指数を知ろう 銘柄数だけじゃない 日経平均とTOPIXの違い
株式市場全体の動きを表す指標として用いられている「日経平均株価」や「TOPIX」ですが、この違いを正確にご存じの方は投資中級者といえるでしょう。
採用銘柄の数の違いじゃないの?と思った方は50点。それだけではなく指数の算出方法に大きな違いがあります。
2つの指数の一番の違いは、日経平均が基本的に単純平均の考え方に基づいて算出されているのに対し、TOPIXは加重平均の考え方に基づいて算出されているということです。実際の指数の算出には、みなし額面や株式分割の考慮など、単純な株価の合算だけで算出しているわけありませんが、本筋からは離れるため、今は日経平均が単純平均、TOPIXが加重平均とだけ覚えればOKです。
もし、みなし額面について、もっと詳しく調べたいならば、日経平均プロフィルページから、みなし額面一覧(CSVファイル)を参照してみてください。みなし額面だけでなく、指数ウエート一覧についてもPDFファイルで見ることができます。
話を戻します。単純平均については、詳しい説明はいらないでしょう。n個の数字があった場合、それぞれを合計してnで除した数値です。一方で加重平均は数字の重みを考慮した上で平均を出します。重みってなんだよ、と思う方もいるでしょうが、それぞれの数字に「重」要性を「加」えて平均を出す、といい換えると少しイメージしやすいのではないでしょうか。
具体例を出して説明します。あるお店が3種の商品を販売していたとします。それぞれ価格も1日当たりの販売数も違います。ある1日の売り上げが下記の表のようだったとすると、
商品 | 価格 | 販売数 |
---|---|---|
A | 500円 | 20個 |
B | 600円 | 10個 |
C | 700円 | 10個 |
ということになります。しかし、これでは意図する値は出ませんね。一番価格の安いAの商品がほかよりも2倍売れていますが、その分が考慮されていないからです。
加重平均では、それぞれの商品の販売数という重みを加えて計算します。すべての商品の販売数が A:20個 + B:10個 + C:10個 の40個なので、
ということになります。 単純平均では600円でしたが、低価格商品の割合が高かったことから、加重平均ではそれより安い575円となるわけです。
これを日経平均とTOPIXに置き換えるとどうなるでしょうか。前述したように見なし額面などを考慮すると厳密には異なりますが、日経平均は採用225銘柄を足して、その数で割った単純平均の数値というのが基本的な考え方です。そのため、株価が高い値がさの銘柄は、指数に与える影響が大きくなる傾向があります。よくニュースなどで「ファーストリテイリングの株価が上昇し、日経平均を押し上げました」と言っているのは、ファストリの株価が高く(2020年2月上旬時点で1株5万7000円超)、それだけ単純平均の指数に与える影響が大きい(指数ウエートは10%超です)からです。
一方で、加重平均で算出されるTOPIXはどうでしょう。この場合、重みというのは時価総額です。時価総額が大きい銘柄ほど指数に重みをつけます。上記の例でいえば、販売数の部分が時価総額になるわけです。時価総額の大きな銘柄の変化を大きく、時価総額の小さな銘柄の株価の変化は小さく計算します。
前日株価 | 当日株価 | 騰落率 | 時価総額 | 時価総額 シェア |
時価総額 加重平均変化率 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
A社 | 1000 | 800 | -20% | 1000億円 | 52.6% | -10.52% |
B社 | 2000 | 3000 | 50% | 100億円 | 5.3% | 2.65% |
C社 | 4000 | 4200 | 5% | 200億円 | 10.5% | 0.75% |
D社 | 10000 | 12000 | 20% | 600億円 | 31.6% | 6.32% |
単純平均 | 4250 | 5000 | 17.64% | |||
加重平均 | -0.8% |
上記のような株価の変化があった日の場合、
単純平均では、前日株価と当日株価の騰落率から算出するため、 17.64%高
加重平均では騰落率に時価総額シェアを乗じた加重平均変化率を合計した 0.8%安
となります。
単純平均では値がさのD社の株価変動の影響を大きく受けたのに対し、加重平均では時価総額の大きいA社の変化率が重視されるため、単純平均と違いマイナスになってしまいます。上記はあえて、極端な例にしていますが、こうした違いが、日々、日経平均とTOPIXの算出においても起きているわけです。
問題はこれをどう投資に活かすかです。計算方法を知らなくても株式投資はできますが、相場の「流れ」をつかむためには、指標がどのように算出され、どういった要因で変化しているのかを理解することは重要です。
例えば、日経平均をTOPIXで割ったNT倍率という指標をみるとき、上記を理解しているといないとでは、見方が変わってきます。NT倍率の上昇が続いているときに、TOPIXよりも日経平均の方が上昇している、という事実だけでは指標の理解にはつながりません。ですが、値がさ株が上昇しているから日経平均とTOPIXに差がついているのだな、ということがわかれば、日経平均に過熱感が出ているから、日経平均先物を売り、TOPIX先物に買いを入れる、という戦略も立てられます。もちろん、NT倍率の上昇がそのまま続くこともあります。その場合は、日経平均の騰勢が強いとみて、前述したファーストリテイリングやファナックのような値がさ株を買う、という戦略もありえるでしょう。
さらに、NT倍率に加え、バリュー指数やグロース指数などの指標も組み合わせてみると、相場でどんな銘柄が上昇していて、投資家はどう動いているのか、という全体像をつかむのに役立てることができます。どんな戦略を立てるにしても、指数の意味を理解することが、投資上級者につながる一歩になることは間違いありません。