業種別平均PER・PBRを活用しよう
株価が割高か割安かを計る指標としてよく用いられるのがPERやPBRです。
PERとは株価収益率のことで、今の株価がEPS(1株当たり純利益)の何倍にあたるのかを示した数値です。
また、PBRとは株価純資産倍率のことで、会社の資産から見て現在の株価が割安かどうか判断するものです。
今の株価がBPS(1株当たり純資産)の何倍かを示したものです。
PERに関しては、よく15倍程度が目安で、それ以上なら割高、それ以下なら割安と説明されることが多いと思いますが、なぜ15倍が目安と言われるのでしょうか。
それは単純な話で、東証1部に上場するすべての銘柄を平均した数値がおおよそ15倍前後になるからです。
ちなみに、東証が発表している「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」によると、2020年2月末時点の2158銘柄を平均したPERを平均した数値は14.9倍となっています。
ただし、すべての銘柄について15倍を基準にしていてはPERという指標を活用できているとは言えません。
なぜなら、鉄鋼、小売、建設など業種ごとに平均のPERは異なっているからです。
例えば、水産・農林業では、2020年2月末時点の業種別平均PERは12.1倍になっています。
対して、情報・通信業では同25.9倍です。
水産業種においてPER14倍の企業は15倍以下でも相対的に割高と言えますし、逆に情報・通信業でPER20倍の企業は割安とみることができます。
業種ごとの平均PERの水準を知ることは、指標を使いこなす上で欠かせない要素と言えるでしょう。
では、ここで東証1部の業種別平均PERをグラフにしたものを見てみましょう。
さきほども述べたように成長期待の高い傾向のある情報・通信業は業種別平均PERが高めになる傾向があります。
また、業態として利益率が低めになる傾向のある小売業は、EPSも低めになることからPERは高くなりやすいです。
割安だと指摘されることが多い銀行業は、業種別平均PERが6.6倍と非常に低位に推移しています。
ちなみに海運のグラフが表示されていないのは、算定するためのEPSがマイナスになっているためです。
また、異なる期間の業種別平均PERの変化について把握することも重要です。
東証では業種別平均PERを毎月発表しています。
そこで2月末時点と1月末時点の同PERの差を計算してみました。
2020年2月は大きく日経平均が下落したため、PERもマイナスとなっています。
なかでも、元の水準が高かった情報・通信や証券業などのマイナス幅が大きくなっています。
また、新型コロナウイルスによるインバウンド需要の減少懸念から小売りやサービスなどもPERが低下していることがわかります。
こうして期間ごとの変化を見ると、マーケットでどんな動きがあったかを推察する助けにもなります。
下落要因がはっきりしている場合は、それが解消されるタイミングを狙って買いを入れることで、上昇が期待できる銘柄を割安に仕込むことができるでしょう。
最後に業種別のPBRも見てみましょう。
PBRは現在の株価が企業の資産価値(解散価値)に対して割高か割安かを判断する目安となります。 1倍だと株価と解散価値が同じ水準と判断されるので、それを割り込むと割安と見ることができます。 業種別では、情報・通信は2倍台と高めで、銀行は1倍どころか0.5倍すら大きく割り込む水準となっています。 銀行業種全体が低水準となっているわけですから、例えばみずほフィナンシャルグループのPBRが0.4倍台(2020年2月末)だったからといっても、割安とは言い切れないわけです。
ここまで見ていただいた方ならば、PERやPBRという指標が単純に高いから割高、低いから割安というわけではないことを理解いただけたと思います。 本当の意味で指標を役立てるには、なぜPERやPBRが高い(低い)状況にあるのか、その要因をつかむことが大切です。 例えば、PERがある時期に突出した銘柄があったら、その業界に何か大きな変化はなかったか、あるいはEPSが大きく落ち込むような個別要因がなかったか、などをチェックすることが必要でしょう。 その結果、一時的な要因で業績が落ち込んでいるだけだと分かった場合、PERが高いから割高というよりは、むしろ次期以降に業績が回復し、株価は上昇するという展開につながることもありえます。 数字としての指標だけでなく、業界や企業の本質を知ることが本当の意味で投資の上達につながるでしょう。