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営業利益率で企業の稼ぐ力を確認
当該コラムは、2020年08月に「トレーダーズ・プレミアム」向けに掲載したものを加筆・修正しております。 「トレーダーズ・プレミアム」では定期的に新作コラムを掲載しております。 ぜひご加入をご検討ください。

営業利益率で企業の稼ぐ力を確認

 コロナ・ショックで企業業績には先行き不透明感が漂っています。今回は企業の「稼ぐ力」を確認するのに重要な指標である営業利益率について解説します。

 営業利益率は営業利益を売上高で除して求められます。この数値が高ければ、稼ぐ力が高いと言えます。

営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
同じ業界でも利益構造の違いで利益率には差が出る
銘柄 コード 売上高 営業利益 営業利益率
三井不動産 8801 1,905,642 280,617 14.7
三菱地所 8802 1,302,196 240,768 18.5
住友不動産 8830 1,013,512 234,332 23.1
飯田GHD 3291 1,402,019 83,513 7.1
タカラレーベン 8897 168,493 11,901 6.0
(2020年3月本決算、会社発表をもとに作成、売上高、営業利益の単位は百万、営業利益率は%)

 上の表は住宅・不動産の代表的な企業の前20.3期の営業利益率を比較したものです。これを見ると三井不動産、三菱地所、住友不動産の営業利益率の高さが見て取れます。住宅・不動産企業の主な収益源としては、 (1)物件・土地販売に伴う利益、(2)賃料収入、(3)管理収入などがありますが、上述3社は(2)に関して、都心部好立地の賃貸物件収入の割合が大きいことが、利益率の高さにつながっています。

 この結果を見て、営業利益率が相対的に低いタカラレーベンや飯田GHDが売りと判断するのは適切ではありません。ただし、住宅・不動産市況の悪化などが警戒される局面では、同じ業界でも、 営業利益率の高い銘柄の方がより安心感があり、選好されやすいといった傾向はあります。

年度ごとの比較で傾向をつかむ

 先ほどは他社との比較でしたが、営業利益率に関しては個別企業の年度ごとの比較を見ていくことにも大きな意味があります。個別の長期投資の場合などはむしろこちらの方が重要と言えるかもしれません。
 以下は三菱地所の直近4期分の売上高と営業利益率を記載しています。

売上高 営業利益 営業利益率
17.3期 1,125,405 192,495 17.1
18.3期 1,194,049 213,047 17.8
19.3期 1,263,283 229,178 18.1
20.3期 1,302,196 240,768 18.5
(2020年3月本決算、会社発表をもとに作成、売上高、営業利益の単位は百万、営業利益率は%)

 同社の営業利益率はここ数年、安定かつ逓増傾向にあることが分かります。都心部オフィス空室率の低下基調が長く続いたことが大きいですが、住宅事業や海外事業などはブレも大きいだけに、そういった事業を抱えながらも、 全体としての収益性を向上させている点は特筆されます。21.3期はテレワークの浸透などでオフィス需要の変調も指摘される中、高い利益率を維持できるかが注目されます。

まとめ

 コロナ・ショックに伴い、目先は幅広い業界で売り上げや利益が落ち込むことが予想されます。それだけに、営業利益率が高い、すなわち「稼ぐ力」のある銘柄が注目される場面が増えてくると考えられます。 売り上げが減ってもコスト削減などで費用の増加を抑えることができれば、営業利益率は改善することもあります。逆に、買収などで規模拡大を図った場合、売り上げと利益の額はともにかさ上げされても、利益率が低下するということはよくあります。 多くの企業で選択と集中が進むことが予想される中、利益率を高めることができる「筋肉質」な企業が増えてくるかどうかが注目されます。

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NYダウ 38,085.80 -375.12
ナスダック総合 15,611.76 -100.99
ドル/円 156.56 +0.92
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