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相場の季節性を知る
当該コラムは、2022年10月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

相場の季節性を知る

金融市場のサイクル

 金融市場にはいろんなサイクルが存在するといわれています。サイクルとは時間のサイクルを意味し、一定の間隔で相似のことが周期的に生じることです。代表的なところでは、景気サイクル、季節性サイクル、干支サイクル、大統領選サイクルなどが有名です。ほか、オリンピックサイクルやシリコンサイクル、太陽黒点数のサイクルなども時折、話題に挙がることがあります。
 長期的なサイクルもあれば、短期的なサイクルもあります。例えば、株式市場で短期的なサイクルとしてよく語られるのは、毎年同じ時期に繰り返される価格変動のパターンとしての「季節性サイクル」です。

アメリカで有名な「セル・イン・メイ」

 アメリカの株式市場でよく知られている季節性には、「セル・イン・メイ(5月に売れ)」があります。「セル・イン・メイ」は相場格言で、英文全文を示すと「Sell in May, and go away; don’t come back until St Leger day.」とあります。つまり、「5月に売って、セントレジャーデー(9月第2土曜日)まで株式市場に戻るな」ということになります。株式市場には季節性があるということを諭した格言でしょう。確かに、過去の月単位の価格変動をみれば、月次効果として季節性が明確に表れています。

 図表1は1985年~2021年の日米株の月次騰落率です。ダウ平均の上位には4月、11月、12月、下位は9月、8月、6月となり、その傾向が読み取れます。「5月に売って、安い9月に買いを入れる」とパフォーマンスの向上が図れそうです。
 日本の株式市場でも同期間では似た傾向が日経平均の月間騰落率で確認できます。平均ランキング上位には4月、11月、12月など、下位には9月、8月、10月などが登場します。

日米株の月次騰落率(1985‐2021、%)
日本株には「8月買い」の経験則が存在

 8月は夏休みシーズンです。この時期になると必ずといっていいほど、「夏枯れ」という声が聞かれます。確かに、日経平均は2013年~2021年までの年間推移を平均したグラフ(図表2)をみると、8月は調整する傾向が見受けられます。ただ、同時に年末に向けた上昇への安値の起点になってきたことにも気づきます。因果関係は不明ですが、「8月は買い」という経験則が存在することになります。

日経平均の年間推移(週次)
「アノマリー」=「語り継がれてきた経験則」

 このような季節性は経験則として、長い年月の中で語り継がれ幅広く知られていますが、明確な理由はありません。企業決算の発表時期、資金需給、税金還付、大口の機関投資家の決算など複数の要因は挙げられるものの、決定的な要因ではないでしょう。月次効果に限らず、このように因果関係がよく分からない、長い年月の中で語り継がれてきた経験則のことを「アノマリー」といいます。

その他のアノマリー

 大統領選サイクルは4年毎の米大統領選挙と関連したサイクルです。大統領就任の年を1期、選挙の年を4期とすると、年間騰落率は3期(大統領選挙の前年)が最もよく、中間選挙年の年間騰落率は4年間の中で最低となる傾向があります。大統領選挙の前年は現大統領が翌年の選挙をにらんで景気を底上げするために景気対策などを実行することが多いためといわれています。そのため、大統領選サイクルは、短期の景気循環(キチン循環)とも周期がほぼ一致しているともいわれます。

 日本では干支(十二支)サイクルが有名です。「子(ね)繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる、辰(たつ)巳(み)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申(さる)酉(とり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる」という言葉で表現されます。

最後に

 このような「アノマリー」は投資心理には多少の影響を与えうる可能性はありますが、投資の決定的な判断材料として頼るべきではありません。投資に際しては、経済状況や企業業績などを分析するファンダメンタルズ分析や投資のタイミングをはかるテクニカル分析と併用することが重要でしょう。

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マーケットデータ
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NYダウ 38,239.66 +153.86
ナスダック総合 15,927.90 +316.14
ドル/円 156.56 +0.92
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