IPO銘柄詳細

ソフトバンク

コード 市場 業種 売買単位 注目度
9434 東証1部 情報・通信業 100株 S
スケジュール
スケジュール
仮条件決定 2018/11/30
ブックビルディング期間 2018/12/03 - 12/07
公開価格決定 2018/12/10
申込期間 2018/12/11 - 12/14
払込期日 -
上場日 2018/12/19
価格情報
想定価格 1,500円
仮条件 1,500円
公開価格 1,500円
初値予想 1,500円
初値 1,463円
  • スケジュールは上場企業都合により変更になる場合があります。
基本情報
代表者名 宮内 謙 (上場時69歳1カ月)/1949年生
本店所在地 東京都港区東新橋
設立年 1986年
従業員数 17300人 (2018/09/30現在)(平均39.0歳、年収754.7万円)、連結23,172人
事業内容 移動・固定通信事業およびICT(情報通信技術)ソリューションの提供
URL https://www.softbank.jp/corp/
株主数 11人 (目論見書より)
資本金 204,309,316,000円 (2018/11/12現在)
上場時発行済株数 4,787,145,170株(別に潜在株式118,758,600株)
公開株数 1,764,063,100株(売り出し1,603,693,700株、オーバーアロットメント160,369,400株)
調達資金使途
連結会社 子会社106社、関連会社37社、共同支配企業4社
シンジケート
公開株数1,427,287,400株(別に160,369,400株)/(国内分)
種別 証券会社名 株数 比率
主幹事証券 野村 358,837,400 25.14%
主幹事証券 大和 286,381,700 20.06%
主幹事証券 SMBC日興 229,105,300 16.05%
主幹事証券 みずほ 229,105,300 16.05%
主幹事証券 三菱UFJモルガン・スタンレー 178,988,500 12.54%
主幹事証券 SBI 105,460,600 7.39%
引受証券 岡三 10,962,300 0.77%
引受証券 東海東京 10,962,300 0.77%
引受証券 岩井コスモ 8,325,800 0.58%
引受証券 水戸 6,799,400 0.48%
引受証券 西日本シティTT 971,300 0.07%
引受証券 松井 555,000 0.04%
引受証券 マネックス 555,000 0.04%
引受証券 あかつき 277,500 0.02%
大株主(潜在株式を含む)
大株主名 摘要 株数 比率
ソフトバンクグループジャパン㈱ 親会社 4,786,613,170 97.57%
孫 正義 取締役会長 4,000,000 0.08%
宮内 謙 代表取締役社長執行役員兼CEO 4,000,000 0.08%
榛葉 淳 代表取締役副社長執行役員兼COO 2,000,000 0.04%
今井 康之 代表取締役副社長執行役員兼COO 2,000,000 0.04%
宮川 潤一 代表取締役副社長執行役員兼CTO 2,000,000 0.04%
藤原 和彦 取締役専務執行役員兼CFO 1,500,000 0.03%
久木田 修一 専務執行役員 1,500,000 0.03%
エリック・ガン 専務執行役員 1,500,000 0.03%
青野 史寛 専務執行役員兼CHRO/CCO 1,500,000 0.03%
業績動向(単位:百万円)
は予想
決算期 種別 売上高 営業利益 税引き前利益 純利益
2019/03 連結中間実績 1,794,407 443,331 413,699 294,668
2018/03 連結実績 3,547,035 641,935 601,315 412,699
2018/03 連結予想 3,700,000 700,000 - 420,000
2017/03 連結実績 3,483,056 678,659 636,555 441,189
2016/03 連結実績 3,410,595 644,046 607,387 399,520
売上高
営業利益
税引き前利益
純利益
1株あたりの数値(単位:円)
は予想
決算期 種別 EPS BPS 配当
2018/03 連結予想 87.73 230.23 37.50
参考類似企業
銘柄 今期予想PER(11/30)
NTT
10.4倍 (連結予想)
KDDI
10.3倍 (連結予想)
沖縄セルラー
11.8倍 (連結予想)
NTTドコモ
13.8倍 (連結予想)
ソフトバンクG
10.3倍 (連結予想)
事業詳細
 ソフトバンクグループの国内総合通信子会社。1986年12月に国鉄の分割民営化に伴い設立された鉄道電話(鉄道事業者の内線電話)の鉄道通信(JR通信)が最初の社名。89年5月に吸収合併した新電電の日本テレコムに商号変更した。なお、日本テレコム(旧)は通信自由化に伴い、国鉄と大手商社の出資で鉄道通信に先立つ84年10月に設立された。続いて91年7月に携帯・自動車電話事業の東京デジタルホンを設立。97年10月に日本国際通信(ITJ)を吸収合併して国際電話に参入し、総合通信会社の体制を築いた。その間、94年9月に東京証券取引所と大阪証券取引所に上場した。
 その後01年10月に英ボーダフォングループの傘下に入り、05年8月に上場を廃止。2006年4月にソフトバンクグループに入った。なお、ボーダフォン時代に固定通信事業は米投資会社にいったん売却されたが、04年7月にソフトバンクが買収し、グループ再編で15年4月にブロードバンドのソフトバンクBB、携帯電話・PHSのワイモバイル(旧イー・アクセス、旧ウィルコム)とともに吸収合併された。また、18年4月にMVNO(仮想移動体通信事業者)のLINEモバイルの株式を51%取得し、子会社化した。一方、PHS事業は18年3月をもって新規契約の受け付けを終了した。

1.コンシューマー事業
 主に国内個人の顧客に対し、移動通信サービス(携帯端末の販売含む)、ブロードバンドサービスなどの通信サービスを提供している。
 移動体通信では「SoftBank」、「Y!mobile」、「LINEモバイル」の――3つのブランド、ブロードバンドでは「SoftBank光」、「Yahoo!BB光withフレッツ」、「Yahoo!BB ADSL」――の3サービスを展開している。

2.法人事業
 法人客に移動通信サービス、ネットワーク・VPN(仮想専用線)サービス、クラウドサービス、固定電話サービス「おとくライン」、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)、デジタルマーケティング、セキュリティーなど多岐にわたるサービスを提供している。

3.流通事業
 法人向けにはICT(情報通信技術)、クラウドサービス、IoTソリューションなどに対応した商材、個人向けには、モバイル・PC周辺機器、ソフトウエア、IoTプロダクトなどの商品を企画・供給している。

4.その他の事業
 決済代行サービス、スマートフォン専業証券、パブリッククラウドサービスの設計・開発事業のほか、オンラインビジネスのソリューションやサービスの提供、デジタルメディア・デジタルコンテンツの企画・制作を手掛けている。

 2017年3月期の連結売上高構成比は、コンシューマー事業74.2%(モバイル45.5%、ブロードバンド8.9%、物販など19.9%)、法人事業16.5%(モバイル7.3%、固定5.9%、ソリューションなど2.6%)、流通事業9.1%、その他0.2%。
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・直近(2018年4月)の第三者割当における発行単価は623円。
・みずほ証券の引受株式数の一部はスマートフォン専用証券のワンタップバイに委託され、ワンタップバイでは1株単位から販売する。
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、国内売り出しの一部を三菱UFJ銀行に委託する。
・既存の現物株主には180日間のロックアップが掛かる。
・親会社の上場後の持ち株比率は63.14%の見込み。
・ストックオプションが行使できるのは2020年4月から。
・海外主幹事はドイツ銀行、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、みずほ、野村、モルガン・スタンレー、SMBC日興、メリルリンチ、シティグループ、クレディ・アグリコル、クレディ・スイス、UBS。


<ファーストインプレッション>
 投資ファンド事業に回帰したソフトバンクによる、最初の大型出口案件であり、ボーダフォン時代と同じコード番号を使っていることからも分かる通り人気の出にくい再上場案件でもある。冷静に考えると全くもうかる気がしない案件だ。加えて政府は携帯電話料金の値下げ圧力を強めている。海外販売の比率が1割と低いのは、政策リスクのある銘柄を外国人は嫌うためだろう。
 かつて競合の値下げに対し、「24時間以内の追随値下げ」を公言していた同社がドコモの値下げにだんまりを決め込むのは、実行してしまうと業績予想の作り直しと再審査で上場を延期せざるを得ないからなのは明らか。代わりにリストラ計画を発表したが、競争原理から追随は必須だ。上場後にほとぼりがさめてから動くということになり、当初から下方修正リスク(もしくは来期減益)があることになる。引受団は専用のTVCMまで用意しており注目は否応なしに集まるが、高配当につられてうかつに手を出せない。とはいえ、12月のIPOはここと抱き合わせにされる可能性もあり、投資家にとっては悩ましいところ。
仮条件分析 (BB参加妙味 :C)
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想定価格: 1,500円
 吸収資金レンジ: 24055.4億円 - 26460.9億円(今期予想連結PER: 14.9倍)
 時価総額レンジ: 71807.2億円

仮条件: 1,500円
 吸収資金レンジ: 24055.4億円 - 26460.9億円(今期予想連結PER: 17.1倍)
 時価総額レンジ: 71807.2億円

 仮条件は想定価格と同値で決まった。ブックビルディング史上、国内初の一本値が採用された。

<強材料>
寡占市場、大々的キャンペーン、個人には人気、高配当、指数需要期待

<弱材料>
超割高、出口再上場、搾り粕、親会社の財布、携帯料金下げ圧力、楽天の新規参入、5G投資、IPOラッシュ

<機関投資家の評価>
1.高い株主還元と成長投資の両立が可能なキャッシュ・フロー創出力を有する。
2.3ブランド戦略、ソフトバンクグループの投資先との協業による新規事業の展開というユニークな成長戦略を有する。
3.今後、業界の競争環境、法規制の改正等によって業績が変動する可能性がある。

<結論>
 Cとする。公開価格が仮条件と同値ならば、初値は1470~1500円(PER:18.8~17.1倍)を想定する。
 バリュエーション的には全く検討の余地のない価格設定で、今回は巨額な手数料を前に引受団や東証が押し切られた形の案件だが、引受手数料の圧縮にも余念がなく郵政3社並との観測。引受価額が公開価格に近くなりそうなことから公開価格割れしても小幅にとどまると考える。なお、今回ブックビル制度導入以来の一本値の仮条件となったが、狙いは「下限決定しなくてすむ」ことにあるとみる。

 ソフトバンクの通信子会社で、前身のボーダフォンの上場廃止以来、13年4カ月ぶりの再上場となる。紆余(うよ)曲折あったが、携帯事業のボーダフォン(Jフォン)を軸に、ブロードバンドのソフトバンクBB、モバイルブロードバンドのイー・アクセスとPHSのウィルコム、国内長距離固定通信の日本テレコム、国際電話の日本国際通信(ITJ)と国際デジタル通信(iDC)が集結。今春には新たにMVNO(仮想移動体通信事業者)のLINEモバイルも加わった。
 当初はNTTとKDDIに出遅れた負け組の寄せ集めに過ぎず、外資傘下の時代には解体の憂き目にもあった。だがソフトバンク傘下に入ってからは積極的な基地局投資をしたことや、孫正義氏のトップ交渉でアイフォーンを先んじて抑えたことで急成長。3メガキャリアの一角として存在感を放てるようになった。

 孫氏のたぐいまれなる経営手腕で成長した同社だが、総務省の発表によれば携帯電話の契約数は9月末現在、1億7140万(前期比+0.8%、前年同期比+4.5%)と国内人口を上回る。もちろん、ARPU(契約当たり月間収入)の上昇や格安ブランドとの複数台持ち、法人契約などで成長が止まったわけではないが、市場としては明らかに成熟した状態だろう。
 ソフトバンクの契約数はアイフォーンの攻勢で一気に伸びるも、他社でも扱うようになると鈍り、16年は減少に転じるなど他2社に比べ後れを取るようにもなってきた。19.3期の営業利益は前期比9.7%増の7000億円にとどまる予想だ。
 加えて政府は値下げ圧力を掛けてきているうえ、楽天の新規参入で競争環境は厳しくなることは明白だ。ソフトバンクグループとしては依然として安定したキャッシュを生み出す存在だが、成長性に乏しくなったことがIPOで売り出す判断につながったものとみられる。

 今回、親会社が売り出すのは持ち株のうち最大36.85%。公開規模は2.6兆円と国内史上最大になるが、東証一部に直接上場するには時価総額250億円以上の条件のほかに流通株式比率を35%以上にする必要があり、それに合わせた形だ。

 ただ最低限の売り出しにもかかわらず、規模が史上最大となるのはもう一つ理由がある。バリュエーションが非常に割高だということだ。多額の設備投資が掛かる通信会社のバリュエーションは、EV/EBITDAで測ることが定着しているが、他の2社が5倍前後なのに対し、ソフトバンクは8.3倍にも上る。
 今回、調整EBITDAの予想は非公開だが、機関投資家の間では営業利益の7000億円と合わせおおむね1.2兆円超とみられているもよう。ソフトバンクのEV/EBITDAが5倍になるには、株価は半値以下の650円にならなければならない。親会社は10倍近くあり、これが唯一の根拠になっているのかもしれないが、同社の株価は既に他の持ち株にも影響されている上、日経平均株価への寄与度の高い株としてプレミアムが付いており参考にする人は少ない。
 なお、650円でのPERは7.4倍と他2社を下回るが、これは同社は有利子負債比率が59.7%と高いためである。そもそも仮条件はPERで見ても他2社を大きく上回る。買収とキャッチアップの必要性からもともと借金依存体質ではあったが、IPOの準備を進める過程で親会社に借金を付け替えられた結果、17年3月期は43%だったのが今春一気にはね上がった。具体的には永久ブランドライセンス料として3500億円支払ったほか、連結純利益以上の配当を実施するなどした。

 ではなぜこんな割高な価格がまかり通ろうかとしているのかを考えると、これは単に投資会社に回帰した親会社のごり押しだろう。親会社は今から4年半前となる2014年春、イー・アクセスをヤフーに売却しようとして騒動になった。もともとの動機は携帯電波の割り当てで、別会社にして二重取りを可能にするためと言われていたが、携帯通信株のEV/EBITDAは当時も5倍が相場だったところ、彼らはそれを大きく上回る7倍で売ろうとした。このためヤフーの株価は暴落。撤回するまで4割近くも下落した。
 その後両社は買収を撤回したが、これはヤフーが上場会社として厳しい批判にさらされたことが直接の要因ではない。携帯電波の割り振りで別会社にしても、資本が同系統なら一社として扱うと総務省が見解を示したためだ。ソフトバンクグループはひたすら自己の利益のため、上場子会社を財布として徹底的に扱う姿勢がこの時に示され、市場の信頼をすっかり失ったヤフーは撤回後も株価は戻りきらなかった。今回はこの時よりもさらに高く売ろうとしているというわけだ。

 一方、そうした割高な価格を投資家にのませるために用意したのが、配当性向85%に上る多額の配当金だ。今回は下期分のみだが、実質5%の配当利回りは11月末現在、ドコモの4.18%、KDDIの3.75%を大きく上回る。政府の値下げ圧力に同調する意向を示したドコモショックで株価は大きく下落したものの、ここのところの世界的な株価回復により、両社の利回りは再び低下傾向だ。どうせ会社に残しても証券会社の上客として、ワケの分からないM&Aで溶かしてしまう2社に比べれば、配当で吐き出すのは賢明な策ともいえる。

 報道によれば既に個人からは配分を上回る需要を各社とも積み上げている。既に一週間前にはメドを付けていたとの観測も出ていたが、個人の需要が強いことを伝えられた機関投資家も、まあ欲しい人がそんなにいるならと想定価格を容認する空気になったようだ。堅調な出だしに様子見姿勢だったヘッジファンドも身を乗り出しているという。

 とはいえ個人の高い人気は想定内のことである。本来なら投資会社による出口再上場の案件として不人気になりがちな案件だが、今回は高配当に加えてTVCMも使っての大キャンペーンでお祭りムードを演出している。個人投資家の買う動機は、商品性よりも営業員の熱心さによるところが大きく、各社の力の入れようからすれば当然の結果だろう。

 だが、セールスポイントである肝心の利回りは先行きが不透明だ。従来なら携帯キャリアは月額利用料を基に安定したキャッシュフローが見込める。だからこそソフトバンクも積極的な借り入れを基に設備投資をしてきた。しかしながら、政府は携帯電話の利用料を4割値下げさせようと圧力を掛けている。当初は3社とも適当なプランでお茶を濁してきたが、政府の圧力は執ようだ。ここに来て政府系のドコモが呼応し、来年度の第1四半期をメドに値下げすると発表した。

 今のところソフトバンクは低価格ブランドのワイモバイルで値下げするも、リストラで利益を確保する方針だ。だが、そもそも官房長官は各社の利益率が高いのを見て、値下げ余地があると主張しており、配当原資がある限り圧力は続く恐れがある。しかも既に配当性向は85%と高く、5G投資も控えるなか減益を性向の引き上げで打ち消す余地は乏しい。また、装置産業でもある通信業は固定費が多く、減収はレバレッジを伴って減益に跳ね返る。

 加えて新しく参入する楽天は、かつてソフトバンクがそうしたように、格安プランを用意してくる可能性が高い。いずれにしろ具体的な動きは来期からなので、今期の業績予想を下方修正する心配はしなくてもよさそうだが、来期以降は不透明要因だらけだ。そもそも通信株以外に目を向ければJTや日産といった選択肢もあり、収益の安定性が失われた今、5%に絶対的な魅力はないとみるべきだろう。

 ただし、上場後ごく短期に限れば下値は硬そうだ。親会社がこだわったのはあくまで同社が売却する価格だ。このため、公開価格と引受価額のスプレッド(引受手数料)はかなり薄いと伝わる。今回は売り出しだけのため、目論見書からは料率を計算できないが、関係筋によると日本郵政の時の1.7%並みかそれを下回るもよう。量が多いことを背景に民営化案件並みに低く設定されているようだ。はっきりとした数字が不明のため、想定初値のレンジ下限はやや余裕を持たせ2%で計算した。ちなみに今回は対面、ネット証券、機関向けと違った料率が採用されており、営業員のやる気を促すため対面が厚く設定されているという。

 手数料率が低ければシンジケートカバーの入る引受価額は公開価格に近くなる。また、既に需要が超過しているとの報道から、外れた分は市場で買わせようとする営業員も出てきそうだ。大型上場になるため、FTSE、MSCI、TOPIXのインデックス需要も期待できよう。

 ただ、1500円を越えれば配当利回りは落ちるし、もともと短期目線の個人は売ってくるだろう。超大型IPOは意外と堅調というのが過去に多かったことから、1~2割の上昇を期待する声もあり、既にこうした声に押されて短期目線の投資家は多く入り込んでいるものと考えられる。だが、過去の超大型案件といえば民営化案件など、売出人にはあまり高く売ろうとする動機がないケースが多く、ゆえに株価は割安に設定されることが多かった。超割高な超大型株がインデックス需要だけの思惑で上値を取りにいくというのは、どう考えても難しいのではないか。そもそもインデックス需要なら機関投資家に配分する分だけでも事足りる。

 また、周りの反応を見て身を乗り出すヘッジファンドが本当にいるとすれば、それは典型的な最後の買い手だ。一緒になって上島竜兵化するのではなく、冷静に「どうぞどうぞ」と譲るのが賢明だろう。そもそも今回、機関投資家の配分が少ないのは分析能力のある投資家には売れないことを見越しているからだろう。最低限のインデックス需要を枠に充てているからに過ぎない。

 なお、仮条件は前代未聞の一本値が採用されたが、これは下限決定を避けるためではないかと考える。1500円を越えると利回りは5%を切るため、セールストーク上、これ以上は価格を上げにくい。かといって下に出すとマインドを冷やす可能性があるし、親会社の高値売却への意欲は強い。そもそもレンジを設定した時点で、割高感から機関投資家は軒並み下値に指してしまうだろう。公開価格はそれを考慮せざるをえなくなる。下限決定すれば熱狂していた個人も周りの雰囲気につられたヘッジファンドも途端に冷静なって雲散霧消してしまう。上場するまでは何としてもマインドを冷やさないための苦肉の策が、今回の奇抜な設定になったものと推測する。

 一方、本来なら半値以下の価値でしかない子会社株をなんとしても高値で売ろうとする孫正義氏は、親会社の株主からすれば実に頼もしい存在だ。借金を肩代わりさせた搾り粕(かす)を高く売却するうえに、配当でも資金を回収するスキームは売り手からすればいいとこ取りでしかなく、「いいぞ、もっとやれ」である。ソフトバンクの株価は今やエヌビディアと連動している面が強く一概には言えないが、親会社の財布役でしかない子会社株を買うくらいなら、まだそれを6割以上持ち、巨額な手数料と引き替えに、強気な交渉を押し通す豪腕ファンドマネジャー率いる売り手を買った方が得策だと考える。

(追記)弊社算出の適正株価650円に対し、今年3月の親会社を割当先とした増資株価や役員陣に割り振られたストックオプションの行使価格は623円。行使できるのは再来年度からだが、これが答えではなかろうか。


<追加分析>
 C継続。引き付き想定初値は1470~1500円を想定する。
 ブックビルディングは既に始まる前から勝負が付いていた感があるが、支店によっては需要の3、4倍を積み上げるなど非常に熱い展開になっているようだ。これは郵政3社のときのような勢いである。
 ただ問題は外れた需要がどの程度、初値買いに向かうかだ。5%の配当利回りを売り文句にしている以上、上値は買いづらいのではないか。
 また、株式市場では華為技術(ファーウェイテクノロジーズ)CFOの逮捕で親会社株が大幅安。米国が中国製品に対する包囲網を強めているなか、ソフトバンクは基地局にファーウェイ製品を多く採用しており、不透明感が強まっている。加えて携帯電話が原因不明※の大規模障害に見舞われるなど、不安要因しか出てきていない。
 結局のところ、この案件は「大きすぎて多少の事故では止められない」たぐいのもの。もともとバリュエーションを無視したプライシングのため、短期的な需給はあくまで配分が外れた分の注文の行方がどうなるかに掛かる。だが、取り巻く環境は悪化するばかりだ。

 ※後に全国をカバーするスウェーデン通信機器大手エリクソン社製の交換機のソフトウエアに異常が発生したことによるものだと発表。障害は午後6時4分に収束したとのこと。
公開価格分析
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公開価格: 1,500円
 吸収資金: 26,460.9億円(今期予想連結PER: 17.1倍)
 時価総額: 71,807.2億円

 公開価格は仮条件と同値、追加売り出し株数は上限で決まった。国内の引受価額は1463.75円(海外は1477.50円)。ブックビルディングでは申告された総需要株式数が売り出し株式数を十分に上回り、かつ需要件数が多数にわたっていたことが特徴だった。引受価額と公開価格のスプレッドがや予想より大きかったことを受け、想定レンジは1463~1500円に改める。

 内外配分は当初の予定から変わらず。ブックビルディング終盤にはブルームバーグから機関投資家の需要も満たしたとの報道があったが、観測通りに埋まったようだ。終盤はかなりドタバタになったが、通信障害は外部の要因。同社はその日のうちにマルチベンダー化を決め、約40億円の追加投資が見込まれるとのことだが、十分に吸収可能で業績予想に変更はなし。当初予定通りの値決めは当然だろう。

 一方、ブックビルディングの倍率については支店によってはかなり積み上げたようだが、日経QUICKニュースによると全体の応募倍率は1.1倍前後にとどまったもよう。通信障害もあって後半にキャンセルが出るなどしたこともあり、かなり苦戦したようだ。超過需要が1割程度(実際にはキャンセルで余剰?)では、外れた分が全て初値買いに回らなくては同値スタートさえ厳しい状況だろう。当然、そんなことは考えにくい。公開価格割れ初値の可能性はかなり高まったといえる。今回はSBI証券が主幹事として入っていることもあり、空売り用の株式は調達しやすい。初値での空売りは難しいが、割高感が鮮明なだけにヘッジファンドも早い段階で売り仕掛けしてくるのではないか。


<追加分析2>
 一晩たって応募倍率については本当に1.1倍なのかの疑念が出ている。そもそも具体的な数値はなかったにせよ、1.1倍ではブックビル前の観測報道とはかなり齟齬がある印象だ。地域差や証券会社によって差はあるとは思うが、状況的に1.1倍は弱すぎる数字であり信頼性が乏しいと考える。別の情報では国内は倍程度で、配分の少ない海外はもっと高いとの観測が出ている。ただ1.1倍の情報は日経が流したため広く知れ渡り、取り消しもされていない。主幹事からは公式な発表もない以上、例えデマでも今のところは「事実」として扱われている点には注意が必要だろう。
 なおトムソンロイターによれば、グレーマーケットでは1505円買い、1530円売りの気配と公開価格を上回るもよう。海外勢も高い配当利回りに引き寄せられているとのことだ。来期減益懸念があるにせよ、利益剰余金によるタコ配でも利回りが維持されればいいとの楽観的な見方もあるようだ。

 いずれにしろ海外勢にしても着眼点が利回りにある以上、上値は限られる。今回のIPOについては当初から情報戦のような状況になっており、わざと需要の強さを醸し出すことで枯渇感をあおっているようなところがある。投資家としては踊らされないようにしなければならない。ただグレーでは小幅ながら上の買い気配が観測されたうえ、日経報道の真実みにも疑いがあるため、現在のところは「どちらかと言えば同値スタートの可能性が高い」とみる。いずれにしろ再び日産自動車の配当が6%を超えるなかでは、手数料抜けも怪しく買い付け見送りを推奨する立場には変わりない。

追記:その後グレーマーケットの気配は1510円買い、1580円売りに上昇したもよう。スプレッドが開いており、買いはともかく売りについては成立したのか不明である。
初値予想
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初値予想: 1,500円(今期予想連結PER: 17.1倍)
初値買い妙味: C

 初値同値を予想する。公開価格は非常に割高だが、海外の応募倍率がそれなりに高かったことや、グレーマーケットで同値前後の取引が観測されたことから高い配当利回りにはそれなりの需要があるものとして同値でのスタートを予想する。

 ソフトバンクグループ(SBG)の通信子会社。前身のボーダファンと法人格は変わっておらず、13年4カ月ぶりの再上場となる。携帯事業に特化したボーダフォン(Jフォン)を軸に、ブロードバンドのソフトバンクBB、モバイルブロードバンドのイー・アクセスとPHSのウィルコム(現ワイモバイル)、いったん米系投資ファンドに売却されていた固定通信の日本テレコム、国際電話の日本国際通信(ITJ)と国際デジタル通信(iDC)が集結。今春には新たにMVNO(仮想移動体通信事業者)のLINEモバイル(持ち分5割)も加わり、携帯事業では高価格帯から低価格帯、格安ブランドの3つ全てをそろえた。19.3期の営業利益はスマートフォン契約数の増加を背景に前期比9.7%増の7000億円を同社では予想している。

 公開価格は非常に割高だ。同社ではEBITDAも経営指標にしながらも今期の予想を出していないが、市場では1.2兆円程度と見積もられている。EV/EBITDAは8.3倍程度に上る見込みで、これは平均的な5倍を大きく上回る。平均に合わせるなら株価は650円が適正だ。これは昨年再編時の増資単価や経営陣に割り振られたストックオプションの行使価格が、623円であることからもつじつまが合う。
 650円ではPERは7.4倍と他社の10倍程度を下回るが、同社は親会社の有利子負債を付け替えられたうえで上場することもあり、有利子負債比率が6割弱と非常に多いことで差し引かれる。なお、終わりの見えない低金利政策下で借金体質を無視できるならば、885円が適正ともみなすことはできる。とはいえどちらの見方でも公開価格を大きく下回ることには変わりない。

 親会社では以前、イー・アクセスをヤフーに売却しようとした時があったが、この時はEV/EBITDA7倍の評価額だった。割高な評価額でも親のいいなりのヤフーの株価は4割近く下落し、撤回後も株価は回復しなかった。子会社を犠牲にして有利なファイナンスを狙う姿勢はSBGの一貫した姿勢であるといえる。

 一方、超割高な株価を投資家にのませるために用意したのが年率5%に上る配当だ。NTTドコモの4%台前半、KDDIの3%台後半を大きく上回る。寡占業態の携帯事業は本来なら毎月安定したキャッシュが入るため確実性が高く、募集時も大きなセールスポイントになった。配分比率が小さかったこともあり、ブルームバーグによれば応募倍率は機関投資家でも国内2倍程度、海外3倍程度になったという。特に海外勢の引き合いは強く、グレーマーケットでは当初若干ながらも公開価格を上回る取引が観測された。
 申し込み段階になるとSBI証券ではキャンセルが相次ぎ締め切り時間が延長を重ねたことが嫌気されたのかグレーは公開価格と同値での取引になったようだが、結果的には短期筋の撤退で売り圧力を弱めることにつながったとみる。一週間前に同じく割高な株価を配当利回り4.2%で公開したアルテリアが意外と値を保っていることからも公開価格と同値での初値を予想する。

 ただ、現在取り巻く状況では5%の配当が維持できるかは全く安心できない。政府は執ように値下げ圧力を掛けており、ついに政府系のドコモが陥落し、来年度の値下げを表明した。加えて楽天の新規参入で、かつて同社自身が仕掛けた価格競争が再燃しかねない。加えて相対的にコストの安い華為技術(ファーウェイテクノジーズ)を使った5G投資が封じられ、日経報道では現状の4Gも他社製品に交換していくという。今後の業績は売上高の下押し圧力とコストの上昇圧力に挟み撃ちだ。配当性向が85%と既に高いため、減益は減配に直結する問題である。

 加えて、ヤフーとの合弁であるペイペイではクレジットカードの不正利用騒ぎがあった。カード情報がペイペイから流出したわけではなく、一義的にはカード会社が損失をかぶるのだろう。だが、アプリのセキュリティーの甘さが踏み台として利用されてしまっただけに、責任の所在が問われかねない。しかも一連の騒ぎは既に一週間前にはツイッターなどで相次ぎ報告されていたが、大手メディアが一斉に報じた17日以前までは他人事のような対応で、無駄に被害を拡大させた。通信障害やファーウェイ騒動はともかく、こちらは管理体制に加えて補償問題も絡みかねないだけに、小型のIPOなら確実に上場延期になっていた事案だろう。

 そもそも単に利回りだけが目当てならREITやインフラファンドといった選択肢が個人にはあるなか、これだけ悪材料がそろっている銘柄を選ぶ必要性は乏しい。インデックス組み入れなどに伴う需要で1月までは比較的底堅い展開にはなるだろうが、少なくとも利回り低下につながる上値追いにはなりづらく、上場後の株価は値が重いと考える。初値同値での予想ではあるが、売り気配からのシンジケートカバーによる売り買い一致でも全く不思議ではない。
初値分析
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初値: 1,463円(今期予想連結PER: 16.7倍) / 上昇率: -2.5% / 高値: 1,464円 / 安値: 1,282円 / 終値: 1,282円
出来高: 271,497,800株 / 対公開株数: 15.4% / 初値出来高: 145,479,800株 / 初値売買代金: 212,836,947,400円

 初値は公開価格を下回り、シンジケートカバーとみられる買い支えによって付いた。グレーマーケットでは公開価格以上での取引が観測され、ブックビルでは海外の需要は強かったとされていた。当然、未達の分を市場で調達するのかと思いきや、フタを開けてみれば買い手不在の状況。実需は78億円程度に過ぎなかったとみられる。国内では申込期間最終日まで販売が苦戦した状況や、ファンダメンタルズでは何一つ買える要素がないことからすれば当然の結果と言えるが、最後の頼みの海外勢が手のひらを返したことで売り一色になった。

 寄り付き後も弱い状況は続いた。今回、国内の平均引受手数料率が2.47%と値幅更新1回分以内だったことで、売り気配を経ずに初値が付いた。様子を見ながら売ろうという投資家がシンジケートカバーの買い支え板がなくなったところを売りたたく形になり、寄り付き後すぐに売り気配になりさらに急落した。JTの配当利回りを上回るといったんは買いが入り下げ止まったが、大引けにかけては再び売りが膨らみ安値引けした。

 初日からかなりひどい値動きになり、既にシンジケートカバーも出し尽くしたのではないかと思われる。一見すると目先は下値を探る展開になりそうな様相だ。だが、日産自動車がいったん6%の配当利回りで下げ止まったことを踏まえれば、1250円割れの押した所は短期的には買いではないかと考える。既にKDDIの時価総額も下回っており、一応は業界順位通りの評価にはなっている。FTSEのグローバル株価指数の早期組み入れは、4営業日後の26日(※クリスマスよる変則日程で24日の誤りでした)、MSCIは8営業日後の年明け7日(同じく9日の誤り)には組み入れ需要が控える。大型上場はTOPIX組み入れの終わる翌月末までは、何だかんだで底堅くなりやすい。本当の下値模索局面は2月以降になろう。ただネット証券が引受幹事に入っていることから空売り株式も調達しやすいとみられる。あくまで押したところを買うスタイルで、もくろみが外れても頑張らないことが肝心だ。

 もっとも今回の結果は投資ファンドに回帰した親会社にとってみれば、大勝利ともいってもいいだろう。きょうはいったんは子会社に連れ安したが、その後はとある大口個人投資家の買いが観測されプラスになる場面もあった。現在、通信子会社のIPOの関係で証券会社はカバレッジを停止しているところが多いが、再開時には従来はせいぜいEV/EBITDA6倍程度で評価していた価値を、市場価格で洗い直すことにもなるはずだ。その時まで値を保っていればというところもあるが、本来の価値では650円程度しかないものを一部とはいえ、倍以上の価格で売り抜けた孫正義氏の功績は大きい。

※実需についての推定額を訂正しました。(12/20)
追加情報
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11/19 想定初値を1500円前後→1500円以下に微修正

12/7 同社は7日、6日に発生した携帯電話サービスの大規模通信障害に伴い、現時点で業績と1株当たり配当金の予想値に変更はないと発表した。

12/7 一部証券会社ではブックビルディングの締め切り時間を17時に延長した。通信障害を受け海外機関投資家向けに緊急電話会議を開く(ブルームバーグ報道)ことが要因とみられる。

12/17 ブルームバーグによれば国内の応募倍率は2倍程度(機関投資家2倍程度、個人2倍弱)、海外は3倍程度になったもよう。日本経済新聞も国内は約2倍だったと報じており、事実上の訂正報道を行った。なお当該数字は公開価格追加分析時に弊社が把握していた数字と同じである。

12/19 親会社との混同避けるため略称を「SB」にしました。

12/20 FTSEとMSCIの早期採用が決定
 FTSEラッセルとMSCIは19日、ソフトバンク<9434.T>のそれぞれが算出する世界株価指数への早期採用を正式に発表した。FTSEの各指数は24日、MSCIは1月9日の取引から前営業日の終値を基に組み入れる。

12/21(追加) FTSEの組み入れ基準となる21日の終値はザラ場引けによるものとなった。大引け後の時間外・取引所外取引(JNX除く)での終値による取引は合計1229万5100株(約161.8億円)だった。

1/8 MSCI組み入れの基準となる8日引値での出来高は、5597万3400株(809.4億円)だった。また、大引け後は引値のみの時間外、取引所外取引で合計7764万7100株(約1122.8億円)の取引が確認された。(1/11更新)
 なお、市場筋によるとパッシブ需要は約9600万株程度(約1360億円)と観測されていた。

1/30 TOPIX組み入れの基準となる30日大引けでの出来高は2711万9900株(約374億円)だった。また18時半時点、引け後の時間外・取引所外取引では終値と同値で合計3323万5900株(約458億円)、1円未満の刻みで1378円台全ての取引を加えると8279万7100株(約1141億円)が確認された。市場筋によればパッシブ運用による買い需要は1800億円程度と試算されていた。
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IPOスケジュール
マーケットデータ
日経平均 39,605.80 +224.91
TOPIX 2,706.20 -6.47
グロース250 638.19 -1.75
NYダウ 42,863.86 +409.74
ナスダック総合 18,342.94 +60.89
ドル/円 148.74 +0.17
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