に与える影響も小さくなると考えられます。産油国からすれば好ましいシナリオではないですし、すぐにそうなるわけではないでしょう。ただし、世界が大きく変わろうとしているタイミングではあるだけに、各国の脱炭素に向けての取り組みについては、注意深くみておく必要があります。

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