IPO銘柄詳細
コード | 市場 | 業種 | 売買単位 | 注目度 |
---|---|---|---|---|
6523 | 東証1部 | 電気機器 | 100株 | S |
注目のIPO銘柄
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スケジュール
スケジュール | |
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仮条件決定 | 2021/09/28 |
ブックビルディング期間 | 2021/09/29 - 10/05 |
公開価格決定 | 2021/10/06 |
申込期間 | 2021/10/07 - 10/12 |
払込期日 | 2021/10/13 |
上場日 | 2021/10/14 |
価格情報 | |
---|---|
想定価格 | 3,700円 |
仮条件 | 3,250 - 3,500円 |
公開価格 | 3,250円 |
初値予想 | 3,120円 |
初値 | 3,120円 |
- スケジュールは上場企業都合により変更になる場合があります。
基本情報
代表者名 | ジョン・マロッタ(上場時42歳0カ月)/1979年生 |
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本店所在地 | 東京都港区西新橋 |
設立年 | 2013年 |
従業員数 | 181人 (2021/07/31現在)(平均47.8歳、年収904.7万円)、連結9630人 |
事業内容 | 各種ヘルスケア機器・サービスの開発・製造・販売 |
URL | https://www.phchd.com/jp |
株主数 | 36人 (目論見書より) |
資本金 | 36,409,120,000円 (2021/09/07現在) |
上場時発行済株数 | 122,975,015株(別に潜在株式5,784,179株) |
公開株数 | 25,401,100株(公募6,611,700株、売り出し15,476,300株、オーバーアロットメント3,313,100株) |
調達資金使途 | 設備投資、借入金の返済 |
連結会社 | 83社 |
シンジケート
公開株数9,939,300株(別に1,490,800株)/国内分
種別 | 証券会社名 | 株数 | 比率 |
---|---|---|---|
主幹事証券 | SMBC日興 | 3,346,300 | 33.67% |
主幹事証券 | 三菱UFJモルガン・スタンレー | 2,882,500 | 29.00% |
主幹事証券 | 野村 | 1,921,700 | 19.33% |
主幹事証券 | みずほ | 1,258,900 | 12.67% |
主幹事証券 | BofA | 99,400 | 1.00% |
主幹事証券 | ゴールドマン・サックス | 99,400 | 1.00% |
主幹事証券 | JPモルガン | 99,400 | 1.00% |
引受証券 | SBI | 92,700 | 0.93% |
引受証券 | 楽天 | 92,700 | 0.93% |
引受証券 | マネックス | 46,300 | 0.47% |
大株主(潜在株式を含む)
大株主名 | 摘要 | 株数 | 比率 |
---|---|---|---|
KKR PHC Investment L.P. | 親会社 | 55,804,244 | 45.77% |
三井物産(株) | その他の関係会社 | 24,594,240 | 20.17% |
(株)生命科学インスティテュート | 特別利害関係者など | 15,348,237 | 12.59% |
パナソニック(株) | 特別利害関係者など | 13,158,136 | 10.79% |
LCA 3 Moonshot LP | ベンチャーキャピタル(ファンド) | 5,714,286 | 4.69% |
従業員持ち株会 | 特別利害関係者など | 1,014,190 | 0.83% |
平嶋竜一 | 執行役員 | 258,820 | 0.21% |
宮崎正次 | 代表取締役副社長COOなど | 255,226 | 0.21% |
大塚孝之 | 執行役員、子会社取締役および監査役 | 239,730 | 0.20% |
山根健司 | 特別利害関係者など | 236,000 | 0.19% |
丸橋祐次 | 子会社の取締役および監査役 | 214,329 | 0.18% |
高橋治 | 子会社の取締役および監査役 | 194,030 | 0.16% |
業績動向(単位:百万円)
決算期 | 種別 | 売上収益 | 営業利益 | 税引き前利益 | 純利益 |
---|---|---|---|---|---|
2022/03 | 連結1Q実績 | 80,909 | 5,634 | 14,112 | 10,384 |
2022/03 | 連結予想 | 319,045 | 20,035 | 17,517 | 13,511 |
2021/03 | 連結実績 | 306,071 | 17,599 | 22,788 | 16,906 |
2020/03 | 連結実績 | 272,637 | 13,177 | 5,611 | 5,276 |
売上収益
営業利益
税引き前利益
純利益
1株あたりの数値(単位:円)
決算期 | 種別 | EPS | BPS | 配当 |
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2022/03 | 連結予想 | 113.33 | 1,155.58 | 22.00 |
参考類似企業
事業詳細
医療機器メーカー。旧パナソニックヘルスケア(現PHC)の持ち株会社で、現在は米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の傘下にある。第2位株主の三井物産の持ち分法適用関連会社でもある。糖尿病関連が稼ぎ頭。
母体となった松下寿電子工業は1948年11月に大新鉱業として設立され、69年の3社対等合併により誕生した。72年12月には東京証券取引所と大阪証券取引所のそれぞれ第二部に上場し、翌年10月に第一部に指定された。その後02年9月に松下電器産業(現パナソニック)が完全子会社化するまで、約30年間にわたり上場していた。完全子会社化後はグループ内再編の過程でヘルスケア事業の集約先となり、商号をパナソニックヘルスケアに改めた。だが、14年3月に親会社の財務改善を目的にKKRに売却された。KKR傘下入り後はパナソニック以外からの事業買収を進め、18年4月には現商号に変更し、パナソニックを社名から外した。
1.糖尿病マネジメントドメイン
糖尿病をはじめとする生活習慣病に関する検査・分析機器などを開発・製造・販売している。主な製品には、血糖自己測定システムを中心とする糖尿病ケア製品、POC(Point of Care:簡易迅速)生化学分析装置、呼気一酸化窒素測定装置や病院・診療所用血糖値測定システムなどのPOCT(簡易迅速検査)製品と電動式医薬品注入器などがある。
2.ヘルスケアソリューションドメイン
・メディコム事業
医療情報システム分野のIT(情報技術)製品を開発・製造・販売している。主に診療所・病院向けの医科医事システム、電子カルテシステム、保険薬局向けの電子薬歴システムなどを手掛ける。
・LSIM事業
臨床検査事業を手掛ける。主に臨床検査受託、病院業務運営支援、食品・調理加工品検査、施設衛生検査、全自動臨床検査システム、POC機器、非臨床試験、臨床試験(治験)、WADA(世界反ドーピング機関)公認のドーピング検査などを提供している。2019年8月に三菱ケミカルホールディングスグループより、臨床検査大手のLSIMを株式交換にて事業買収した。
3.診断・ライフサイエンスドメイン
・バイオメディカ事業
医療、ライフサイエンス分野の研究で用いられる保存機器、培養機器、実験環境機器や、病院や薬局などの調剤室で用いられる調剤機器、フードソリューション機器などを開発・製造・販売している。
主な製品は超低温フリーザー、メディカルフリーザー、薬用保冷庫、CO2インキュベーター、クリーンベンチ、バイオハザード対策用キャビネット、乾熱滅菌器、適温配膳車、自動錠剤包装機などである。
・病理事業
病理用機器や顕微鏡用スライドガラス、染色試薬など包括的な病理用ソリューションを提供している。2019年6月に米サーモフィッシャーサイエンティフィック社より事業買収した。
主な製品には自動包埋装置、パラフィンブロック作製装置、ミクロトーム、自動染色装置、カバースリッパー、検体管理システム、マイクロスライドガラスや染色試薬などがある。
2021年3月期の連結売上収益の構成比は、糖尿病マネジメント35.3%、ヘルスケアソリューション37.9%(メディコム事業9.6%、LSIM事業28.4%)、診断・ライフサイエンス26.1%(バイオメディカ事業14.4%、病理事業11.7%)、その他および調整・消却0.6%。地域別では日本43.9%、欧州24.9%、北米21.6%、その他9.5%。
母体となった松下寿電子工業は1948年11月に大新鉱業として設立され、69年の3社対等合併により誕生した。72年12月には東京証券取引所と大阪証券取引所のそれぞれ第二部に上場し、翌年10月に第一部に指定された。その後02年9月に松下電器産業(現パナソニック)が完全子会社化するまで、約30年間にわたり上場していた。完全子会社化後はグループ内再編の過程でヘルスケア事業の集約先となり、商号をパナソニックヘルスケアに改めた。だが、14年3月に親会社の財務改善を目的にKKRに売却された。KKR傘下入り後はパナソニック以外からの事業買収を進め、18年4月には現商号に変更し、パナソニックを社名から外した。
1.糖尿病マネジメントドメイン
糖尿病をはじめとする生活習慣病に関する検査・分析機器などを開発・製造・販売している。主な製品には、血糖自己測定システムを中心とする糖尿病ケア製品、POC(Point of Care:簡易迅速)生化学分析装置、呼気一酸化窒素測定装置や病院・診療所用血糖値測定システムなどのPOCT(簡易迅速検査)製品と電動式医薬品注入器などがある。
2.ヘルスケアソリューションドメイン
・メディコム事業
医療情報システム分野のIT(情報技術)製品を開発・製造・販売している。主に診療所・病院向けの医科医事システム、電子カルテシステム、保険薬局向けの電子薬歴システムなどを手掛ける。
・LSIM事業
臨床検査事業を手掛ける。主に臨床検査受託、病院業務運営支援、食品・調理加工品検査、施設衛生検査、全自動臨床検査システム、POC機器、非臨床試験、臨床試験(治験)、WADA(世界反ドーピング機関)公認のドーピング検査などを提供している。2019年8月に三菱ケミカルホールディングスグループより、臨床検査大手のLSIMを株式交換にて事業買収した。
3.診断・ライフサイエンスドメイン
・バイオメディカ事業
医療、ライフサイエンス分野の研究で用いられる保存機器、培養機器、実験環境機器や、病院や薬局などの調剤室で用いられる調剤機器、フードソリューション機器などを開発・製造・販売している。
主な製品は超低温フリーザー、メディカルフリーザー、薬用保冷庫、CO2インキュベーター、クリーンベンチ、バイオハザード対策用キャビネット、乾熱滅菌器、適温配膳車、自動錠剤包装機などである。
・病理事業
病理用機器や顕微鏡用スライドガラス、染色試薬など包括的な病理用ソリューションを提供している。2019年6月に米サーモフィッシャーサイエンティフィック社より事業買収した。
主な製品には自動包埋装置、パラフィンブロック作製装置、ミクロトーム、自動染色装置、カバースリッパー、検体管理システム、マイクロスライドガラスや染色試薬などがある。
2021年3月期の連結売上収益の構成比は、糖尿病マネジメント35.3%、ヘルスケアソリューション37.9%(メディコム事業9.6%、LSIM事業28.4%)、診断・ライフサイエンス26.1%(バイオメディカ事業14.4%、病理事業11.7%)、その他および調整・消却0.6%。地域別では日本43.9%、欧州24.9%、北米21.6%、その他9.5%。
コメント
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・直近(2021年8月)の特別利害関係者らによる自社株買い単価は3500円と625円。
・公開株の約55%に当たる2938万6400株(追加分含む)を海外で販売する。
・KKR PHC Investmentの上場後持ち分は21.2~26.9%で筆頭株主の地位は維持される。
・大株主上位(潜在株含む)5名ほか、役員(子会社含む)ら14名には180日のロックアップが掛かる。ただし、LCA 3 Moonshoの売り出し後の保有株には取引銀行の質権が設定されており、債務不履行の際にはロックアップ期間にかかわらず売却される可能性がある。
・新株予約権は上場時に全て行使期間入りしている。だがそのうち75万3000株分は最初の決算発表後から行使可能で、毎年度3分の1ずつのベスティング条項が付けられている。
〈ファーストインプレッション〉
ソフトバンク以来の超大型案件。売上比率では目立たず足元では新型コロナ関連の増減が激しいが、利益面では圧倒的に糖尿病分野が稼ぎ頭となっている。糖尿病は高齢化とともに増加傾向にある病気であり、不治の生活習慣病だ。それだけに業者にとっては期待のできる市場ということになる。
医療機器関連はコロナ特需の思惑でバリュエーションの差が大きいが、調整後PERは15倍弱となっており、ひとまず透析関連に強いニプロとメディキットの間だ。ただし、のれん無形資産資本倍率は2.6倍にも上り、出口案件のなかでも財務はかなり悪い。希薄化後EV/調整後EBITDAは11倍であり、両社をだいぶ上回る。同社も超低温フリーザーなどの出荷が増えコロナの追い風を受けてはいるが、競争も激しい分野だけに利益率は低い。巨額な引受手数料をもたらす超大型案件はファンドの交渉力も比例して強まるだけに、やはり一筋縄ではいかなそうだ。
・公開株の約55%に当たる2938万6400株(追加分含む)を海外で販売する。
・KKR PHC Investmentの上場後持ち分は21.2~26.9%で筆頭株主の地位は維持される。
・大株主上位(潜在株含む)5名ほか、役員(子会社含む)ら14名には180日のロックアップが掛かる。ただし、LCA 3 Moonshoの売り出し後の保有株には取引銀行の質権が設定されており、債務不履行の際にはロックアップ期間にかかわらず売却される可能性がある。
・新株予約権は上場時に全て行使期間入りしている。だがそのうち75万3000株分は最初の決算発表後から行使可能で、毎年度3分の1ずつのベスティング条項が付けられている。
〈ファーストインプレッション〉
ソフトバンク以来の超大型案件。売上比率では目立たず足元では新型コロナ関連の増減が激しいが、利益面では圧倒的に糖尿病分野が稼ぎ頭となっている。糖尿病は高齢化とともに増加傾向にある病気であり、不治の生活習慣病だ。それだけに業者にとっては期待のできる市場ということになる。
医療機器関連はコロナ特需の思惑でバリュエーションの差が大きいが、調整後PERは15倍弱となっており、ひとまず透析関連に強いニプロとメディキットの間だ。ただし、のれん無形資産資本倍率は2.6倍にも上り、出口案件のなかでも財務はかなり悪い。希薄化後EV/調整後EBITDAは11倍であり、両社をだいぶ上回る。同社も超低温フリーザーなどの出荷が増えコロナの追い風を受けてはいるが、競争も激しい分野だけに利益率は低い。巨額な引受手数料をもたらす超大型案件はファンドの交渉力も比例して強まるだけに、やはり一筋縄ではいかなそうだ。
仮条件分析
(BB参加妙味
:C)
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想定価格: 3,700円
吸収資金レンジ: 1719.0億円 - 1976.9億円(今期予想連結PER: 32.5倍)
時価総額レンジ: 4520.3億円
仮条件: 3,250円 - 3,500円
吸収資金レンジ: 717.9億円 - 889.0億円(今期予想連結PER: 28.7倍 - 30.9倍)
時価総額レンジ: 3996.7億円 - 4304.1億円
仮条件は想定価格を12.16~5.41%下回る250円幅に設定された。さらに売り出し株を大きく削減。LCA 3 Moonshot LPは売出人から外れ、三菱ケミHD傘下の生命科学インスティテュートは売り出しを5万0800株上乗せした。また、手取り調達金額を維持するためか新株発行数も増やしたが、公開株数は差し引きで半分強減らした。この結果、最大吸収金額は55%減少することになった。
また、LCA 3 Moonshot LPの売り出し後の保有株は質権対象になっていたが、その項目について削除した。ただし、保有株のうち285万7143株は制度ロックアップの対象となっている。
なお、国内外の削減率は同一であり、海外配分比率は55%で変化なし。
上場時発行済み株式数:122,170,815株→ 122,975,015株(+0.66%)
公開株式数:5342万9400株→2540万1100株(-52.46%)
海外合計:29,386,400株→13,971,000株(-52.46%)
最大吸収金額:1976.9億円→ 889.0億円(-55.03%)
最大時価総額:4520.3億円→4304.1億円(-4.78%)
〈強材料〉
国際オファリング、糖尿病人口増加傾向、業績拡大
〈弱材料〉
仮条件大幅引き下げ、公開株数大幅削減、財務不良、大型出口案件、大企業の捨てた事業、医療費抑制政策、BGM市場縮小
〈結論〉
Cとする。公開価格が仮条件上限ならば、初値は3350~3500円(希薄化調整後PER:14.3~14.9倍)を想定する。
案の定の条件大幅引き下げ。トップレフトのSMBC日興証券は最初に高めの球を投げ、仮条件で大胆に調整してくる例が多く今回もそのパターン。とはいえ、さすがに公開株数半減はネガティブサプライズである。これにより、数年ぶりの4桁億円規模のIPOは幻になった。レンジを上限ごと引き下げている以上、公開価格はそこで決まる可能性が高いとはみるが、日興はそのような場合でも下限で決めたことはあるだけに注意は必要だ。
財務不良の大型出口案件の再上場は公開価格割れする典型。主力機器は市場縮小の逆風を受けており、足元の業績も1桁増収にとどまる。配当妙味もない。大幅な条件引き下げで物色意欲がサイズほどではないことも確認できたため、少なくとも初動は鈍いと判断する。
旧パナソニック系の医療機器メーカー。ファンド傘下に入ってからはパナソニック以外の医療機器メーカーからも事業買収しており、さまざまなブランドを持つ。
買収による多角化で領域を広げてはいるが、利益率は圧倒的に糖尿病マネジメントが高く、全体の5割以上を稼ぐ。
国内の糖尿病患者数は増加傾向にあり、世界的にもそれは変わらない。国際糖尿病連合(IDF)によると糖尿病患者数は2019年時点で4億6300万人と推定されており、45年までには7億人以上に増加すると予想されている。食の欧米化や高齢化が原因といわれており、生活習慣病だけに克服が簡単なようで難しい。
半面、糖尿病は透析費用も多額になることから、医療費を圧迫する代表格でもある。この病気に限ったことではないが、先進国では医療費の抑制が政治課題になっており、糖尿病はやり玉にも挙がりやすい。保険償還額の見直しなどにより市場拡大は人為的に抑制されている。2015年には70億米ドル以上あった同社主力製品の市場でもある、血糖値測定(BGM)システムの市場規模は2020年では60億米ドル超となり、毎年4%弱の縮小傾向にあるという。
なお、BGMの市場縮小はより高い効果が見込めるとされる持続血糖測定器(CGM)への置き換えの要因も大きい。同社ではCGMシステム大手を手掛ける米センセオニクス社との提携により対応を進めている。
このため同社では買収により領域を広げている。ファンド傘下になってからはパナソニック以外からも積極的に事業買収しており、糖尿病関連を強化するとともに臨床検査事業(LSIM事業)、病理事業に進出した。これにより糖尿病マネジメントドメインの業績への寄与度も減少傾向となっている。同社が指標とする調整後EBITDA(償却前営業利益)では19.3期に85%の比率を占めていたが、21.3期は54%にまで低下した。今期は横ばいの55%になる予想だ。
なお、足元の業績は新型コロナに左右されており、新型コロナ関連の超低温フリーザーやPCR検査が好調に推移する。これらの特需は通期では減少、もしくはなくなるものとみているが、健康診断などの生化学検査といった一般検査需要は回復するとみている。縮小傾向にあった糖尿病マネジメント関連もCGMへの対応や中露など新興国での取り組みにより、今期は回復を見込んでおり、調整後EBITDAは前期比3.1%増の660億円、営業利益は14%増の200億円を見込んでいる。
高齢化などを背景に医療関連市場の需要は高まる一方だが、医療費抑制などで成熟しており、成長戦略の軸は買収戦略となっている。同社は積極的に進めてきたわけだが、ファンド買収時の負債もあるなかで財務体質は悪い。有利子負債比率は約6割、のれん無形資産・資本倍率は2.6倍にも上る。
このため調整後EPSを使ったPERでは15倍程度の株価はこれだけ見れば標準的だが、機関投資家には受け入れられなかったようで、仮条件のレンジは大幅に下振れすることになった。新たなPERは12.8~13.8倍、さらに希薄化も織り込むと13.8~14.8倍の水準である。負債を評価に加えた調整後EV/EBITDAでは10.19~10.67倍に低下した。
EV/EBITDAでの比較はPER以上に開きがあり難しいところだが、海外競合の米アボットやアイルランドのメドトロニックは20倍近く、説明の付かない水準ではない。だが、国内の糖尿病関連が主力のニプロは一桁台。PERで見ても国内系は海外大手に比べると見劣りする企業が多い。これは人口減や高齢化で事業環境がより厳しいことを反映しているものと思われる。
このため大手になるほど海外進出に力を入れており同社も例外ではないが、足元の増収率は1桁台にとどまっており今のところ成果は限定的だ。主力機器の市場縮小といった重荷を背負うため、投資意欲も刺激されにくいだろう。BGMについては米企業との提携でCGMへの対応を進めるとしても、自社製品ではないため今後の利益率は低下していく懸念が残る。
また、債務超過なら上場廃止の規則がある東証において、のれんと無形資産の合計が資本の倍以上にもなることは簡単には無視できない。ファンドマネジャーは収益面で心配ないことを説明できなければならず、これは同じく東証1部直接上場の出口案件でもシンプレクスとは大きく異なる点である。本格的に動くとしてもパターン的にはカバレッジが付き、第三者の評価が出てからだろう。このため少なくとも出だしは鈍いと判断し、初値は公開価格割れの可能性が高いと考える。
吸収資金レンジ: 1719.0億円 - 1976.9億円(今期予想連結PER: 32.5倍)
時価総額レンジ: 4520.3億円
仮条件: 3,250円 - 3,500円
吸収資金レンジ: 717.9億円 - 889.0億円(今期予想連結PER: 28.7倍 - 30.9倍)
時価総額レンジ: 3996.7億円 - 4304.1億円
仮条件は想定価格を12.16~5.41%下回る250円幅に設定された。さらに売り出し株を大きく削減。LCA 3 Moonshot LPは売出人から外れ、三菱ケミHD傘下の生命科学インスティテュートは売り出しを5万0800株上乗せした。また、手取り調達金額を維持するためか新株発行数も増やしたが、公開株数は差し引きで半分強減らした。この結果、最大吸収金額は55%減少することになった。
また、LCA 3 Moonshot LPの売り出し後の保有株は質権対象になっていたが、その項目について削除した。ただし、保有株のうち285万7143株は制度ロックアップの対象となっている。
なお、国内外の削減率は同一であり、海外配分比率は55%で変化なし。
上場時発行済み株式数:122,170,815株→ 122,975,015株(+0.66%)
公開株式数:5342万9400株→2540万1100株(-52.46%)
海外合計:29,386,400株→13,971,000株(-52.46%)
最大吸収金額:1976.9億円→ 889.0億円(-55.03%)
最大時価総額:4520.3億円→4304.1億円(-4.78%)
〈強材料〉
国際オファリング、糖尿病人口増加傾向、業績拡大
〈弱材料〉
仮条件大幅引き下げ、公開株数大幅削減、財務不良、大型出口案件、大企業の捨てた事業、医療費抑制政策、BGM市場縮小
〈結論〉
Cとする。公開価格が仮条件上限ならば、初値は3350~3500円(希薄化調整後PER:14.3~14.9倍)を想定する。
案の定の条件大幅引き下げ。トップレフトのSMBC日興証券は最初に高めの球を投げ、仮条件で大胆に調整してくる例が多く今回もそのパターン。とはいえ、さすがに公開株数半減はネガティブサプライズである。これにより、数年ぶりの4桁億円規模のIPOは幻になった。レンジを上限ごと引き下げている以上、公開価格はそこで決まる可能性が高いとはみるが、日興はそのような場合でも下限で決めたことはあるだけに注意は必要だ。
財務不良の大型出口案件の再上場は公開価格割れする典型。主力機器は市場縮小の逆風を受けており、足元の業績も1桁増収にとどまる。配当妙味もない。大幅な条件引き下げで物色意欲がサイズほどではないことも確認できたため、少なくとも初動は鈍いと判断する。
旧パナソニック系の医療機器メーカー。ファンド傘下に入ってからはパナソニック以外の医療機器メーカーからも事業買収しており、さまざまなブランドを持つ。
買収による多角化で領域を広げてはいるが、利益率は圧倒的に糖尿病マネジメントが高く、全体の5割以上を稼ぐ。
国内の糖尿病患者数は増加傾向にあり、世界的にもそれは変わらない。国際糖尿病連合(IDF)によると糖尿病患者数は2019年時点で4億6300万人と推定されており、45年までには7億人以上に増加すると予想されている。食の欧米化や高齢化が原因といわれており、生活習慣病だけに克服が簡単なようで難しい。
半面、糖尿病は透析費用も多額になることから、医療費を圧迫する代表格でもある。この病気に限ったことではないが、先進国では医療費の抑制が政治課題になっており、糖尿病はやり玉にも挙がりやすい。保険償還額の見直しなどにより市場拡大は人為的に抑制されている。2015年には70億米ドル以上あった同社主力製品の市場でもある、血糖値測定(BGM)システムの市場規模は2020年では60億米ドル超となり、毎年4%弱の縮小傾向にあるという。
なお、BGMの市場縮小はより高い効果が見込めるとされる持続血糖測定器(CGM)への置き換えの要因も大きい。同社ではCGMシステム大手を手掛ける米センセオニクス社との提携により対応を進めている。
このため同社では買収により領域を広げている。ファンド傘下になってからはパナソニック以外からも積極的に事業買収しており、糖尿病関連を強化するとともに臨床検査事業(LSIM事業)、病理事業に進出した。これにより糖尿病マネジメントドメインの業績への寄与度も減少傾向となっている。同社が指標とする調整後EBITDA(償却前営業利益)では19.3期に85%の比率を占めていたが、21.3期は54%にまで低下した。今期は横ばいの55%になる予想だ。
なお、足元の業績は新型コロナに左右されており、新型コロナ関連の超低温フリーザーやPCR検査が好調に推移する。これらの特需は通期では減少、もしくはなくなるものとみているが、健康診断などの生化学検査といった一般検査需要は回復するとみている。縮小傾向にあった糖尿病マネジメント関連もCGMへの対応や中露など新興国での取り組みにより、今期は回復を見込んでおり、調整後EBITDAは前期比3.1%増の660億円、営業利益は14%増の200億円を見込んでいる。
高齢化などを背景に医療関連市場の需要は高まる一方だが、医療費抑制などで成熟しており、成長戦略の軸は買収戦略となっている。同社は積極的に進めてきたわけだが、ファンド買収時の負債もあるなかで財務体質は悪い。有利子負債比率は約6割、のれん無形資産・資本倍率は2.6倍にも上る。
このため調整後EPSを使ったPERでは15倍程度の株価はこれだけ見れば標準的だが、機関投資家には受け入れられなかったようで、仮条件のレンジは大幅に下振れすることになった。新たなPERは12.8~13.8倍、さらに希薄化も織り込むと13.8~14.8倍の水準である。負債を評価に加えた調整後EV/EBITDAでは10.19~10.67倍に低下した。
EV/EBITDAでの比較はPER以上に開きがあり難しいところだが、海外競合の米アボットやアイルランドのメドトロニックは20倍近く、説明の付かない水準ではない。だが、国内の糖尿病関連が主力のニプロは一桁台。PERで見ても国内系は海外大手に比べると見劣りする企業が多い。これは人口減や高齢化で事業環境がより厳しいことを反映しているものと思われる。
このため大手になるほど海外進出に力を入れており同社も例外ではないが、足元の増収率は1桁台にとどまっており今のところ成果は限定的だ。主力機器の市場縮小といった重荷を背負うため、投資意欲も刺激されにくいだろう。BGMについては米企業との提携でCGMへの対応を進めるとしても、自社製品ではないため今後の利益率は低下していく懸念が残る。
また、債務超過なら上場廃止の規則がある東証において、のれんと無形資産の合計が資本の倍以上にもなることは簡単には無視できない。ファンドマネジャーは収益面で心配ないことを説明できなければならず、これは同じく東証1部直接上場の出口案件でもシンプレクスとは大きく異なる点である。本格的に動くとしてもパターン的にはカバレッジが付き、第三者の評価が出てからだろう。このため少なくとも出だしは鈍いと判断し、初値は公開価格割れの可能性が高いと考える。
公開価格分析
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公開価格: 3,250円
吸収資金: 825.5億円(今期予想連結PER: 28.7倍)
時価総額: 3,996.7億円
公開価格は仮条件下限で決まった一方、追加売り出しは国内外とも上限で決まった。引受価額は3120円。公開株数、内外の配分の再変更はなし。訂正目論見書によればブックビルディングの状況は、申告された総需要株式数が公開株式数を十分に上回る状況だったうえ、総需要件数は多数にわたっていたことが特徴だった。価格に付いての言及はない。
公開価格の下限決定を受け、想定初値を引受価額と同値の3120円に引き下げる。日興主導案件としてはステムリムに続いての、レンジ大幅引き下げのうえでの下限決定ということになる。ブックビルディング期間が岸田ショックに重なったとはいえ、妥当価格を見つけにくいバイオベンチャーとは違う。既に業績の安定した一部直接上場の成熟業態でこの事態はネガティブサプライズといえよう。
あきらめムード一色となったことで短期筋は事前に排除され、シンジケートカバーで吸収しきれないほどの売りが殺到してしまう事態は避けられそうだが、下限決定はさらに下値があるのではとの思惑を呼びやすい。どちらにしろ買い手不在の可能性は高まった。公開規模の大きさからも最初の売り買い一致はステムリム同様、人工的に成立させる方法しかなさそうだ。
吸収資金: 825.5億円(今期予想連結PER: 28.7倍)
時価総額: 3,996.7億円
公開価格は仮条件下限で決まった一方、追加売り出しは国内外とも上限で決まった。引受価額は3120円。公開株数、内外の配分の再変更はなし。訂正目論見書によればブックビルディングの状況は、申告された総需要株式数が公開株式数を十分に上回る状況だったうえ、総需要件数は多数にわたっていたことが特徴だった。価格に付いての言及はない。
公開価格の下限決定を受け、想定初値を引受価額と同値の3120円に引き下げる。日興主導案件としてはステムリムに続いての、レンジ大幅引き下げのうえでの下限決定ということになる。ブックビルディング期間が岸田ショックに重なったとはいえ、妥当価格を見つけにくいバイオベンチャーとは違う。既に業績の安定した一部直接上場の成熟業態でこの事態はネガティブサプライズといえよう。
あきらめムード一色となったことで短期筋は事前に排除され、シンジケートカバーで吸収しきれないほどの売りが殺到してしまう事態は避けられそうだが、下限決定はさらに下値があるのではとの思惑を呼びやすい。どちらにしろ買い手不在の可能性は高まった。公開規模の大きさからも最初の売り買い一致はステムリム同様、人工的に成立させる方法しかなさそうだ。
初値予想
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初値予想: 3,120円(今期予想連結PER: 27.5倍)
初値買い妙味: C
初値苦戦を予想する。今年最大のIPOとして注目を集めるも、大幅な規模縮小、下振れプライシングにより積極的な買い手はいないもよう。初値はシンジケートカバーにより人工的に付けるほかないと考える。
米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下の医療機器メーカー。パナソニックの医療機器部門を母体とする。KKRは上場に伴い保有株の一部を放出するが、上場後も筆頭株主で居続ける。
主力は血糖値測定(BGM)システムを中心とする糖尿病部門だが、KKR傘下入り後はパナソニック以外からも買収を進め他分野にも領域を広げている。同社が指標とする調整後EBITDA(償却前営業利益)では同部門が全体に占める割合は19.3期に85%だったが、22.3期は55%になる予想だ。
BGM市場は世界的に縮小傾向にある。糖尿病患者は食の欧米化や高齢化を背景に世界的に増加する傾向にあるが、先進国では医療費の抑制が政治課題だ。保険償還額の見直しなどにより市場拡大は人為的に抑制されている。また、BGMは指先などからその都度採血して血糖値を計るが、近年は腹部などに貼り付けたまま持続的に計測する持続血糖測定器(CGM)が台頭しており、市場を食われている。同社では米国メーカーとの提携によりこれに対応しているが、完全な自社開発でなくなる分、今後の利益率低下が懸念される。
なお、足元の業績は新型コロナに左右されており、新型コロナ関連の超低温フリーザーやPCR検査が好調に推移する。これらの特需は通期では減少、もしくはなくなるものとみているが、健康診断などの生化学検査といった一般検査需要は回復するとみている。縮小傾向にあった糖尿病マネジメント関連もCGMへの対応や中露など新興国での取り組みにより、今期は回復を見込んでおり、調整後EBITDAは前期比3.1%増の660億円、営業利益は14%増の200億円を見込んでいる。
高齢化などを背景に医療機器は成長が期待できそうな市場だが、医療費負担の問題もあって簡単ではない。足元では政府や病院予算は限りのあるなかで新型コロナ対応に優先されがちで、その分他の分野は割を食う状況にもなっている。加えて主力のBGM市場の縮小といった問題があり成長性は乏しい。
さらに同社はファンドの出口案件にありがちな財務面の問題を抱える。KKR傘下入り後も買収を続けた結果、のれんは大きく膨らんでおり、のれんと無形資産の合計は資本の2.6倍にも上る。有利子負債比率は約6割だ。
このため公開価格は仮条件の下限、想定価格からは12%も下回って決定された。ブックビルディング前には売り出し株数の大幅削減も実施されており、吸収金額は承認時に予定されていた1980億円から890億円と半分以下に縮小した。
バリュエーションは調整後かつ希薄化後PERで13.8倍、EV/EBITDAでは10.19倍であり、海外競合に比べると大幅に割安だ。だが国内競合のニプロはPERが12倍台、EV/EBITDAは1桁台となっており足元の株価も軟調だ。海外売上比率は56%とニプロの41%を上回るものの、上場廃止基準に債務超過の規定がある国内では財務面の問題は軽視できない。
何より公開価格が下限で決定しているため、さらに下値を掘るのではいなかとの疑念が生まれやすい。一方、当初から手控えムードが強かった案件のため、初値売却狙いの短期筋は取得を避けていることだろう。買い手不在のなかでも売りは大きく膨らむことなはく、シンジケートカバーでは吸収できよう。初値は引受価額と同額で予想する。
初値買い妙味: C
初値苦戦を予想する。今年最大のIPOとして注目を集めるも、大幅な規模縮小、下振れプライシングにより積極的な買い手はいないもよう。初値はシンジケートカバーにより人工的に付けるほかないと考える。
米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下の医療機器メーカー。パナソニックの医療機器部門を母体とする。KKRは上場に伴い保有株の一部を放出するが、上場後も筆頭株主で居続ける。
主力は血糖値測定(BGM)システムを中心とする糖尿病部門だが、KKR傘下入り後はパナソニック以外からも買収を進め他分野にも領域を広げている。同社が指標とする調整後EBITDA(償却前営業利益)では同部門が全体に占める割合は19.3期に85%だったが、22.3期は55%になる予想だ。
BGM市場は世界的に縮小傾向にある。糖尿病患者は食の欧米化や高齢化を背景に世界的に増加する傾向にあるが、先進国では医療費の抑制が政治課題だ。保険償還額の見直しなどにより市場拡大は人為的に抑制されている。また、BGMは指先などからその都度採血して血糖値を計るが、近年は腹部などに貼り付けたまま持続的に計測する持続血糖測定器(CGM)が台頭しており、市場を食われている。同社では米国メーカーとの提携によりこれに対応しているが、完全な自社開発でなくなる分、今後の利益率低下が懸念される。
なお、足元の業績は新型コロナに左右されており、新型コロナ関連の超低温フリーザーやPCR検査が好調に推移する。これらの特需は通期では減少、もしくはなくなるものとみているが、健康診断などの生化学検査といった一般検査需要は回復するとみている。縮小傾向にあった糖尿病マネジメント関連もCGMへの対応や中露など新興国での取り組みにより、今期は回復を見込んでおり、調整後EBITDAは前期比3.1%増の660億円、営業利益は14%増の200億円を見込んでいる。
高齢化などを背景に医療機器は成長が期待できそうな市場だが、医療費負担の問題もあって簡単ではない。足元では政府や病院予算は限りのあるなかで新型コロナ対応に優先されがちで、その分他の分野は割を食う状況にもなっている。加えて主力のBGM市場の縮小といった問題があり成長性は乏しい。
さらに同社はファンドの出口案件にありがちな財務面の問題を抱える。KKR傘下入り後も買収を続けた結果、のれんは大きく膨らんでおり、のれんと無形資産の合計は資本の2.6倍にも上る。有利子負債比率は約6割だ。
このため公開価格は仮条件の下限、想定価格からは12%も下回って決定された。ブックビルディング前には売り出し株数の大幅削減も実施されており、吸収金額は承認時に予定されていた1980億円から890億円と半分以下に縮小した。
バリュエーションは調整後かつ希薄化後PERで13.8倍、EV/EBITDAでは10.19倍であり、海外競合に比べると大幅に割安だ。だが国内競合のニプロはPERが12倍台、EV/EBITDAは1桁台となっており足元の株価も軟調だ。海外売上比率は56%とニプロの41%を上回るものの、上場廃止基準に債務超過の規定がある国内では財務面の問題は軽視できない。
何より公開価格が下限で決定しているため、さらに下値を掘るのではいなかとの疑念が生まれやすい。一方、当初から手控えムードが強かった案件のため、初値売却狙いの短期筋は取得を避けていることだろう。買い手不在のなかでも売りは大きく膨らむことなはく、シンジケートカバーでは吸収できよう。初値は引受価額と同額で予想する。
初値分析
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初値: 3,120円(今期予想連結PER: 27.4倍)
/ 上昇率: -4.0%
/ 高値: 3,120円
/ 安値: 2,650円
/ 終値: 2,651円
出来高: 10,413,600株 / 対公開株数: 41.0% / 初値出来高: 3,553,600株 / 初値売買代金: 11,087,232,000円
初値は苦戦し引受価額と同額で付いた。ただし、出来高はオーバーアロットメントを約24万株上回っており、ここで吸収できたのはギリギリ。9時直前の寄り前気配は2800円弱と引受価額を下回っていた。
公開価格が下限決定した時点で短期的な値上がり期待は皆無だった。このため損失覚悟の投げ売りが、これほど出てくること自体珍しい。あまりに販売が苦戦した結果、シンジケートカバーにぶつける前提で引き取った買い手(海外ヘッジファンドや系列運用会社など)がいたのではないかと推測する。絶望的な見方があまりに支配的になると、巨大なIPOではまれに起こることである。今回は純粋な買いも20万株強入ったため、何とか引受価額で踏みとどまったが、中身は薄氷の結果だった。
だがそのツケはすぐに払うはめになり、寄り付き直後から一段安となった。初値でほとんどシンジケートカバー取引枠を使い切ってしまった結果、下支えがなくなり急落した。初値では売り手もシンジケートカバーで吸収できるかどうかを見計らいつつ、株数を調整していたのか。寄り前気配で意識されていた2800円前後ではいったん下げ止まり、前場はその水準でもみ合いとなったが、後場に入ると再び売りに押され安値圏で引けた。
なお、2800円は調整希薄化後EV/EBITDAが10倍を切り、調整希薄化後PERは国内競合となるニプロを下回る水準である。バリュエーションの観点から打診買いが入ったものと推測される。
しばらくは下値模索の展開が続きそうだ。既に公開価格を2割近く下回り、想定価格からは3割近く減価となるが積極的な買い手は見受けられない。今回のプライシングは過程も含め、市場からは全く信用されていないことが明白だ。大型案件ということでブックランナーは4社も入ったが、複数が関わることでより妥当な価格を見いだすどころか、逆に競りのような状態が発生したのではないか。当面は手出ししづらい状況が続きそうだ。
ニプロのEV/EBITDAは8.5倍弱であり、この水準に合わせると株価は2300円台後半がめどになる。前半では調整希薄化後PERでも10倍を切ってくる計算だ。ニプロ株が下げ基調のため追いつく頃にはさらに基準が下がっている可能性もあるが、現段階ではこの辺りまでには下げ止まるのではないかと考える。
なお、上場1カ月で引受証券のカバレッジも解禁されることになるが、トップレフトのSMBC日興証券は大型案件なら公開価格割れした状態ほど、直後からカバレッジしてくる傾向がある。同時期には中間決算の発表も同時期に控えているため、これを吟味したタイミングがカバレッジが相次ぐタイミングになろう。一部直接上場ということで月末にはTOPIX組み入れも控えており、出直りのタイミングにもなりやすい。
出来高: 10,413,600株 / 対公開株数: 41.0% / 初値出来高: 3,553,600株 / 初値売買代金: 11,087,232,000円
初値は苦戦し引受価額と同額で付いた。ただし、出来高はオーバーアロットメントを約24万株上回っており、ここで吸収できたのはギリギリ。9時直前の寄り前気配は2800円弱と引受価額を下回っていた。
公開価格が下限決定した時点で短期的な値上がり期待は皆無だった。このため損失覚悟の投げ売りが、これほど出てくること自体珍しい。あまりに販売が苦戦した結果、シンジケートカバーにぶつける前提で引き取った買い手(海外ヘッジファンドや系列運用会社など)がいたのではないかと推測する。絶望的な見方があまりに支配的になると、巨大なIPOではまれに起こることである。今回は純粋な買いも20万株強入ったため、何とか引受価額で踏みとどまったが、中身は薄氷の結果だった。
だがそのツケはすぐに払うはめになり、寄り付き直後から一段安となった。初値でほとんどシンジケートカバー取引枠を使い切ってしまった結果、下支えがなくなり急落した。初値では売り手もシンジケートカバーで吸収できるかどうかを見計らいつつ、株数を調整していたのか。寄り前気配で意識されていた2800円前後ではいったん下げ止まり、前場はその水準でもみ合いとなったが、後場に入ると再び売りに押され安値圏で引けた。
なお、2800円は調整希薄化後EV/EBITDAが10倍を切り、調整希薄化後PERは国内競合となるニプロを下回る水準である。バリュエーションの観点から打診買いが入ったものと推測される。
しばらくは下値模索の展開が続きそうだ。既に公開価格を2割近く下回り、想定価格からは3割近く減価となるが積極的な買い手は見受けられない。今回のプライシングは過程も含め、市場からは全く信用されていないことが明白だ。大型案件ということでブックランナーは4社も入ったが、複数が関わることでより妥当な価格を見いだすどころか、逆に競りのような状態が発生したのではないか。当面は手出ししづらい状況が続きそうだ。
ニプロのEV/EBITDAは8.5倍弱であり、この水準に合わせると株価は2300円台後半がめどになる。前半では調整希薄化後PERでも10倍を切ってくる計算だ。ニプロ株が下げ基調のため追いつく頃にはさらに基準が下がっている可能性もあるが、現段階ではこの辺りまでには下げ止まるのではないかと考える。
なお、上場1カ月で引受証券のカバレッジも解禁されることになるが、トップレフトのSMBC日興証券は大型案件なら公開価格割れした状態ほど、直後からカバレッジしてくる傾向がある。同時期には中間決算の発表も同時期に控えているため、これを吟味したタイミングがカバレッジが相次ぐタイミングになろう。一部直接上場ということで月末にはTOPIX組み入れも控えており、出直りのタイミングにもなりやすい。