コラム
売買代金回転率から局面変化を探る
当該コラムは、2022年01月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

売買代金回転率から局面変化を探る

 今回は売買代金回転率について解説します。売買代金回転率は株式市場全体や個別上場株式の時価総額に対して、どれだけの割合が実際に売買されたかを示す指標で出来高分析の一種です。特定期間(n期間)の売買代金の合計を、同じ期間の期初と期末の時価総額の中値で割って求めます。数値が高いほど売買が活況である事を表します。上昇相場だけでなく、下落相場でも強いトレンドが発生すると売買代金回転率は上昇する傾向があります。また、それまでのトレンドが加速する場合でも売買代金回転率は上昇することがあります。

売買代金回転率の計算式
売買代金回転率の計算式
売買代金回転率の計算式
TOPIXと売買代金回転率

 図表1は、2016年以降のTOPIX(東証株価指数)と売買代金回転率で、特定期間を「50日」とした場合の推移を示しています。売買代金回転率は2017年~2018年の間は概ね20%を中心に、上限23%付近になると低下に向かい、下限17.5%付近になると上昇に転じる傾向があり、株価はトレンドが変化する、あるいは同方向に加速するといったように、相場に何らかの局面変化が生じています。
 2019年以降で特に振幅が目立つのは2020年です。新型コロナショックで株価が急落する直前に15%付近まで低下した売買代金回転率は、急落とその後の急反発で6月に戻り高値を付ける過程で25%前後まで上昇し、近年にない賑わいだったことがうかがえます。2020年後半からは概ね上限21%付近、下限16%付近で局面変化が生じています。
 2021年12月30日現在、18.4%まで低下しています。直近の下限である16%付近に向けて低下している可能性があり、株価はしばらく動意なくもみ合い基調が続くことが予想されます。16%に近づくにつれ、相場の局面変化(売買代金の増加→相場は上か下かにトレンドが発生する→トレンド発生とともに売買代金がさらに増加する)に身構えることができます。

TOPIXと売買代金回転率
TOPIXと売買代金回転率
トヨタ自動車と売買代金回転率

 図表2は、2018年以降のトヨタ自動車の日足チャートと売買代金回転率です。2021年4月以降、株価は上昇基調を強める一方で、売買代金回転率は低下基調が続いています。これは、売買代金の増加以上に株価上昇による時価総額の増加の影響が大きいといえます。一方、2020年以降の下限付近まで低下しており、相場の局面変化(売買代金の増加→相場は上か下かにトレンドが発生する→トレンド発生とともに売買代金がさらに増加する)に近いと判断できます。
 過去にも同様、株価が2018年12月安値から上昇基調が続いた一方、売買代金回転率は低下基調にあった局面があります。その後、売買代金回転率の上昇転換が株価急落によって生じた経緯があります。

トヨタ自動車と売買代金回転率
トヨタ自動車と売買代金回転率
ソニーGと売買代金回転率

 図表3は、2018年以降のソニーグループの日足チャートと売買代金回転率です。売買代金回転率は2020年3月頃まで急上昇しましたが、その反動で足元まで長期間低下基調が続いています。一方、株価は2020年3月から上昇基調が続いています。特徴的なのは、売買代金回転率が2021年4月頃から2018年以降の下限を下回る一方、株価は短期調整後に上昇が加速している点です。次の売買代金回転率の上昇が株価にどのような局面変化(売買代金の増加→相場は上か下かにトレンドが発生する→トレンド発生とともに売買代金がさらに増加する)をもたらすかが注目ポイントとなります。

ソニーGと売買代金回転率
ソニーGと売買代金回転率
マネックスGと売買代金回転率

 図表4は、2018年以降のマネックスグループの日足チャートと売買代金回転率です。トヨタ自動車やソニーGなどの大型株とは違い、売買代金回転率が上昇する局面では株価が上昇基調にあり、売買代金回転率が低下する局面では株価も下落基調にあることがわかります。また、売買代金回転率に周期性がなく、時折出現する材料によって売買代金の変化が極端に大きくなる小型株特有の現象がみられます。

マネックスGと売買代金回転率
マネックスGと売買代金回転率
まとめ

 売買代金回転率は株式市場全体の活況度合いや局面変化を判断することができる一方、個別株で活用する場合は増資や自社株消却などで時価総額が増減すること、大型株・小型株など規模別による事情を加味する必要があります。トヨタ自動車やソニーのような大型株ともなると、株価上昇時でも売買代金の極端な増減がないことが多く、時価総額の増加によって売買代金回転率は低下することがあります。一方、小型株の場合は特定の材料を通じて売買代金が突然増加するとともに株価も急動意することが多く、逆に株価低迷時には売買代金は減少する傾向が強く、株価と売買代金回転率の方向性が比例しやすい特徴があります。
 売買代金の増減は上昇相場や下落相場の両方で生じうるため、売買代金回転率だけで相場の方向性を判断することは難しく、価格のトレンド分析やオシレータ分析などを併用し、総合的に相場をみることが重要となります。

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マーケットデータ
日経平均 37,934.76 +306.28
TOPIX 2,686.48 +22.95
グロース250 644.61 +4.49
NYダウ 38,239.66 +153.86
ナスダック総合 15,927.90 +316.14
ドル/円 156.56 +0.92
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