IPOの必須知識!知っておきたいロックアップ解除~実例編~
「IPOの必須知識!知っておきたいロックアップ解除~実例編~」では、ロックアップがどのように株価に影響を与えたかを事例をみながら説明します。
なお、ロックアップの基本的な内容については「IPOの必須知識!知っておきたいロックアップ解除~基本編~」で説明していますので、そちらも併せてご覧ください。
ロックアップが解除となると対象となっていた株主の売却が可能となります。その会社の役員や従業員が一気に売却してくるようなことはありませんが、ベンチャーキャピタル(VC)は「上場前の会社に投資し、上場後に株式を売却して利益を得る」ということが基本ですので、利益が出ている場合は売却を警戒しておくべきでしょう。
1. ANYCOLOR(5032)の事例 ~180日間のロックアップ~
2022年6月8日に東証グロースに上場したエニーカラーは、上場時の売り出し後の大株主(潜在株含む)上位22名(既存株主は全員)と、新株予約権者8名(全て従業員)には180日間のロックアップが掛かっていました。
そして上場から180日経過となった12月5日、株価は急落。エニーカラーの場合はロックアップ解除にあわせて、立会外トレード(売買立会時間外の取引)で100万株の売却が実施されました。大株主が売却したものですが、この株主がさらに売却するのではないかという懸念もあり、ロックアップ解除から株価は軟調推移となりました。
2. BTM(5247)の事例 ~90日+公開価格1.5倍以上で解除~
2022年12月27日に東証グロースに上場したBTMについては、株主のK&Pパートナーズ2号には90日、その他の既存株主には180日のロックアップが掛かっていました。ただしK&Pパートナーズ2号(13万2500株を保有)は公開価格の1.5倍以上なら解除されるという、価格による解除がついていました。
BTMの公開価格は1500円でしたのでロックアップ解除価格は2250円です。上場初日から解除価格2250円が強烈に意識され、株価はこの水準で上値を抑えられます。しかし、1月4日にその水準をしっかりと上回ると株価は一段高となりました。
3. tripla(5136)の事例 ~180日間のロックアップ~
2022年11月25日に東証グロースに上場したtriplaには、既存株主と新株予約権者には180日もしくは90日のロックアップが掛かっていました。なお、ベンチャーキャピタルが中心の90日の対象者(実質10名183万3400株)は公開価格800円の1.5倍以上なら解除される、価格による解除がついていました。
同社の初値は1620円と解除価格1200円を大きく上回りました。その後も株価は堅調に推移し、2023年3月8日には上場来高値3225円まで上昇しています。
この過程で価格解除のついているベンチャーキャピタルなどの保有分が売却されていれます。具体的には、リード・キャピタル・マネージメントやイノベーション・エンジンの売却が変更報告書で確認できます。
ただ、triplaにはそれほど株数は多くないのですが180日のロックアップのついているベンチャーキャピタルも存在しました。
2023年5月23日に上場から180日が経過し、株価は下落することとなりました。しかし、株価下落は一時的なものであり、株価はその後に大きく上昇しました。結果として、良い買い場だったといえます。
ロックアップは、価格による解除が付いていればIPOの初値形成に影響を与える場合があるほか、上場後の株価を抑える要因になりえます。そして、価格による解除のついていない90日や180日のロックアップは、解除日以降に値を崩す要因になりえます。
一方で、ロックアップ解除のタイミングは買いのチャンスにもなりえます。一時的に需給が悪化するのは売り出しと似ており、短期的に株価が下落してもその後に切り返すことがよくあるからです。
例えば、「上場から180日経過し、ベンチャーキャピタルの保有株のロックアップが解除されたので、需給悪化で株価は下落している。ただ、1日の売買高も多いことからすべて売却されたとしても今週中には吸収できるはず。そうなれば、来週以降に株価は上昇するのでないか?」といったように予想することができます。
このようにロックアップは、IPOはもちろん直近上場株に投資する場合の必須知識となります。制度を理解し、銘柄ごとのロックアップの情報をしっかり確認するようにしてください。