IPO銘柄詳細
コード | 市場 | 業種 | 売買単位 | 注目度 |
---|---|---|---|---|
9142 | 東証1部 | 陸運業 | 100株 | S |
注目のIPO銘柄
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スケジュール
スケジュール | |
---|---|
仮条件決定 | 2016/10/06 |
ブックビルディング期間 | 2016/10/07 - 10/14 |
公開価格決定 | 2016/10/17 |
申込期間 | 2016/10/18 - 10/21 |
払込期日 | - |
上場日 | 2016/10/25 |
価格情報 | |
---|---|
想定価格 | 2,450円 |
仮条件 | 2,400 - 2,600円 |
公開価格 | 2,600円 |
初値予想 | 3,000円 |
初値 | 3,100円 |
- スケジュールは上場企業都合により変更になる場合があります。
基本情報
代表者名 | 青柳 俊彦(上場時63歳2カ月)/1953年生 |
---|---|
本店所在地 | 福岡県福岡市 |
設立年 | 1987年 |
従業員数 | 7870人 (2016/07/31現在)(平均40歳、年収568.3万円)、連結1万7139人 |
事業内容 | 運輸サービス、建設、駅ビル・不動産、流通・外食およびその他事業 |
URL | http://www.jrkyushu.co.jp/ |
株主数 | 1人 (目論見書より) |
資本金 | 16,000,000,000円 (2016/09/15現在) |
上場時発行済株数 | 160,000,000株 |
公開株数 | 160,000,000株(売り出し160,000,000株) |
調達資金使途 | - |
連結会社 | 子会社36社、持ち分法適用会社1社 |
シンジケート
公開株数120,000,000株/(国内分)
種別 | 証券会社名 | 株数 | 比率 |
---|---|---|---|
主幹事証券 | 野村 | 36,000,000 | 30.00% |
主幹事証券 | 三菱UFJモルガン・スタンレー | 36,000,000 | 30.00% |
主幹事証券 | JPモルガン | 7,542,000 | 6.29% |
主幹事証券 | SMBC日興 | 11,601,000 | 9.67% |
引受証券 | 大和 | 9,045,600 | 7.54% |
引受証券 | みずほ | 9,045,600 | 7.54% |
引受証券 | 岡三 | 1,227,600 | 1.02% |
引受証券 | 東海東京 | 1,227,600 | 1.02% |
引受証券 | いちよし | 948,600 | 0.79% |
引受証券 | SBI | 948,600 | 0.79% |
引受証券 | SMBCフレンド | 948,600 | 0.79% |
引受証券 | 岩井コスモ | 500,000 | 0.42% |
引受証券 | エース | 500,000 | 0.42% |
引受証券 | 東洋 | 500,000 | 0.42% |
引受証券 | マネックス | 500,000 | 0.42% |
引受証券 | 丸三 | 500,000 | 0.42% |
引受証券 | 藍沢 | 446,400 | 0.37% |
引受証券 | 水戸 | 446,400 | 0.37% |
引受証券 | エイチ・エス | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | 極東 | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | 高木 | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | 立花 | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | ちばぎん | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | 内藤 | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | 日本アジア | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | 松井 | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | むさし | 134,000 | 0.11% |
引受証券 | あかつき | 50,200 | 0.04% |
引受証券 | 西日本シティTT | 50,200 | 0.04% |
引受証券 | 日の出 | 50,200 | 0.04% |
引受証券 | ふくおか | 50,200 | 0.04% |
引受証券 | 丸八 | 50,200 | 0.04% |
引受証券 | 光世 | 41,900 | 0.03% |
引受証券 | リテラ・クレア | 41,900 | 0.03% |
引受証券 | ゴールドマン・サックス | 39,900 | 0.03% |
引受証券 | UBS | 39,900 | 0.03% |
引受証券 | クレディ・スイス | 16,800 | 0.01% |
引受証券 | シティグループ | 16,800 | 0.01% |
引受証券 | バークレイズ | 16,800 | 0.01% |
引受証券 | マッコーリーキャピタル | 16,800 | 0.01% |
引受証券 | メリルリンチ日本 | 16,800 | 0.01% |
引受証券 | 安藤 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 今村 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | ウツミ屋 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 岡三にいがた | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 岡地 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 木村 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 共和 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 上光 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 第四 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 長野 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 中原 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 西村 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 日産 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | ニュース | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 八十二 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | ばんせい | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | フィリップ | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 三木 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 三田 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 山和 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | 豊 | 16,700 | 0.01% |
引受証券 | リーディング | 16,700 | 0.01% |
大株主(潜在株式なし)
大株主名 | 摘要 | 株数 | 比率 |
---|---|---|---|
(独)法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 | 特別利害関係者など | 160,000,000 | 100.00% |
業績動向(単位:百万円)
決算期 | 種別 | 営業収益 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
---|---|---|---|---|---|
2017/03 | 連結1Q実績 | 79,456 | 12,364 | 12,983 | 7,164 |
2017/03 | 連結予想 | 378,800 | 51,800 | 53,500 | 38,200 |
2016/03 | 連結実績 | 377,989 | 20,893 | 32,035 | -433,089 |
2015/03 | 連結実績 | 357,422 | 12,782 | 25,574 | 15,012 |
営業収益
営業利益
経常利益
純利益
1株あたりの数値(単位:円)
決算期 | 種別 | EPS | BPS | 配当 |
---|---|---|---|---|
2017/03 | 連結予想 | 238.75 | 1,878.49 | 37.50 |
参考類似企業
事業詳細
JR九州。九州全域を中心に運輸サービスのほか、建設、駅ビル・不動産、流通・外食などの事業を展開している。新幹線は博多駅以南が担当エリア。九州の主要都市間を結ぶ鉄道ネットワークを有しており、各主要都市ではグループが保有する駅ビルを管理・運営している。
1.運輸サービスグループ
鉄道事業、バス事業、船舶事業、レンタカー業などを行っている。鉄道は新幹線1路線、幹線8路線、地方交通線13路線の合計22路線を運営しており、総営業キロは2273キロ(2016年7月末)。バスは乗合、高速、貸切、船舶は福岡~釜山、対馬~釜山間を結ぶ航路が対象で、レンタカー業では駐車場も運営している。
2.建設グループ
建設業、車両機械設備工事業、電気工事業などを行っている。
3.駅ビル・不動産グループ
不動産賃貸業(商業施設、オフィス、マンションなど)、不動産販売業(分譲マンション)などを行っている。
4.流通・外食グループ
駅構内売店、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどの小売業のほか、居食屋やベーカリー、ファーストフード店などの飲食業、農産品の生産・販売を行っている。
5.その他グループ
ホテル業、ゴルフ場経営、複合観光施設の運営、広告業、物品賃貸業、シニア事業を手掛けている。
2016年3月期の連結営業収益の構成比は、運輸サービス46.6%、建設6.5%、駅ビル・不動産14.9%、流通・外食25.4%、その他6.6%。
1.運輸サービスグループ
鉄道事業、バス事業、船舶事業、レンタカー業などを行っている。鉄道は新幹線1路線、幹線8路線、地方交通線13路線の合計22路線を運営しており、総営業キロは2273キロ(2016年7月末)。バスは乗合、高速、貸切、船舶は福岡~釜山、対馬~釜山間を結ぶ航路が対象で、レンタカー業では駐車場も運営している。
2.建設グループ
建設業、車両機械設備工事業、電気工事業などを行っている。
3.駅ビル・不動産グループ
不動産賃貸業(商業施設、オフィス、マンションなど)、不動産販売業(分譲マンション)などを行っている。
4.流通・外食グループ
駅構内売店、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどの小売業のほか、居食屋やベーカリー、ファーストフード店などの飲食業、農産品の生産・販売を行っている。
5.その他グループ
ホテル業、ゴルフ場経営、複合観光施設の運営、広告業、物品賃貸業、シニア事業を手掛けている。
2016年3月期の連結営業収益の構成比は、運輸サービス46.6%、建設6.5%、駅ビル・不動産14.9%、流通・外食25.4%、その他6.6%。
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・所属部は第1部の見込み。
・東京証券取引所上場の翌26日に福岡証券取引所に重複上場する。
・3月末の株主には株数に応じて鉄道とグループの優待券が発行される。鉄道優待券は1000株までは100株ごとに1枚で、片道乗車券や特急券、グリーン券、指定席券が1枚1人5割引となる。グループ優待券は単元株主1人一律5枚で、高速船運賃やホテル宿泊料金、農産品店などの割引が利用可能。
・海外売り出しは4000万株の予定で、主幹事はJPモルガン、モルガン・スタンレー、ノムラインターナショナル、ゴールドマン・サックス。
・従業員持ち株会に対し、上限30億円相当の親引けを予定。
・EBITDAは2016.3期69,196百万円、経営安定化基金運用収益を加えない場合で58,052百万円、2017.3期予67,000百万円。
・配当性向は30%を目安とするが、17.3期は下期分のみで15%を目安にする方針。
<ファースインプレッション>
事前報道にあった時価総額5000億円に対し、想定は4000億円弱の設定と割安感は演出してきた印象。同社は承認前から今期の業績予想を開示しており、承認にあたって変更はしていない。一回で全株売り切るのは意外だったが、今年は他に大きな案件が予定されていないだけに、証券会社も収益を確保したかったか。完全民営化が名実とも実行されることでは、経営の自由度が高まる効果も期待できよう。
ただ民営化といえどあくまでローカル案件の中型株とあって、九州以外の投資家にとっての関心は限定的なもよう。日本経済新聞によれば、福岡市で開催された説明会には約180名が出席したのに対し、東京は79名にとどまったと伝えている。他のJRと同じく株主優待制度はあるが、九州以外の投資家には使う機会が限られる。沿線人口の減少も予測され、長期的な事業環境は厳しい。22年春開業予定の長崎新幹線ではフリーゲージトレイン(軌間可変電車)の開発に見通しが立たず迷走している。
・東京証券取引所上場の翌26日に福岡証券取引所に重複上場する。
・3月末の株主には株数に応じて鉄道とグループの優待券が発行される。鉄道優待券は1000株までは100株ごとに1枚で、片道乗車券や特急券、グリーン券、指定席券が1枚1人5割引となる。グループ優待券は単元株主1人一律5枚で、高速船運賃やホテル宿泊料金、農産品店などの割引が利用可能。
・海外売り出しは4000万株の予定で、主幹事はJPモルガン、モルガン・スタンレー、ノムラインターナショナル、ゴールドマン・サックス。
・従業員持ち株会に対し、上限30億円相当の親引けを予定。
・EBITDAは2016.3期69,196百万円、経営安定化基金運用収益を加えない場合で58,052百万円、2017.3期予67,000百万円。
・配当性向は30%を目安とするが、17.3期は下期分のみで15%を目安にする方針。
<ファースインプレッション>
事前報道にあった時価総額5000億円に対し、想定は4000億円弱の設定と割安感は演出してきた印象。同社は承認前から今期の業績予想を開示しており、承認にあたって変更はしていない。一回で全株売り切るのは意外だったが、今年は他に大きな案件が予定されていないだけに、証券会社も収益を確保したかったか。完全民営化が名実とも実行されることでは、経営の自由度が高まる効果も期待できよう。
ただ民営化といえどあくまでローカル案件の中型株とあって、九州以外の投資家にとっての関心は限定的なもよう。日本経済新聞によれば、福岡市で開催された説明会には約180名が出席したのに対し、東京は79名にとどまったと伝えている。他のJRと同じく株主優待制度はあるが、九州以外の投資家には使う機会が限られる。沿線人口の減少も予測され、長期的な事業環境は厳しい。22年春開業予定の長崎新幹線ではフリーゲージトレイン(軌間可変電車)の開発に見通しが立たず迷走している。
仮条件分析
(BB参加妙味
:B)
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想定価格: 2,450円
吸収資金レンジ: 3920.0億円 - 3920.0億円(今期予想連結PER: 10.3倍)
時価総額レンジ: 3920.0億円
仮条件: 2,400円 - 2,600円
吸収資金レンジ: 3840.0億円 - 4160.0億円(今期予想連結PER: 10.1倍 - 10.9倍)
時価総額レンジ: 3840.0億円 - 4160.0億円
仮条件は想定価格を挟んで上振れ気味に設定された。上限価格は想定を6.12%上回る半面、下限価格は2.04%下回る。
<強材料>
民営化案件、業績安定、駅ビル開発本格化、割安、好配当、優待割引あり、ななつ星値上げ
<弱材料>
ローカル案件、人口減少地域、長崎新幹線迷走、都市間移動需要限定的
<機関投資家の評価>
1.高いブランド力と鉄道ネットワークを基盤とする駅ビル・不動産事業は収益性が高く、今後の成長も期待できること。
2.良好なキャッシュフローと資本基盤を背景に安定的な配当方針を掲げていること。
3.九州の人口動向や経済状況に影響を受ける状況にあることおよび運輸サービス事業の採算性・収益性の改善が望まれること。
<結論>
Bとする。公開価格が仮条件の上限ならば、初値は2700~3100円(EV/EBITDA倍率:6.20~7.15倍)を想定する。
他JRや西日本鉄道に比べてEV/EBITDA倍率が割安であうえ、配当利回りが高い。優待も割引率の高いJR西日本に合わせたものになっている。微妙な案件の多い10月だが、唯一安心して望める大型案件として評価できる。
2017年3月期の連結EBITDA(営業利益+減価償却費)は、前期の経営安定化基金運用収益を含まないのに比べて15.4%増の670億円の予想。売上高は微増にとどまるが、退職者数増加による人件費が減少するほか、前期に発生したトンネルはく落対策や倒木対策、PCB廃棄物処理対策など安全・環境対策引当金繰り入れの反動減が寄与する(熊本地震による復旧費は特別損失に計上)。博多駅ビル開発などの新規開業効果で駅ビル事業も伸びる。中期経営計画では2018年の目標EBITDAを780億円と掲げている。
鉄道株のバリュエーション比較で一般的に使われるEV/EBITDA倍率は、仮条件では5.31~5.79倍と他のJRや同地域に展開する西鉄に比べて割安である。配当利回りは今期は下期分のみのため年換算では3.13~2.88%であり、もっとも高いJR西の2.22%を上回る設定になっている。優待の内容は鉄道運賃が5割引きで、JR3社のなかで最も優待割引率の高いJR西と同じ内容だ。鉄道株の優待は地域性が強いため、他社と比較できるものではないが、株価がJR西の半額未満であることからすれば、沿線住民にとってはかなりお得感のある内容だろう。
<類似企業比較>
コード 銘柄略称 EV/EBITDA 修正PBR 配当利回り
--------------------------------------------------------
9020 JR東日本 8.13倍 0.95倍 1.42%
9021 JR西日本 7.02倍 1.09倍 2.22%
9022 JR東海 6.37倍 1.42倍 0.74%
9031 西鉄 9.42倍 0.79倍 1.44%
9142 JR九州 5.96倍 1.36倍 2.88%
・10/7時点、JR九州は仮条件上限の株価にて会社資料よりDZHフィナンシャルリサーチ作成。
・修正PBRは前期末の賃貸等不動産における含み益を直近の四半期決算時のBPSに加算したことによるもの。
各社のEV/EBITDA倍率はJR東日本と西鉄が相対的に高いが、これは不動産の含み益を株価が織り込んでいるためである。前期末時点の賃貸等不動産の含み益を加算したBPSで修正PBRを計算すると、この2社は1倍を下回る。株価は解散価値に引っ張られ、現状の収益力よりも高く付いている。残念ながら同じ地域としてJR九州のEV/EBITDA倍率が西鉄にサヤ寄せが期待できるというわけではない。
今回は記さなかったが、大手私鉄のEV/EBITDA倍率は相対的にJRを上回る傾向にあり、各社とも含み益を加算したBPSに株価が押し上げられている。一般的に私鉄各社の保有資産は、歴史がある分多くの含み益を抱える傾向にあり、西鉄も地方私鉄ながら例外ではない。
JR九州の目論見書には、賃貸等不動産の含み益の記載はない。PBRを修正する必要はなく既に1倍を上回ることから、上場後のEV/EBITDA倍率は修正PBRが同じく1倍を超える東海とJR西が基準になってくる。両社のレンジを取ると九州の株価は2785~3045円と計算できる。想定初値レンジはこれに上場までの相場変動を考慮して2700~3100円と設定する。上限では2割近い上昇となるが、昨年の日本郵政が吸収額約6000億円弱で16%高のスタートだった。1社単独上場の同社にとって決して高いハードルではない。
ただし、このレンジ内では配当利回りは他社に対して優位性が残る。JR西日本のEV/EBITDA倍率がJR東海よりも高いのは配当が寄与していると考えられことからすると、JR西の利回りに並ぶ3400円までは初値後に買われる可能性がある。加えて、今期は熊本地震の影響が業績を下押しするが、来期はこれが一巡するのと同時に復興需要による押し上げ効果が期待される。
半面、長期的なリスクととしては人口減が避けて通れない。福岡市の人口は増加しているものの、九州全域では東京などに人口を吸い取られ減少している。近年は1320万人台で下げ止まっているが、少子化も重なり2030年には12%減の1157万人になると予想されている。同時に進む高齢化でビジネス利用はさらに減少することになり、運輸事業は基本的にはジリ貧だ。
加えて九州の政令指定都市は3市しかない。うち1つは山陽新幹線の範囲である北九州市だ。熊本市は「平成の市町村大合併」による特例適用による指定である。九州新幹線管内の100万人都市は福岡市しかない。JR各社は新幹線で運輸事業の柱として成長してきた。だが、人口の一極集中を踏まえると、都市間移動のビジネス需要は本州ほどには期待できないのが実情だ。2022年春に開業予定の長崎新幹線はFGT(軌道可変電車)の問題で迷走しており、リレー方式が提唱されるも乗り換え時間の問題から効果が疑問視されている。
一方、当面の成長事業は不動産事業である。今春は日本郵政グループとの「JRJP博多ビル」や、賃貸マンションなどの博多駅周辺の開発が寄与する。福岡市のほか、熊本駅や大分駅の周辺など不動産開発の計画は上場後もめじろ押しだ。鉄道事業者ならではの一等地を保有する強みが生きるのは、まだまだこれからである。
このため、短期では割安修正、中期では駅ビル開発による成長を見込むが、長期的には人口減と厳しい事業展開が見込まれる。人口減少におびえながらも、2~3年は安心して保有を続けられるだろう。
<追加分析>
B継続。引き続き初値は2700~3100円(EV/EBITDA倍率:6.20~7.15倍)を想定する。
取り立てて追加する事項もないが、九州、西日本を中心にブックビルディングは順調なもよう。あくまでローカル銘柄として、投資家の反応は当初から地域差が観測される。配分も九州の支店を中心に傾斜配分だろうが、元より需要に偏りがあるので九州の投資家が有利とは限らない。ただ発行体から見れば九州以外の投資家が取得したところですぐに売却してしまう人たちばかりなので、なるべく九州、沿線の投資家に取得してもらいたいところだろう。鉄道株はどこも沿線に投資家が集中するものだ。
バリュエーション比較をPERで実施し、JR東海と比べると割高とみる向きもあるようだが、これはマイナーなやり方。JR九州の今期営業利益は前期に比べ倍以上にはね上がる予想だが、要因のほとんどは前期末の減損による減価償却費の大幅減少だ。PERでは単なる会計マジックによる誤差を防げない。発行体がEBITDAの予想も開示しているのはこのためで、西武ホールディングスの再上場時も対応は同じだった。中期目標もEBITDAで掲げられており、市場では純利益や営業利益よりも一般的な尺度になっている。
なお、EBITDAに対応する分子のEV(企業価値)とは時価総額+純有利子負債のことだが、これは純利益が純粋に株主だけのものであるのに対し、EBITDAは債権者の利益も混じっているためである。
吸収資金レンジ: 3920.0億円 - 3920.0億円(今期予想連結PER: 10.3倍)
時価総額レンジ: 3920.0億円
仮条件: 2,400円 - 2,600円
吸収資金レンジ: 3840.0億円 - 4160.0億円(今期予想連結PER: 10.1倍 - 10.9倍)
時価総額レンジ: 3840.0億円 - 4160.0億円
仮条件は想定価格を挟んで上振れ気味に設定された。上限価格は想定を6.12%上回る半面、下限価格は2.04%下回る。
<強材料>
民営化案件、業績安定、駅ビル開発本格化、割安、好配当、優待割引あり、ななつ星値上げ
<弱材料>
ローカル案件、人口減少地域、長崎新幹線迷走、都市間移動需要限定的
<機関投資家の評価>
1.高いブランド力と鉄道ネットワークを基盤とする駅ビル・不動産事業は収益性が高く、今後の成長も期待できること。
2.良好なキャッシュフローと資本基盤を背景に安定的な配当方針を掲げていること。
3.九州の人口動向や経済状況に影響を受ける状況にあることおよび運輸サービス事業の採算性・収益性の改善が望まれること。
<結論>
Bとする。公開価格が仮条件の上限ならば、初値は2700~3100円(EV/EBITDA倍率:6.20~7.15倍)を想定する。
他JRや西日本鉄道に比べてEV/EBITDA倍率が割安であうえ、配当利回りが高い。優待も割引率の高いJR西日本に合わせたものになっている。微妙な案件の多い10月だが、唯一安心して望める大型案件として評価できる。
2017年3月期の連結EBITDA(営業利益+減価償却費)は、前期の経営安定化基金運用収益を含まないのに比べて15.4%増の670億円の予想。売上高は微増にとどまるが、退職者数増加による人件費が減少するほか、前期に発生したトンネルはく落対策や倒木対策、PCB廃棄物処理対策など安全・環境対策引当金繰り入れの反動減が寄与する(熊本地震による復旧費は特別損失に計上)。博多駅ビル開発などの新規開業効果で駅ビル事業も伸びる。中期経営計画では2018年の目標EBITDAを780億円と掲げている。
鉄道株のバリュエーション比較で一般的に使われるEV/EBITDA倍率は、仮条件では5.31~5.79倍と他のJRや同地域に展開する西鉄に比べて割安である。配当利回りは今期は下期分のみのため年換算では3.13~2.88%であり、もっとも高いJR西の2.22%を上回る設定になっている。優待の内容は鉄道運賃が5割引きで、JR3社のなかで最も優待割引率の高いJR西と同じ内容だ。鉄道株の優待は地域性が強いため、他社と比較できるものではないが、株価がJR西の半額未満であることからすれば、沿線住民にとってはかなりお得感のある内容だろう。
<類似企業比較>
コード 銘柄略称 EV/EBITDA 修正PBR 配当利回り
--------------------------------------------------------
9020 JR東日本 8.13倍 0.95倍 1.42%
9021 JR西日本 7.02倍 1.09倍 2.22%
9022 JR東海 6.37倍 1.42倍 0.74%
9031 西鉄 9.42倍 0.79倍 1.44%
9142 JR九州 5.96倍 1.36倍 2.88%
・10/7時点、JR九州は仮条件上限の株価にて会社資料よりDZHフィナンシャルリサーチ作成。
・修正PBRは前期末の賃貸等不動産における含み益を直近の四半期決算時のBPSに加算したことによるもの。
各社のEV/EBITDA倍率はJR東日本と西鉄が相対的に高いが、これは不動産の含み益を株価が織り込んでいるためである。前期末時点の賃貸等不動産の含み益を加算したBPSで修正PBRを計算すると、この2社は1倍を下回る。株価は解散価値に引っ張られ、現状の収益力よりも高く付いている。残念ながら同じ地域としてJR九州のEV/EBITDA倍率が西鉄にサヤ寄せが期待できるというわけではない。
今回は記さなかったが、大手私鉄のEV/EBITDA倍率は相対的にJRを上回る傾向にあり、各社とも含み益を加算したBPSに株価が押し上げられている。一般的に私鉄各社の保有資産は、歴史がある分多くの含み益を抱える傾向にあり、西鉄も地方私鉄ながら例外ではない。
JR九州の目論見書には、賃貸等不動産の含み益の記載はない。PBRを修正する必要はなく既に1倍を上回ることから、上場後のEV/EBITDA倍率は修正PBRが同じく1倍を超える東海とJR西が基準になってくる。両社のレンジを取ると九州の株価は2785~3045円と計算できる。想定初値レンジはこれに上場までの相場変動を考慮して2700~3100円と設定する。上限では2割近い上昇となるが、昨年の日本郵政が吸収額約6000億円弱で16%高のスタートだった。1社単独上場の同社にとって決して高いハードルではない。
ただし、このレンジ内では配当利回りは他社に対して優位性が残る。JR西日本のEV/EBITDA倍率がJR東海よりも高いのは配当が寄与していると考えられことからすると、JR西の利回りに並ぶ3400円までは初値後に買われる可能性がある。加えて、今期は熊本地震の影響が業績を下押しするが、来期はこれが一巡するのと同時に復興需要による押し上げ効果が期待される。
半面、長期的なリスクととしては人口減が避けて通れない。福岡市の人口は増加しているものの、九州全域では東京などに人口を吸い取られ減少している。近年は1320万人台で下げ止まっているが、少子化も重なり2030年には12%減の1157万人になると予想されている。同時に進む高齢化でビジネス利用はさらに減少することになり、運輸事業は基本的にはジリ貧だ。
加えて九州の政令指定都市は3市しかない。うち1つは山陽新幹線の範囲である北九州市だ。熊本市は「平成の市町村大合併」による特例適用による指定である。九州新幹線管内の100万人都市は福岡市しかない。JR各社は新幹線で運輸事業の柱として成長してきた。だが、人口の一極集中を踏まえると、都市間移動のビジネス需要は本州ほどには期待できないのが実情だ。2022年春に開業予定の長崎新幹線はFGT(軌道可変電車)の問題で迷走しており、リレー方式が提唱されるも乗り換え時間の問題から効果が疑問視されている。
一方、当面の成長事業は不動産事業である。今春は日本郵政グループとの「JRJP博多ビル」や、賃貸マンションなどの博多駅周辺の開発が寄与する。福岡市のほか、熊本駅や大分駅の周辺など不動産開発の計画は上場後もめじろ押しだ。鉄道事業者ならではの一等地を保有する強みが生きるのは、まだまだこれからである。
このため、短期では割安修正、中期では駅ビル開発による成長を見込むが、長期的には人口減と厳しい事業展開が見込まれる。人口減少におびえながらも、2~3年は安心して保有を続けられるだろう。
<追加分析>
B継続。引き続き初値は2700~3100円(EV/EBITDA倍率:6.20~7.15倍)を想定する。
取り立てて追加する事項もないが、九州、西日本を中心にブックビルディングは順調なもよう。あくまでローカル銘柄として、投資家の反応は当初から地域差が観測される。配分も九州の支店を中心に傾斜配分だろうが、元より需要に偏りがあるので九州の投資家が有利とは限らない。ただ発行体から見れば九州以外の投資家が取得したところですぐに売却してしまう人たちばかりなので、なるべく九州、沿線の投資家に取得してもらいたいところだろう。鉄道株はどこも沿線に投資家が集中するものだ。
バリュエーション比較をPERで実施し、JR東海と比べると割高とみる向きもあるようだが、これはマイナーなやり方。JR九州の今期営業利益は前期に比べ倍以上にはね上がる予想だが、要因のほとんどは前期末の減損による減価償却費の大幅減少だ。PERでは単なる会計マジックによる誤差を防げない。発行体がEBITDAの予想も開示しているのはこのためで、西武ホールディングスの再上場時も対応は同じだった。中期目標もEBITDAで掲げられており、市場では純利益や営業利益よりも一般的な尺度になっている。
なお、EBITDAに対応する分子のEV(企業価値)とは時価総額+純有利子負債のことだが、これは純利益が純粋に株主だけのものであるのに対し、EBITDAは債権者の利益も混じっているためである。
公開価格分析
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公開価格: 2,600円
吸収資金: 4,160.0億円(今期予想連結PER: 10.9倍)
時価総額: 4,160.0億円
公開価格は仮条件上限で決まった。国内外の配分は当初の予定通りで、国内1億2000万株、海外4000万株で決定した。委託販売団への配分は50万1200株で、上限83万株に対し60%超にとどまった。一方、従業員持ち株会への親引けは105万2300株で、上限125万株に対し84%を消化した。連結1人当たりは61株となる。
訂正目論見書によればブックビルディングの状況は、申告された総需要株式数が公開株式数を十分に上回り、総件数が多数にわたっていたうえ、価格ごとの分布は仮条件の上限価格に集中していたことが特徴だった。グレー価格の報道を受けて初値レンジは2800~3100円と下限を引き上げる。
委託販売分が上限ではないが、多くの証券会社が引受団に入っていることが影響しているとみられ、これは昨年の郵政3社と同じ状況。郵政3社の委託販売枠の消化率は20%台後半にとどまっていた。個人人気は西高東低ながらも全体的に高かったとみられる。
野村証券の一部の店舗では既に初値売りよりも初値買いを推奨しているもよう。今年は年初からの大型IPO不調を受けて、初日売却を抑制する動きも一部で観測されている。鉄道株の習性上、九州以外の投資家がどの程度応じるのか見通しづらいが、この動きが全国的に広がるようだと、初値は3000円を超えてからということになろう。ブルームバーグによれば、グレーマーケットでは2850円での取引があったとトレーダー関係者の話として伝えており、初値の目安は最低でも2800円からということになりそうだ。
全体的に停滞ムードが漂うタイミングで上場すると、手詰まり感からIPO株には注目が集まりやすく、対面証券では初値買いキャンペーンが起こりやすい。7月のLINEもこのパターンだった。LINEのように成長株でないことは共通認識のため上値を追いかけるような展開にはならないだろうが、営業員は少なくともグレー価格を上回り節目の3000円で注文を集めてくるだろう。
公開価格決定を受けて18日はJR3社の株式がそろって下落で始まった。申込期間最終日が21日のため、ニューマネーを手当てできない機関投資家は18日中にリバランス売りをする必要があり、朝方に一気に売りが出たものとみられる。大引けでは戻して終えており、結果的に九州の初値には影響しなさそうだ。
吸収資金: 4,160.0億円(今期予想連結PER: 10.9倍)
時価総額: 4,160.0億円
公開価格は仮条件上限で決まった。国内外の配分は当初の予定通りで、国内1億2000万株、海外4000万株で決定した。委託販売団への配分は50万1200株で、上限83万株に対し60%超にとどまった。一方、従業員持ち株会への親引けは105万2300株で、上限125万株に対し84%を消化した。連結1人当たりは61株となる。
訂正目論見書によればブックビルディングの状況は、申告された総需要株式数が公開株式数を十分に上回り、総件数が多数にわたっていたうえ、価格ごとの分布は仮条件の上限価格に集中していたことが特徴だった。グレー価格の報道を受けて初値レンジは2800~3100円と下限を引き上げる。
委託販売分が上限ではないが、多くの証券会社が引受団に入っていることが影響しているとみられ、これは昨年の郵政3社と同じ状況。郵政3社の委託販売枠の消化率は20%台後半にとどまっていた。個人人気は西高東低ながらも全体的に高かったとみられる。
野村証券の一部の店舗では既に初値売りよりも初値買いを推奨しているもよう。今年は年初からの大型IPO不調を受けて、初日売却を抑制する動きも一部で観測されている。鉄道株の習性上、九州以外の投資家がどの程度応じるのか見通しづらいが、この動きが全国的に広がるようだと、初値は3000円を超えてからということになろう。ブルームバーグによれば、グレーマーケットでは2850円での取引があったとトレーダー関係者の話として伝えており、初値の目安は最低でも2800円からということになりそうだ。
全体的に停滞ムードが漂うタイミングで上場すると、手詰まり感からIPO株には注目が集まりやすく、対面証券では初値買いキャンペーンが起こりやすい。7月のLINEもこのパターンだった。LINEのように成長株でないことは共通認識のため上値を追いかけるような展開にはならないだろうが、営業員は少なくともグレー価格を上回り節目の3000円で注文を集めてくるだろう。
公開価格決定を受けて18日はJR3社の株式がそろって下落で始まった。申込期間最終日が21日のため、ニューマネーを手当てできない機関投資家は18日中にリバランス売りをする必要があり、朝方に一気に売りが出たものとみられる。大引けでは戻して終えており、結果的に九州の初値には影響しなさそうだ。
初値予想
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初値予想: 3,000円(今期予想連結PER: 12.6倍)
初値買い妙味: B
初値しっかりを予想する。他の鉄道株と比べた割安感や配当利回りの優位性を背景に買い優勢の展開が想定される。既にグレーマーケットでは2800円台の取引が観測されているが、アベノミクス以降の初値はグレー価格を上回って付く傾向だ。
JR九州。JRとしては4社目だが、三島では初の上場。残りは収支均衡のメドが付かないため実質的に最後の上場ともいわれる。政府は保有株全て売り出しており、上場と同時に完全民営化を達成する。
売り出しのみの上場だが、ファンドの出口案件と異なるのは政府案件の場合、価格を無理に高くする動機が弱く割安に設定されやすい。鉄道株のバリュエーション比較に用いられるEV/EBITDA(時価総額+純有利子負債総額/営業利益+減価償却費)は他のJRや同地域の西日本鉄道と比べ低いうえ、配当利回りも高い。既に設定された優待制度は比較的割引率が高く隣接するJR西日本に準じた内容だ。地域性があるため単純に比べられるものではないが、最低投資単位は西日本に比べて半分以下のためリーズナブルといえよう。
<類似企業比較>
コード 銘柄略称 EV/EBITDA 修正PBR 配当利回り
--------------------------------------------------------
9020 JR東日本 8.22倍 0.97倍 1.42%
9021 JR西日本 7.12倍 1.13倍 2.22%
9022 JR東海 6.34倍 1.40倍 0.74%
9031 西鉄 9.55倍 0.74倍 1.44%
9142 JR九州 5.96倍 1.36倍 2.88%
・JR九州は仮条件上限の株価にて会社資料よりDZHフィナンシャルリサーチ作成。
・修正PBRは前期末の賃貸等不動産の含み益を直近BPSに加算して算出。
2017年3月期の連結EBITDAは前期の経営安定化基金運用収益を含まないのに比べて15.4%増の670億円の予想。売上高は微増にとどまるが、退職者数増加による人件費が減少するほか、前期に発生したトンネルはく落対策や倒木対策、PCB廃棄物処理対策など安全・環境対策引当金繰り入れの反動減が寄与する。
九州は長期的には過疎化と少子化で人口減少が懸念されるが、中期的には駅ビルなど不動産開発が成長をけん引するとの期待がある。鉄道事業者はどこも駅前開発を中心とした不動産開発を手掛けるが、同社も例外ではなく九州最大の不動産開発会社の側面を持つ。今春は博多駅周辺の開発が寄与する。今後も熊本駅や大分駅の周辺など不動産開発の計画は上場後もめじろ押しだ。完全民営化で地域の縛りもなくなり、東京の新橋駅前にはNTT都市開発とのホテルとオフィスの複合ビルを開発している。
EV/EBITDAはJR3社や西日本鉄道のなかで、賃貸等不動産の含み益を加味した修正PBRが1倍を超えるJR西日本やJR東海を参考にすると、株価は2760~3085円のレンジで算出される。配当利回りの高いJR西日本が高めの評価であることを踏まえると九州も上に引っ張られる可能性が高い。JR西日本と配当利回りが並ぶ3380円までは射程範囲内だ。
既に海外の機関投資家同士の上場前取引(グレーマーケット)では2800円台の商いが観測された。アベノミクス以降のIPOはおおむねグレー価格を上回って初値が付く傾向だ。また、FTSEラッセルでは世界株価指数への早期採用を決定。同指数は一週間後に吸収額の1~2%を吸い上げるだけで直接的な影響は少ないが、思惑的な売買が入りやすい。ただし、影響の大きいMSCIへの採用はよほど初日に株価が上がらなければ難しいとの見方。今のところMSCIからのリリースは出ていない。
日経平均株価は1万7000円乗せで市場心理は改善するも、先高観は依然として欠ける。手詰まり感のあるなかで話題のIPO株には資金が向かいやすいだろう。初値は東海と西日本のEV/EBITDAの間でグレー価格を上回り、節目となる3000円を予想する。
初値買い妙味: B
初値しっかりを予想する。他の鉄道株と比べた割安感や配当利回りの優位性を背景に買い優勢の展開が想定される。既にグレーマーケットでは2800円台の取引が観測されているが、アベノミクス以降の初値はグレー価格を上回って付く傾向だ。
JR九州。JRとしては4社目だが、三島では初の上場。残りは収支均衡のメドが付かないため実質的に最後の上場ともいわれる。政府は保有株全て売り出しており、上場と同時に完全民営化を達成する。
売り出しのみの上場だが、ファンドの出口案件と異なるのは政府案件の場合、価格を無理に高くする動機が弱く割安に設定されやすい。鉄道株のバリュエーション比較に用いられるEV/EBITDA(時価総額+純有利子負債総額/営業利益+減価償却費)は他のJRや同地域の西日本鉄道と比べ低いうえ、配当利回りも高い。既に設定された優待制度は比較的割引率が高く隣接するJR西日本に準じた内容だ。地域性があるため単純に比べられるものではないが、最低投資単位は西日本に比べて半分以下のためリーズナブルといえよう。
<類似企業比較>
コード 銘柄略称 EV/EBITDA 修正PBR 配当利回り
--------------------------------------------------------
9020 JR東日本 8.22倍 0.97倍 1.42%
9021 JR西日本 7.12倍 1.13倍 2.22%
9022 JR東海 6.34倍 1.40倍 0.74%
9031 西鉄 9.55倍 0.74倍 1.44%
9142 JR九州 5.96倍 1.36倍 2.88%
・JR九州は仮条件上限の株価にて会社資料よりDZHフィナンシャルリサーチ作成。
・修正PBRは前期末の賃貸等不動産の含み益を直近BPSに加算して算出。
2017年3月期の連結EBITDAは前期の経営安定化基金運用収益を含まないのに比べて15.4%増の670億円の予想。売上高は微増にとどまるが、退職者数増加による人件費が減少するほか、前期に発生したトンネルはく落対策や倒木対策、PCB廃棄物処理対策など安全・環境対策引当金繰り入れの反動減が寄与する。
九州は長期的には過疎化と少子化で人口減少が懸念されるが、中期的には駅ビルなど不動産開発が成長をけん引するとの期待がある。鉄道事業者はどこも駅前開発を中心とした不動産開発を手掛けるが、同社も例外ではなく九州最大の不動産開発会社の側面を持つ。今春は博多駅周辺の開発が寄与する。今後も熊本駅や大分駅の周辺など不動産開発の計画は上場後もめじろ押しだ。完全民営化で地域の縛りもなくなり、東京の新橋駅前にはNTT都市開発とのホテルとオフィスの複合ビルを開発している。
EV/EBITDAはJR3社や西日本鉄道のなかで、賃貸等不動産の含み益を加味した修正PBRが1倍を超えるJR西日本やJR東海を参考にすると、株価は2760~3085円のレンジで算出される。配当利回りの高いJR西日本が高めの評価であることを踏まえると九州も上に引っ張られる可能性が高い。JR西日本と配当利回りが並ぶ3380円までは射程範囲内だ。
既に海外の機関投資家同士の上場前取引(グレーマーケット)では2800円台の商いが観測された。アベノミクス以降のIPOはおおむねグレー価格を上回って初値が付く傾向だ。また、FTSEラッセルでは世界株価指数への早期採用を決定。同指数は一週間後に吸収額の1~2%を吸い上げるだけで直接的な影響は少ないが、思惑的な売買が入りやすい。ただし、影響の大きいMSCIへの採用はよほど初日に株価が上がらなければ難しいとの見方。今のところMSCIからのリリースは出ていない。
日経平均株価は1万7000円乗せで市場心理は改善するも、先高観は依然として欠ける。手詰まり感のあるなかで話題のIPO株には資金が向かいやすいだろう。初値は東海と西日本のEV/EBITDAの間でグレー価格を上回り、節目となる3000円を予想する。
初値分析
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初値: 3,100円(今期予想連結PER: 13.0倍)
/ 上昇率: 19.2%
/ 高値: 3,120円
/ 安値: 2,908円
/ 終値: 2,990円
出来高: 90,258,400株 / 対公開株数: 56.4% / 初値出来高: 27,869,100株 / 初値売買代金: 86,394,210,000円
しっかりした初値が付いた。朝方に公開価格の気配値で入った売りは公開株式の6%程度しかなく、買い注文は売りの3倍超に上ったが、売り方、買い方ともに3000円に乗せてからが勝負と見ていたようで、3000~3100円に板が集中していた。結局、EV/EBITDAでJR西日本とほぼ同じ水準で売り買いは一致した。節目を超えたせいか初値売却率は17.53%で、昨年の郵政3社(かんぽ15.43%、郵政9.73%、ゆうちょ10.34%)と比べると高かった。
寄り付き後は上値の重い展開となった。高値が寄り付き1分後の3120円となっており、ほぼ初値天井の状態。初値が付いた途端に売買代金は全市場で断トツに上ったが、商いが集中しすぎた反動が出た格好だ。上場承認前から観測されていた時価総額5000億円に到達したことで、達成感も出たとみられる。3000円には分厚い買い板があったが、これを割り込むと見切り売りが加速する場面が見られた。
ただ一方的に売り込む動きとはならず、売りのピークは後場寄りで収まった。後場は反発基調となり、値動きが落ち着くと2900円台後半での取引。3000円手前まで戻して終えた。1日を通して時価総額5000億円、3000円の節目が強く意識された格好だ。
売買代金は2736億円に上り、ETFを除いて2位の任天堂の781億円を大きく上回った。全市場の13%を占めており、まさに一点集中の様相。九州の出来高は3割が初値で積み上がったものだ。9月期の決算発表が既に始まっていることを踏まえると、注目が高かったとはいえローカルな銘柄にこれほど商いが集中するのは異例だ。現在の市場資金を1社でブラックホールのように吸い上げた結果、マザーズなどの直近上場株は軒並み急落。マザーズ指数は大幅安だった。引受団上位では事前に初値買い営業が観測されたが、SBIの手口を見ると売り買いともにトップを占めるものの大きく買い越しになっており個人は対面、ネット問わずに参戦したことがうかがえる。
鉄道株は優待制度の性質上、長期的には株主が沿線住民に偏る傾向がある。初日に入った買いは短期売買目的も多いとみられ、目先は資金を一気に吸い上げた反動が警戒される。MSCIの早期採用(アーリーインクルージョン)は見送りが事前のコンセンサスだが、株価と為替次第では可能性がなくはなかったので想定通りの見送りでも失望売りが出る可能性がある。ただ国際オファリングのIPOでファンダメンタルズとかい離した動きは考えにくく、EV/EBITDAでは実質PBR1倍超のJR東海と西日本の間を意識したレンジ内の動きが引き続き想定される。
短期筋が投げ終わればJRのなかで高い配当利回りを前提に、長期資金による買いで株価が押し上げられやすくなるだろう。需給イベントでは31日引値でFTSE世界株価指数への組み入れがある。同指数の直接的な影響は少ないが、直前になると思惑的な売買で上げる可能性がある。そのほか確定しているのは11月末のTOPIX参入で1000万株の弱の吸い上げが入る期待あり。その間、引受団証券のカバレッジ解禁でも動意付きやすくなると考える。
出来高: 90,258,400株 / 対公開株数: 56.4% / 初値出来高: 27,869,100株 / 初値売買代金: 86,394,210,000円
しっかりした初値が付いた。朝方に公開価格の気配値で入った売りは公開株式の6%程度しかなく、買い注文は売りの3倍超に上ったが、売り方、買い方ともに3000円に乗せてからが勝負と見ていたようで、3000~3100円に板が集中していた。結局、EV/EBITDAでJR西日本とほぼ同じ水準で売り買いは一致した。節目を超えたせいか初値売却率は17.53%で、昨年の郵政3社(かんぽ15.43%、郵政9.73%、ゆうちょ10.34%)と比べると高かった。
寄り付き後は上値の重い展開となった。高値が寄り付き1分後の3120円となっており、ほぼ初値天井の状態。初値が付いた途端に売買代金は全市場で断トツに上ったが、商いが集中しすぎた反動が出た格好だ。上場承認前から観測されていた時価総額5000億円に到達したことで、達成感も出たとみられる。3000円には分厚い買い板があったが、これを割り込むと見切り売りが加速する場面が見られた。
ただ一方的に売り込む動きとはならず、売りのピークは後場寄りで収まった。後場は反発基調となり、値動きが落ち着くと2900円台後半での取引。3000円手前まで戻して終えた。1日を通して時価総額5000億円、3000円の節目が強く意識された格好だ。
売買代金は2736億円に上り、ETFを除いて2位の任天堂の781億円を大きく上回った。全市場の13%を占めており、まさに一点集中の様相。九州の出来高は3割が初値で積み上がったものだ。9月期の決算発表が既に始まっていることを踏まえると、注目が高かったとはいえローカルな銘柄にこれほど商いが集中するのは異例だ。現在の市場資金を1社でブラックホールのように吸い上げた結果、マザーズなどの直近上場株は軒並み急落。マザーズ指数は大幅安だった。引受団上位では事前に初値買い営業が観測されたが、SBIの手口を見ると売り買いともにトップを占めるものの大きく買い越しになっており個人は対面、ネット問わずに参戦したことがうかがえる。
鉄道株は優待制度の性質上、長期的には株主が沿線住民に偏る傾向がある。初日に入った買いは短期売買目的も多いとみられ、目先は資金を一気に吸い上げた反動が警戒される。MSCIの早期採用(アーリーインクルージョン)は見送りが事前のコンセンサスだが、株価と為替次第では可能性がなくはなかったので想定通りの見送りでも失望売りが出る可能性がある。ただ国際オファリングのIPOでファンダメンタルズとかい離した動きは考えにくく、EV/EBITDAでは実質PBR1倍超のJR東海と西日本の間を意識したレンジ内の動きが引き続き想定される。
短期筋が投げ終わればJRのなかで高い配当利回りを前提に、長期資金による買いで株価が押し上げられやすくなるだろう。需給イベントでは31日引値でFTSE世界株価指数への組み入れがある。同指数の直接的な影響は少ないが、直前になると思惑的な売買で上げる可能性がある。そのほか確定しているのは11月末のTOPIX参入で1000万株の弱の吸い上げが入る期待あり。その間、引受団証券のカバレッジ解禁でも動意付きやすくなると考える。
追加情報
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引受団上位の比率観測値
野村30%、三菱モルガン30%、JPM6.285%、日興9.668%、大和7.538%、みずほ7.538%、岡三1.023%、東海東京1.023%、いちよし0.791%、SBI0.791%、フレンド0.791%、岩井コスモ0.417%、エース0.417%、東洋0.417%、マネックス0.417%、丸三0.417%、藍沢0.372%、水戸0.372%、HS0.112%、極東0.112%、高木0.112%、立花0.112%、ちばぎん0.112%、内藤0.112%、日アジア0.112%、松井0.112%、むさし0.112%。
FTSE、JR九州の世界株価指数への早期採用を内定(10/20)
FTSEラッセルは九州旅客鉄道がIPOするにあたり、FTSEグローバル株価指数へのファストエントリー(早期採用)の対象になるだろうと発表した。上場から1週間後となる31日の終値(指数算出は11月1日から)で組み入れる。正式には上場初日の25日に決定する。
現在の日本株の早期採用の基準は上場初日の終値による時価総額が28.98億米ドル、浮動株時価総額で9.66億米ドルを上回っていることが条件になるという。
野村30%、三菱モルガン30%、JPM6.285%、日興9.668%、大和7.538%、みずほ7.538%、岡三1.023%、東海東京1.023%、いちよし0.791%、SBI0.791%、フレンド0.791%、岩井コスモ0.417%、エース0.417%、東洋0.417%、マネックス0.417%、丸三0.417%、藍沢0.372%、水戸0.372%、HS0.112%、極東0.112%、高木0.112%、立花0.112%、ちばぎん0.112%、内藤0.112%、日アジア0.112%、松井0.112%、むさし0.112%。
FTSE、JR九州の世界株価指数への早期採用を内定(10/20)
FTSEラッセルは九州旅客鉄道がIPOするにあたり、FTSEグローバル株価指数へのファストエントリー(早期採用)の対象になるだろうと発表した。上場から1週間後となる31日の終値(指数算出は11月1日から)で組み入れる。正式には上場初日の25日に決定する。
現在の日本株の早期採用の基準は上場初日の終値による時価総額が28.98億米ドル、浮動株時価総額で9.66億米ドルを上回っていることが条件になるという。