IPO銘柄詳細

コード 市場 業種 売買単位 注目度
6178 東証1部 サービス業 100株 S
スケジュール
スケジュール
仮条件決定 2015/10/07
ブックビルディング期間 2015/10/08 - 10/23
公開価格決定 2015/10/26
申込期間 2015/10/27 - 10/30
払込期日 -
上場日 2015/11/04
価格情報
想定価格 1,350円
仮条件 1,100 - 1,400円
公開価格 1,400円
初値予想 1,500円
初値 1,631円
  • スケジュールは上場企業都合により変更になる場合があります。
基本情報
代表者名 西室 泰三/1935年生
本店所在地 東京都千代田区霞が関
設立年 2006年
従業員数 257083人 (2015/06/30現在)(連結、豪トール社含む)
事業内容 郵便・国内物流事業、国際物流事業、金融窓口事業、銀行業、生命保険業などを営む子会社の経営管理およびそれに付帯関連する事業
URL http://www.japanpost.jp/
株主数 1人 (目論見書より)
資本金 3,500,000,000,000円 (2015/09/10現在)
上場時発行済株数 4,500,000,000株
公開株数 495,000,000株(売り出し495,000,000株)
調達資金使途 -
連結会社 子会社28社、持ち分法適用会社5社
シンジケート
公開株数396,000,000株/(国内分)
種別 証券会社名 株数 比率
主幹事証券 野村 98,917,700 24.98%
主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 98,917,700 24.98%
主幹事証券 ゴールドマン・サックス 22,981,000 5.80%
主幹事証券 JPモルガン 22,981,000 5.80%
主幹事証券 大和 38,610,000 9.75%
主幹事証券 みずほ 38,610,000 9.75%
主幹事証券 SMBC日興 38,610,000 9.75%
主幹事証券 岡三 5,662,800 1.43%
主幹事証券 東海東京 5,662,800 1.43%
引受証券 いちよし 3,366,000 0.85%
引受証券 SMBCフレンド 3,366,000 0.85%
引受証券 藍沢 1,742,400 0.44%
引受証券 岩井コスモ 1,742,400 0.44%
引受証券 東洋 1,742,400 0.44%
引受証券 丸三 1,742,400 0.44%
引受証券 水戸 1,742,400 0.44%
引受証券 マネックス 1,544,400 0.39%
引受証券 SBI 1,544,400 0.39%
引受証券 松井 752,400 0.19%
引受証券 エイチ・エス 475,200 0.12%
引受証券 エース 475,200 0.12%
引受証券 極東 475,200 0.12%
引受証券 高木 475,200 0.12%
引受証券 立花 475,200 0.12%
引受証券 ちばぎん 475,200 0.12%
引受証券 内藤 475,200 0.12%
引受証券 日本アジア 475,200 0.12%
引受証券 むさし 475,200 0.12%
引受証券 光世 158,400 0.04%
引受証券 リテラ・クレア 158,400 0.04%
引受証券 クレディ・スイス 118,800 0.03%
引受証券 ドイツ 118,800 0.03%
引受証券 バークレイズ 118,800 0.03%
引受証券 メリルリンチ日本 118,800 0.03%
引受証券 UBS 118,800 0.03%
引受証券 シティグループ 79,200 0.02%
引受証券 あかつき 19,800 0.01%
引受証券 安藤 19,800 0.01%
引受証券 今村 19,800 0.01%
引受証券 ウツミ屋 19,800 0.01%
引受証券 岡三にいがた 19,800 0.01%
引受証券 岡地 19,800 0.01%
引受証券 木村 19,800 0.01%
引受証券 共和 19,800 0.01%
引受証券 上光 19,800 0.01%
引受証券 長野 19,800 0.01%
引受証券 中原 19,800 0.01%
引受証券 第四 19,800 0.01%
引受証券 西日本シティTT 19,800 0.01%
引受証券 西村 19,800 0.01%
引受証券 日産センチュリー 19,800 0.01%
引受証券 ニュース 19,800 0.01%
引受証券 八十二 19,800 0.01%
引受証券 ばんせい 19,800 0.01%
引受証券 フィリップ 19,800 0.01%
引受証券 ふくおか 19,800 0.01%
引受証券 三木 19,800 0.01%
引受証券 三田 19,800 0.01%
引受証券 山和 19,800 0.01%
引受証券 19,800 0.01%
引受証券 リーディング 19,800 0.01%
大株主(潜在株式なし)
大株主名 摘要 株数 比率
財務大臣 特別利害関係者など 4,500,000,000 100.00%
業績動向(単位:百万円)
は予想
決算期 種別 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2016/03 連結1Q実績 3,446,514 - 242,704 142,639
2016/03 連結予想 14,210,000 - 860,000 370,000
2015/03 連結実績 14,258,842 - 1,115,823 482,682
2014/03 連結実績 15,240,126 - 1,103,603 479,071
売上高
営業利益
経常利益
純利益
1株あたりの数値(単位:円)
は予想
決算期 種別 EPS BPS 配当
2016/03 連結予想 85.20 - 23.00
参考類似企業
銘柄 今期予想PER9/25
日通
17.1倍 (連結予想)
ヤマトHD
22.5倍 (連結予想)
福山運
16.6倍 (連結予想)
セイノーHD
17.0倍 (連結予想)
事業詳細
 日本郵政グループの持ち株会社。創業145周年目。1871年(明治4年)4月に前島密氏により郵便制度が創設され、4年後に始まった郵便為替や貯金業務とともに1885年12月に逓信省(後の郵政省)が発足した。2003年4月に郵政公社が発足しとし2006年1月に、民営化の準備会社として現法人が設立。2007年10月に日本郵政グループの持ち株会社として事業を開始した。2015年5月に豪物流大手のトール社を買収し、7月から国際物流事業を開始した。

 日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を主な事業主体として、郵便・物流事業、金融窓口事業、銀行業、生命保険業などの事業を営んでいる。郵便と銀行業、生命保険の各役務について、ユニバーサル(全国一律)サービスの法律上の義務を負っている。

 直営の郵便局は2015年6月末現在、全国2万0184局(うち営業中2万0115局)、外部委託の簡易郵便局は4281局(うち営業中4052局)。そのほか、「逓信病院」が全国11カ所、「かんぽの宿」が全国61カ所(うち休館中4カ所)、「ホテルメルパルク」11カ所など。

1.郵便・物流事業
 郵便法の規定による郵便の業務や郵便物の作成、差し出しに関する業務、その他の付帯する業務などの郵便事業と、宅配便やメール便などの物流事業などを行っている。

2.金融窓口事業
 郵便局(簡易郵便局含む)にて、郵便・物流事業の窓口業務、銀行窓口業務、保険窓口業務や、名産品などの物販事業などを行っている。また、不動産事業、提携金融サービスも行っている。

3.銀行業
 ゆうちょ銀行が銀行法に基づき銀行業を全国規模で行っている。

4.生命保険業
 かんぽ生命保険が生命保険業や、他の生命保険会社による商品の受託販売を手掛けている。

5.その他
 グループ内で1カ所に集約したほうが効率的な間接業務のグループシェアード事業や、病院事業、宿泊事業などを営んでいる。

 2015年3月期の連結経常収益の構成比は、郵便・物流事業12.7%、金融窓口事業1.0%、銀行事業収益14.6%、生命保険事業収益71.3%、その他経常収益0.4%。
コメント
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・198万株を上限に引受人以外の金融商品取引業者に販売が委託される。
・521億円に相当する株式数を上限に、日本郵政従業員持ち株会を親引け先として販売する。
・財務大臣には180日間のロックアップが掛かる。
・金融2社の売却資金を元手に上場翌日から3月末までに、自己株式立ち会い外買い付け取引(ToSTNeT-3)で自己株式を買い付けする。財務大臣は政府保有株について、買い付け数量と同数の売り付けを注文する。
・2016年3月期予想の豪トール社連結によるのれん償却額は190億円。


<ファーストインプレッション>
 郵政3社IPOの中心銘柄。ポートフォリオ的にはここを買えば他2社も保有することになり、外せない銘柄。ただいずれ手放す金融事業以外はカツカツであり、日本郵政にとって永続子会社の日本郵便は業績貢献度が低い。電子化の波を受けてどこの国でも郵便事業は斜陽産業だ。
 ただ、規制に縛られた金融2社と違い、経営の自由度は大きい。それだけに民営化によるコスト意識向上で、改善の余地は大きいとも解釈できる。何より駅前の一等地を含む、国内屈指の土地持ち企業だ。老舗企業には本業が行き詰まっても、昔から不動産開発で生き延びる例は多い。さらに、郵政の時価総額は金融2社の合計を下回る。配当利回りも実質3.4%でゆうちょの次に高い。上場翌日からは政府保有株の買い取りを目的に自社株買いも実施される。日通との統合の際の不手際や、豪トール社の高値買いなど経営手腕に不安は大きく、改善効果は結果を見ながら株価に反映されることになりそうだが、下値不安は少ないのではないか。
仮条件分析 (BB参加妙味 :B)
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想定価格: 1,350円
 吸収資金レンジ: 6682.5億円 - 6682.5億円(今期予想連結PER: 15.8倍)
 時価総額レンジ: 60750.0億円

仮条件: 1,100円 - 1,400円
 吸収資金レンジ: 5445.0億円 - 6930.0億円(今期予想連結PER: 12.9倍 - 16.4倍)
 時価総額レンジ: 49500.0億円 - 63000.0億円

 仮条件は想定価格を挟んで下寄りに決められた。下限価格は想定を18.52%下回り、上限は3.70%上回る。下限価格の下振れ率は、郵政3社のなかで最大となった。機関投資家のポテンシャルというより、ブックビル期間の長さが考慮されたものとみられる。

<強材料>
郵政3社の中心銘柄、土地持ち企業、割安感強い、金融2社の株価次第でさらなる上値余地あり、マイナンバー送付特需

<弱材料>
赤字部門あり、郵便は斜陽産業、収益部門は段階的に売却、減収減益、政治銘柄

<機関投資家の評価>(訂正目論見書より)
1.高い知名度とブランド力を背景に、強固な顧客基盤を有し、全国を網羅する郵便局ネットワークを活用して多様な商品・サービスを提供していること。
2.安定した収益を計上しており、安定的な配当方針を掲げていること。
3.成熟した国内市場において、収益性の向上が望まれること。

<結論>
 弱めBとする。公開価格が仮条件上限ならば、初値は1400~1500円(PER:15.8~
17.6倍)と予想する。
 時価総額は上場時の金融2社の持ち分を下回っている。日本郵便と持ち株会社をマイナス評価していることになる。ただ、金融事業以外もセグメント損益は黒字。買収した豪トール社の評価や、日本郵便の保有する膨大な不動産を踏まえるとマイナス評価は保守的過ぎる。金融2社の上場後の株価次第ではさらに割安感が強まると考える。

 日本郵政グループの持ち株会社。金融2社のほか、日本郵便や本部業務としての人材派遣会社、ビル清掃会社、通信ネットワーク会社などを抱える。また、病院や「かんぽの宿」などの宿泊施設を運営している。法律上は金融2社が形式上、将来の完全売却がうたわれている一方、日本郵便は将来にわたっての株式保有が義務付けられている。

 郵便事業はどこの国でも電子化の波に押される斜陽産業だ。わが国の場合は諸外国ほど縮小してはいないが、毎年2%前後ずつ減少している。半面、ゆうパックなどの物流事業はインターネット通販の普及を背景に伸びている。郵便物流事業全体の営業収益は横ばいもしくは微増で推移している。
 一方、日本郵便のもう一つの柱である金融窓口事業は、金融2社の事業がしっかりとなっていることや、不動産開発の推進、アフラックとの提携など増収傾向となっている。

 しかしながら、日本郵便はグループのコストセンターの側面もあり、収支は厳しい。6月末現在のグループ連結従業員約23万人(豪トール社含まず)のうち、9割近くが日本郵便の手掛ける郵便・物流事業と金融窓口事業に携わる。両事業とも人海戦術的なビジネスであり、人件費が重い。金融2社からは1兆円ちかい代理業務手数料が入るが、ほとんどが人件費に消えてしまっているのが実情だ。足元では人件費の上昇を主因に両事業が増収のなか、減益傾向にある。次世代情報端末へのシステム投資も負担になっている。
 全国では郵便局舎の老朽化が問題になっており、特別損失には前期に220億円の対策工事損失を計上。今期は560億円に上る見込み。民営化施行後、黒字を優先し過ぎ、工事費の上昇した今になってツケの支払いを迫られている。

 日本郵政直轄の事業である「逓信病院」の病院事業や、「かんぽの宿」などの宿泊事業も重しだ。日本郵政発足後、両事業は赤字が続いている。もともと保険契約者の福利厚生や職域病院として建設した経緯があり、収益性は問われなかった。このため民営化施行後、5年以内の事業撤退がうたわれていたが、オリックスへのかんぽの宿一括売却騒動や、政権交代などで売却はいったん凍結。日本郵政の「経営判断」に委ねられることになった。現在は売却や閉館のほか、改装などによる再建継続などを進めている。
 ただ、売却再開の14.3期以降は、皮肉にも赤字が拡大する傾向にある。15.3期は両事業合わせて90億円近い営業赤字を計上した。ちなみにかんぽの宿一括売却騒動では、売却価格は109億円と伝えられていたが、騒動翌期からの赤字は宿泊事業だけで累積162億円に上る。
 両事業はセグメントでは「その他の事業」に含まれている。その他事業そのものは全体で黒字を保っているため、両事業の赤字は目立たないが、決して小さくない額の赤字を垂れ流しているだけに、両事業の再建・撤退は上場後も喫緊の課題といえる。

 一方、日本郵便で潜在力として見ておきたいのは、土地持ち企業といった側面だ。鉄道輸送の名残で駅前一等地も多く、計上額は1.3兆円(持ち株会社単体保有分を合わせると1.4兆円)に上る。これはNTTグループやトヨタ自動車に匹敵する規模だ。上場企業で1兆円以上保有するのは7社しかない。東京駅前のJPタワーに象徴されるように、日本郵便でも不動産開発は重点課題の一つとして位置付けている。まだノウハウ吸収の段階ではあるが、JRグループやNTTグループの例からしても、今後の収益柱に成長していく可能性は高い。郵便物流事業の低採算性からすれば、金融2社を完全売却した際には将来の稼ぎ頭に育っている可能性もある。


<日本郵政株の評価について>

 日本郵政の株価評価には、SOTP(部門別評価の合計)方式を適用する。金融2事業は将来的に売却が進むごとにその分の利益が削られる。今期についても上期はフルで連結されているのに対し、下期は売却分の1割前後ずつの寄与分がなくなる。このため連結全体の利益で評価すると見誤ることになる。日本郵政の公開価格が金融2社に比べて遅いのは、2社の評価が定まらないと、郵政の評価もできないという前提があるからだ。

 仮条件上限による金融2社の時価総額の日本郵政の上場時の持ち分は、合計で7.1兆円に上る。これに対し、日本郵政の時価総額は6.3兆円に過ぎない。日本郵便などを負の資産として見なしていることになる。
 日本郵便の収益貢献はゼロに近いが、日本郵政には金融2社を含めて経営指導料などが入っている。豪トール社の買収で新たに国際物流事業も第2四半期からは加わる。金融2事業を除いた豪トール社ののれん償却額前のセグメント利益の合計は今期690億円の予想だ。法人実効税率と市場平均PER15.5倍を適用すると金融2事業以外の価値は7165億円と試算できる。

 金融2社の株価が上限に決まると仮定すると、日本郵政の適正な時価総額は7.8兆円に上る。株価では1737円となり、仮条件は上限でも24%ほど割安な計算だ。金融2社の上場後の株価次第ではさらなる上値余地が生まれよう。市場の目は収益部門である金融2社、特に利回りの高いゆうちょ銀行に行きがちだが、低収益部門を抱える分、上場後の経営改善などによる収益向上などが期待できる。ただ、3社同時の上場で需給は重く、初値だけで割安感は解消できない。配当利回りは上限でも3.28%と申し分ない水準であり、下値は堅いとみて、初値想定レンジは公開価格から節目の1500円と予想する。

 なお、日本郵政には金融2社にはない安全装置が含まれている。今回は3社ともオーバーアロットメントがないため、いざというときに下値を支えるシンジケートカバー取引がない。ただし、日本郵政の場合、金融2社の売却金は、上場翌日から自社株買いが始まる。政府保有株の取得を目的とするが、取引時間前の自己株式立ち会い外買い付け取引(ToSTNeT3)を通すため誰でも割り込める。買い付け価格は前営業日の終値が適用されるため、シンジケートカバーのように一定水準で直接的に支えるわけではないが、金融2社にはないスキームであり、念頭に置いておくといいだろう。
 また、大型株特有の上場後の需給要因としてFTSEやMSCIなどの早期組み入れ対象によるものがある。だが、親子上場となるだけに子会社は対象になるのか不明なのに対し、親会社は通常通りに対象になるものと期待される。組み入れ前の先回り買いが下支え要因になると考える。

※日本郵政の株価評価は金融2社の株価評価に左右されるため、2社の公開価格決定後、あらためて評価します。


<追加分析>
 Bに引き上げる。公開価格が仮条件の上限ならば、1450~1600円に引き上げる。
 金融2社の公開価格はいずれも上限で決まった。委託販売分が両社とも低調という意外な部分もあったが、全体の倍率は国内外とも高かったもよう。なお、売り出し価格とともに引受価額も決まったことで、日本郵政は上場翌日から開始する自己株式取得枠について、上限22.5億株、7309億6463万8025円と設定した。ただし、総額を株数で割った場合の単価は324円となってしまう。買い付け価格は前日終値が適用されるため、実際は4~5億株程度と推定される。

 2社の需要が多く積み上がったことで、日本郵政のアップサイドの可能性はさらに高まった。自社株買いは上場時発行済み株数の1割程度と推定され、この分を考慮すると割安感はさらに高まる。自社株買いを4億株と仮定した時の金融2社を公開価格で評価し、その他の事業をPER15.5倍で評価した場合の適正株価は1906円に上昇する。なお、金融2社が弊社が算出する適正株価(かんぽ2800円、ゆうちょ銀1724円)に上昇した場合は、2258円が適正水準になる。郵政株は金融2社と郵政株自身で二重にディスカウントされている。

 なお、今後の郵政の有望事業である不動産開発事業について補っておくと、上場後と前後してビル開業がめじろ押しだ。来月完工する名古屋駅のJPタワーや来春の博多駅のほか、下期にはマンション4棟が引き渡し予定。また、本業の郵便ではマイナンバーの書留配送が始まっており、業績は下期の巻き返しが期待できる。

 ただし、稼ぎ頭の金融2社と違って斜陽産業の郵便事業を抱える郵政株には依然として負のイメージがある。2社の売却が進むごとに、全体の大半を占めるフローの利益は削られる。自社株買いする分には1株当たりの利益は相殺されるが、今後は日本郵便の事業投資に回すとしており、その成果が問われる。また、ここに来ての景気減速で買ったばかりの豪トール社を中心に、企業物流の失速も警戒される。今回のIPOでは利回りに注目が集まっていることからも、利回り3%を割る1534円から上での買いは限定的になると考える。


<追加分析2>
 B継続。引き続き1450~1600円を想定初値とする。
 ほとんどの個人は3社一律にブックを入れているため日本郵政後半戦の動きは静か。金融2社の仮条件上限での決定は織り込み済みだ。なお、20日にはグレーマーケットで両社の株価が公開価格をやや上回る買い注文が入ったと報じられた。残る郵政の価値は2社の価値を減価して考えなくてもよくなり追い風である。報道通りゆうちょ銀行を1510円、かんぽを2300円とした場合の日本郵政の適正株価は1980円と算出できる。

 なお、死角として考えられるのは金融2社の収益が運用から成り立つ以上、市況そのものだ。今のところ相場は落ち着きを保っているが、昨年末の水準を前提にした日経平均株価や為替の前提にはそれほど余裕がない。リーマンショック後はまだウエートの少ないリスク資産が減益の要因になっただけに、今回似たような状況が起これば当時以上の減益要因になりかねない。
公開価格分析
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公開価格: 1,400円
 吸収資金: 6,930.0億円(今期予想連結PER: 16.4倍)
 時価総額: 63,000.0億円

 公開価格は仮条件上限で決められた。引受価額は同額だが、売出人から国内引受人には総額93億6936万円(1株当たり23.66円)の引受手数料が支払われる。持ち株会への親引けは3714万1100株で上限の78%に当たる。金融子会社2社とトール社を除く連結従業員1人当たり178株となる(トール社従業員の入会資格については不明で入れた場合は157株)。引受団以外の証券会社の委託販売分は50万7900株で上限の26%と、金融2社と同水準での消化率だった。

 日本経済新聞によれば「日本郵政にもゆうちょ銀並みの需要(5倍以上)」があったとされる。金融2社の上限決定を受けてあぶれた投資家が郵政株の取得に走ったという。ブックビルディング後半は日経平均株価が一段高しており、資産運用で業績が構成される3社には追い風が吹く。
 斜陽の郵便事業を抱える郵政株は金融2社と比べると人気は落ちるようだが、しっかりしたスタートは見込めよう。グレーマーケットでは5%高の1470円での取引が報じられた。需給面ではFTSEグローバル株価指数への早期組み入れ(ファストエントリー)が決まった。組み入れ価格は上場から一週間後の10日大引けだが、早期組み入れは先回り買いを誘発させることが多く、公開株取得者も初値より組み入れ時の売却を狙う要因になる。よりインパクトの大きいMSCIでの早期採用では金融2社については見方が割れるが、親会社株が対象外になることは考えにくい。
初値予想
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初値予想: 1,500円(今期予想連結PER: 17.6倍)
初値買い妙味: A

 初値小しっかりを予想する。斜陽事業や赤字事業を抱え、郵政3社のなかでの人気は劣るようだ。ただし、親会社として金融2社の利益は反映されるうえ、配当利回りはゆうちょ銀行の次に高い。時価総額は2社の持ち分を下回っており、見直し余地がある。

 郵政グループの持ち株会社。同時に上場する金融事業のほか、郵便・物流事業や金融窓口事業などのほか、病院事業や宿泊事業を展開する。6月から買収した豪トール社の国際物流事業が加わった。

 今のところグループの収益のほとんどは金融事業で構成されており、郵便・物流事業はトントン。そのほかでは、金融子会社の代理業務である金融窓口事業とグループの間接業務のグループシェアードなどが、上場時の持ち分換算で全体の利益の実質2割弱を占める。

 金融2社の公開価格での日本郵政の上場時の持ち分は、合計で7兆1017億円。日本郵政の時価総額を上回っており、親子でねじれた評価になっている。日本郵政は赤字の病院・宿泊事業や市場が縮小する郵便事業を抱えることがネックだが、本部事業で赤字というわけではない。少なくとも買収したトール社の価値も加わるため、見直し余地がある。
 金融事業以外ののれん償却前セグメント利益を1日の市場平均PERの15.86倍で評価すれば約6763億円。さらに、日本郵政が上場後に実施する自社株買いで、約4億株を吸い上げるとすると適正株価は1897円と算出できる。さらに金融2社が弊社の算出する適正株価(かんぽ生命2800円、ゆうちょ銀行1705円)に上昇した場合は2229円と計算できる。二重にディスカウントされている形で、日本郵政の割安感は大きい。

 しかしながら、親会社株の人気は直接利益を稼ぐ金融2社と比べ劣るようだ。配当利回りがゆうちょに次ぐ3.29%と高く下押しはないだろうが、郵便事業はどこの国でも電子化を背景にした市場縮小のなか、ユニバーサル(全国一律)サービスの維持に悩まされている。海外の郵便会社の上場例を見ても、必ずしも順風満帆ではない。郵便事業は文字通り「お荷物」と思われている。このため金融2社と異なり、適正株価への収れんは時間がかかると考え、初値は3社では最も上昇率の低い100円高の1500円を予想する。

 なお、新事業では買収で進出した国際物流に目が行きがち。だが、日本郵便と日本郵政は合計で1.4兆円もの土地を保有していることは忘れてはならない。既に東京駅前のJPタワーが開業している。上場後にはJPタワー名古屋はじめ続々と収益化が始まる計画だ。
 名古屋など一部はテナント誘致で苦戦しているもよう。他社との協業も多く当初の収益寄与は限られよう。しかし、日本郵政は未開拓の駅前一等地を多く保有する、事実上最後の企業だ。そもそも1兆円以上もの土地を保有する上場企業は7社しかなく、上はJR東海・東日本と財閥系不動産ばかり。不動産業の潜在力は大きい。仮に将来的に金融2社を完全売却が実現した時、取引所の業種分類は陸運業ではなく不動産業に変わることになるかもしれない。
初値分析
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初値: 1,631円(今期予想連結PER: 19.1倍) / 上昇率: 16.5% / 高値: 1,775円 / 安値: 1,596円 / 終値: 1,760円
出来高: 168,451,300株 / 対公開株数: 34.0% / 初値出来高: 34,914,700株 / 初値売買代金: 56,945,875,700円

 しっかりした初値が付いた。ゆうちょ銀行と同時の売り買い一致だったが、初値売買代金と上昇率はわずかにゆうちょ銀を上回った。初値売却率は親引けを差し引くと7.63%と低かった。配当利回りに着目する投資家が多く、旺盛な買い意欲に対し、多少の上昇では十分な売りが出てこなかった。

 寄り付き後は一段高した。初値近辺でのもみ合いが続いたが、後場後半に子会社のかんぽ生命保険がストップ高に張り付くと大引けに向けて急伸した。子会社株を買えなくなった代わりに、親会社株を買おうとする動きが強まった。なお、売買は郵政3社に集中しており、中でも親会社の日本郵政の売買代金は2780億円と全市場でトップだった。

 しばらくは強い展開を予想する。大引け間際の強含みは短期的な動き。かんぽ生命が買えるようになれば反動が避けられない。場合によっては朝の自己株式立会外取引で売却してしまう手もある。自社株買いは政府保有株の買い付けが目的だが、売却は誰でも参加できる。ただ10日大引けには、FTSEの株価指数の早期組み入れがあり、持ち直しは早いだろう。MSCIの早期組み入れについては、これを書いている時点ではまだ発表されていないが、順当ならば17日大引けになる。実際には組み入れによる実需よりも、先回り買いの動きが相場を支えることになる。

 12月末のTOPIX組み入れはについては、通常ならば株価もこなれてくる時期だ。各社のカバレッジも始まっており、組み入れをネタにした株価上昇も起こりにくい。しかしながら、今回はクリスマス過ぎの薄商いの時期に当たるだけに、思わぬ強い動きをする可能性がある。

 なお、ジェフリーズが郵政3社のレーティングを始めた。強気なのは郵政のみ。レーティング「Buy」、目標株価1740円と設定している。
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※郵政3社については特集サイトを設置しています。ゆうちょ銀行については第8回の項目で過去業績について図表入りで解説していますので、ご参考下さい。

11/5 指数採用インパクト
 SMBC日興証券では、郵政3社の指数採用の影響についてまとめた。日本郵政については、以下の通り。株価は4日終値の1760円で計算した時のそれぞれの影響は、10日のFTSEが990.0万株(174.24億円)、17日のMSCIが3150.0万株(554.40億円)、12月29日のTOPIXが3526.9万株(620.73億円)で単純合計は7666.9万株(1349.37億円)としている。
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日経平均 38,026.17 -326.17
TOPIX 2,682.81 -15.48
グロース250 635.64 +4.48
NYダウ 43,408.47 +139.53
ナスダック総合 18,966.14 -21.33
ドル/円 154.44 -0.99
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