サイコロジカルラインで投資家心理を判断する
今回はサイコロジカルラインについて解説します。サイコロジカルとは「心理的な」という意味で、サイコロジカルラインは前日比で上昇した回数をもとに投資家心理の偏りを数値化し、相場の強弱感を見る指標です。特定期間(n期間)おける前日比で上昇した日数をn期間で割って求める、非常にシンプルで簡単なテクニカル指標として有名です。
前日比で上昇日を「勝ち」、下落日を「負け」とすると、12日間に上昇が続けば12勝0敗で100%。下落が続けば0勝12敗で0%となります。したがって、サイコロジカルラインは0~100%の範囲で動きます。前日比で変わらずの場合は一般的には「上昇」に含めます(含めない手法もある)。
サイコロジカルラインの計算式
サイコロジカルライン(%)=過去n日間に終値が前日比で上昇した日数÷n×100
※「n」は一般的に12日を用いることが多い。
投資家心理としては、上昇相場が続けば「そろそろ下落するかも」と警戒感が高まり、下落相場が続くと「そろそろ反発するかも」と期待感が膨らむ傾向があります。そういった点を踏まえ、一般的に75%(9勝3敗)以上なら高値圏(高値警戒)、25%(3勝9敗)以下なら安値圏(安値警戒)と判断します。
一方、上昇幅や下落幅に関係なく勝ち負けを判別するため、小動きが続く場合でも高値圏(高値警戒)や安値圏(安値警戒)になってしまう点が欠点です。この欠点を補う考え方が、騰落の値幅を考慮して計算するRSI(相対力指数)です。
図表1は、2019年以降の日経平均株価とサイコロジカルライン(12日)の推移です。概ね、株価のピークとサイコロジカルラインのピークが一致しており、75%以上の「高値圏」にくると経験則からも株価はピークに近いと判断することができます。逆に、株価のボトムとサイコロジカルラインのボトムも一致しており、25%以下の「安値圏」にくると株価の安値は近いと判断することができます。
一方、株価が保ち合いから上放れる初期の段階は、サイコロジカルラインは一気に「高値圏」まで上昇しますが、株価はすぐにピークをつけることなく、しばらく上昇が続くことがあります。また、株価の急落時はサイコロジカルラインは一気に「安値圏」まで低下しますが、株価はすぐにボトムをつけることなく、しばらく下落が続くことがあります。2020年の新型コロナショックによる株価急落局面ではそれが顕著に表れました。
図表2は、2018年7月以降のコマツの日足チャートとサイコロジカルライン(12日)の推移です。概ね、株価のピークとサイコロジカルラインのピークが一致しており、75%以上の「高値圏」にくると経験則からも株価はピークに近いと判断することができます。また、株価のボトムとサイコロジカルラインのボトムが一致しており、25%以下の「安値圏」にくると株価の安値は近いと判断することができます。
一方、サイコロジカルラインは弱気相場の時は75%以上の「高値圏」に至らずに低下を繰り返す傾向があることや、2020年3月のように低い数値が連続して出現することもあるため、数値の動きを継続して注視する必要があります。
図表3は、2018年7月以降の日本郵船の日足チャートとサイコロジカルライン(12日)の推移です。日本郵船のような壮大な上昇相場でも「高値圏」と「安値圏」の識別ができるオシレータ系の逆張り指標として用いることができるのも特徴の1つです。騰落の値幅を考慮して計算する指標ではないため、小動きが続く場合でも「高値圏」と「安値圏」を繰り返す傾向があります。そのため、強いトレンドが発生している場合でもオシレータ系指標として使える点は長所でもあるといえます(本来、オシレータ系指標はトレンド発生時には有効性が低下するといわれている)。
サイコロジカルラインは相場の強弱感を見るオシレータ系指標の1つです。判断基準は汎用的に75%以上で高値圏、25%以下で安値圏と判断しますが、判断基準の出現確率は高いとはいえません。
また、相場が「強い」か「弱い」かの強弱感からくる市場のセンチメントを探る意味で貴重な指標である一方、価格の騰落値幅を無視しているだけに「高いところで売る」、「低いところで買う」などの売買タイミング指標としての存在感は薄いかもしれません。売買タイミングにこだわることなく、相場心理を読む上で不可欠な指標であることを認識する必要があります。