オプション取引とは~仕組みや特徴~
今回はオプション取引の仕組みや特徴を説明します。代表的なオプション取引には、日経225オプションがあります。日経225オプションは、日経平均株価を対象とした株価指数オプション取引です。株価指数オプション取引には東証株価指数(TOPIX)を対象としたオプション取引であるTOPIXオプションもあります。また、個別の有価証券を対象としたオプション取引も行われています。
オプション取引の特徴は、権利を売買することです。ある商品を買う権利をコール・オプションといい、売る権利をプット・オプションといいます。
コール・オプション、プット・オプションともに、買い方、売り方が存在します。買い方は代金を支払い権利を取得する人であり、売り方は代金を受け取り権利を与える人になります。このオプションの代金をプレミアムといいます。
コール・オプション(買う権利) | プット・オプション(売る権利) | ||
---|---|---|---|
買い方 | 売り方 | 買い方 | 売り方 |
プレミアムを支払い買う権利を取得する | プレミアムを受け取り買う権利を与える | プレミアムを支払い売る権利を取得する | プレミアムを受け取り売る権利を与える |
<例>コール・オプション
商品Aを100円で買える権利(コール・オプション)をプレミアム10円で購入したとします。なお、この権利は30日後までいつでも行使できるものとします。
10日後に商品Aが130円まで値上がりしたとします。ここでは権利行使せずにもう少し様子をみることにしましょう。そして、20日後に160円になったのでここで権利を行使します。
コール・オプションの買い方が権利行使すると、売り方は権利行使に応じる義務があります。つまり、売り方は160円の商品を100円というあらかじめ定めていた価格で売らなければなりません。権利を行使し商品Aを100円で購入してすぐに160円で売却すれば、利益を得ることができます。実際の損益は、「売却価格160円-購入価格100円-プレミアム10円(権利の購入代金)=50円の利益」となります。
売り方の損益は、「売却価格100円-市場価格160円+プレミアム10円=50円の損失」と考えることができます。つまり、買い方が儲かった分、売り方は損をします。
では上記の例について、実際のオプション取引の用語に置き換えていきます。
商品Aのようにオプション取引の対象となる特定の商品を原資産といいます。100円で買える権利の100円(あらかじめ定められた価格)は、権利行使価格です。
「30日後まで」という期間の区切りがありますが、この場合30日後が満期日となります。満期日までに権利を行使しなければ権利は消滅します。なお、利益が出ている場合に自動で権利行使が行われるものもあります。
次に「30日後までいつでも行使できる」とありますが、このように満期日までいつでも権利行使可能なオプションをアメリカン・タイプといいます。満期日のみ権利行使可能なオプションをヨーロピアン・タイプといいます。まとめると以下になります。
商品A | 原資産(オプション取引の対象となる特定の商品) |
---|---|
100円で買える権利 | 権利行使価格100円のコール・オプション |
30日後 | 満期日 |
30日後までいつでも行使できる | 30日後を満期日とするアメリカン・タイプのオプション |
投資は大きな利益を得られる可能性があれば、大きく損をする可能性もあるというのが一般的です。しかし、オプションの買い方には、大きく利益を得られる可能性がありつつも、損失は一定の金額に限定することができるという特徴があります。
先ほどの例では、商品Aを100円で買える権利(コール・オプション)をプレミアム10円で購入しました。もし商品Aが50円まで値下がりしたとします。この場合は権利を行使して100円で購入するよりも、市場で50円で買った方が良いので、権利は放棄することになります。権利を放棄した場合の損失は、当初支払ったプレミアム10円となります。つまり、商品Aが値上がりすればするほど利益は大きくなりますが、損失は当初支払ったプレミアムに限定されます。
したがって、オプションの買い方は利益無限定・損失限定、反対にオプションの売り方は利益限定・損失無限定となります。
日経225オプションは満期日ごとに異なる商品と考えてください。2月に満期日がくるものは2月限月(げんげつ)、3月に満期日がくるものは3月限月となります。取引所では複数の限月の取引が同時に行われていますが、通常は直近の限月の取引が一番活発となります。
同じ2月限月でも権利行使価格によりプレミアム(オプション価格)は異なります。権利行使価格2万7000円と権利行使価格2万8000円ではプレミアムが異なるということです。
日経225オプションの取引を行う場合、限月を選ぶ、コール・プットの別を選ぶ、権利行使価格を選ぶ、買い方・売り方の別を選ぶ必要があります。
<例>日経225オプション 2月限月 権利行使価格2万7250円のコールを購入
今の日経平均株価は2万7000円ですが上昇は続くと考え、2月限月の権利行使価格2万7250円の日経225コール・オプションをプレミアム550円で購入しました。
まず日経平均株価がどれだけ上昇したら利益が出るかを考えなくてはなりません。損益分岐点は、権利行使価格2万7250円+プレミアム550円=2万7800円となります。損益分岐点となる日経平均株価2万7800円を超えれば利益が出ることになります(手数料などは考慮せず)。
その後、日経平均株価が3万円になったとします。3万円で決済すれば、3万円-2万7800円(損益分岐点:権利行使価格2万7250円+プレミアム550円)=2200円の利益が出ます。実際の日経225オプションの取引単位は1000を乗じますので、権利を取得するために支払う金額は550円×1000=55万円。そして、利益は2200円×1000=220万円となります。
日経225オプションは、満期日にのみ行使可能なヨーロピアン・タイプです。いつでも権利行使できるアメリカン・タイプではありませんので、儲けのチャンスを逃してしまうことが懸念されます。その場合にどうするかというと、権利の転売を行います。上記の例ではプレミアム550円で権利を購入しましたが、プレミアムは日経平均株価の変動などにより日々変動します。一般的に、コール・オプションでは原資産の価格が上昇すれば、プレミアムも上昇します。逆に、プット・オプションでは原資産の価格が下落すれば、プレミアムが上昇します。
日経平均株価が上昇し、先ほどの例で購入した2月限月の権利行使価格2万7250円のコール・オプションのプレミアムが700円まで上昇したとします。この場合、転売すれば(700円-550円)×1000=15万円の利益となります。
このように買い方は権利を転売することでポジション(権利を保有している状態)を解消できます。なお、売り方は権利の買い戻しを行うことでポジション(権利を与えている状態)を解消することができます。
今回はオプション取引の基本的な内容を日経225オプションを例に説明しました。オプションの話をすると、利益無限定・損失限定なので買い方に魅力を感じる人がほとんどです。しかし、オプションのトレーダーに話を聞くと、多くの場合は売り方が勝つとのことでした。買い方は大損しない反面、プレミアム分を損して終わるということです。世の中そう上手くはいきません。
ただ、買い方が大儲けできることもあります。それは安定的に推移していた相場が急変した場合です。安定的に推移していた相場が急騰する場合はコールの買いで、急落する場合はプットの買いで大儲けできます。米中貿易戦争や新型コロナ感染拡大など、最近はプットの買いで利益を得られる局面がありました。
注意したいのが、相場の変動が大きい状況が続いている場合です。オプションの性質上、買い方にとっては変動が大きいほうが有利です。ただ、そういうときはプレミアムも値上がりしています。売り方が「高いお金をもらわないと権利は与えられない」と考えるのは当然でしょう。
安定的に相場が推移していて「あまり値動きがない」と感じるときは、売り方も安値で権利を与えてくれるものです。このような場合は、買い方が利益を上げるチャンスです。多くの場合はそのまま負けてしまいますが、1回でも大きな上昇(または大きな下落)となれば負けた分を取り戻して余りある利益を得られることがあります。
買い方としてロマンを取るか、売り方としてプレミアムによる利益をコツコツ積み重ねるかは、自身のリスク許容度と相談しながら決めることになります。なお、売り方は大きな損失が発生する可能性があるため、取引開始のハードルが買い方より高く設定されていることがあります。また、売り方にのみ建玉(ポジションを解消せずに残っている未決済分)の上限がある場合もあります。それだけハイリスクということであり、1回の負けで財産が吹き飛ぶということもあり得るという点には注意が必要です。