IPO銘柄詳細
コード | 市場 | 業種 | 売買単位 | 注目度 |
---|---|---|---|---|
285A | 東証プライム | 電気機器 | 100株 | S |
注目のIPO銘柄
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スケジュール
スケジュール | |
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仮条件決定 | 2024/12/02 |
ブックビルディング期間 | 2024/12/02 - 12/06 |
公開価格決定 | 2024/12/09 |
申込期間 | 2024/12/10 - 12/13 |
払込期日 | 2024/12/17 |
上場日 | 2024/12/18 |
価格情報 | |
---|---|
想定価格 | 1,390円 |
仮条件 | 1,390 - 1,520円 |
公開価格 | 1,455円 |
初値予想 | 1,400円 |
初値 | 1,440円 |
- スケジュールは上場企業都合により変更になる場合があります。
基本情報
代表者名 | 早坂 伸夫(上場時69歳4カ月)/1955年生 |
---|---|
本店所在地 | 東京都港区芝浦 |
設立年 | 2019年 |
従業員数 | 123人 (2024/10/31現在)(平均46.3歳、年収1045.3万円)、連結1万5152人 |
事業内容 | メモリーおよびSSD(Solid State Drive)など関連製品の開発・製造・販売事業などを営むグループ会社の経営戦略策定および管理 |
URL | https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/ |
株主数 | 6人 (目論見書より) |
資本金 | 10,000,000,000円 (2024/11/22現在) |
上場時発行済株数 | 539,062,500株(別に潜在株式12,465,420株) |
公開株数 | 82,733,900株(公募21,562,500株、売り出し50,380,100株、オーバーアロットメント10,791,300株) |
調達資金使途 | 設備投資 |
連結会社 | 22社 |
シンジケート
公開株数38,849,000株(別に10,791,300株)/国内分
種別 | 証券会社名 | 株数 | 比率 |
---|---|---|---|
主幹事証券 | 三菱UFJモルガン・スタンレー | 8,328,700 | 21.44% |
主幹事証券 | モルガン・スタンレーMUFG | 438,300 | 1.13% |
主幹事証券 | 野村 | 8,767,200 | 22.57% |
主幹事証券 | BofA | 647,400 | 1.67% |
主幹事証券 | SMBC日興 | 7,012,200 | 18.05% |
主幹事証券 | みずほ | 6,643,100 | 17.10% |
主幹事証券 | 大和 | 5,720,500 | 14.72% |
引受証券 | SBI | 738,100 | 1.90% |
引受証券 | 楽天 | 184,500 | 0.47% |
引受証券 | 松井 | 184,500 | 0.47% |
引受証券 | マネックス | 184,500 | 0.47% |
大株主(潜在株式を含む)
大株主名 | 摘要 | 株数 | 比率 |
---|---|---|---|
(株)東芝 | その他の関係会社 | 210,300,000 | 39.68% |
BCPE Pangea Cayman, L.P. | 投資業(ファンド) | 134,112,000 | 25.31% |
BCPE Pangea Cayman2, LTD. | 投資業(ファンド) | 77,400,000 | 14.60% |
BCPE Pangea Cayman 1A, L.P. | 投資業(ファンド) | 48,489,780 | 9.15% |
BCPE Pangea Cayman 1B, L.P. | 投資業(ファンド) | 30,998,220 | 5.85% |
HOYA(株) | 特別利害関係者など | 16,200,000 | 3.06% |
ステイシー・スミス | 取締役会長執行役員など | 3,105,000 | 0.59% |
ロレンツォ・フロレス | 元執行役員など | 388,140 | 0.07% |
早坂伸夫 | 代表取締役社長執行役員など | 372,600 | 0.07% |
渡辺友治 | 副社長執行役員など | 310,500 | 0.06% |
業績動向(単位:百万円)
決算期 | 種別 | 売上収益 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
---|---|---|---|---|---|
2025/03 | 連結3Q予想 | 430,000 | 98,000 | - | 56,000 |
2025/03 | 連結中間実績 | 909,408 | 291,891 | 248,919 | 175,980 |
2024/03 | 連結実績 | 1,076,584 | -252,698 | -343,330 | -243,728 |
2023/03 | 連結実績 | 1,282,101 | -99,015 | -186,443 | -138,141 |
売上収益
営業利益
経常利益
純利益
1株あたりの数値(単位:円)
決算期 | 種別 | EPS | BPS | 配当 |
---|---|---|---|---|
2025/03 | 連結3Q予想 | 107.48 | 1,303.89 | - |
参考類似企業
事業詳細
フラッシュメモリー大手。旧東芝メモリ。米投資会社のベインキャピタル傘下。メモリーと関連製品を製造、販売、研究開発している。米ウエスタンデジタル・グループ(WDG)とは製造合弁契約を結んでおり、両社合わせた世界シェアはビット生産量ベースで約31%(2024年4~6月期)に上る。
社名は日本語の「記憶」とギリシャ語の「価値(AXIA)」に由来する。
〔製品用途別の区分〕
1.SSD&ストレージ
主にPC、データセンター、大企業向けのSSD(メモリードライブ)製品とメモリー製品が含まれる。
2.スマートデバイス
スマートフォン、タブレット、テレビなどの民生機器、車載、産業機器などの用途で使用される制御機能付きの組み込み式メモリー製品が含まれる。
3.その他
SDメモリーカード、USB(汎用直列型転送路)メモリーなどのリテール向け製品、製造合弁会社3社経由で計上されるWDG向けの売上収益などが含まれる。
キオクシアはWDGとの間で、製造合弁会社3社を設立している。同3社から製造委託を受け、無償貸与された生産設備にて生産している。
2024年3月期の連結売上収益の構成比は、SSD&ストレージ48.0%、スマートデバイス34.8%、その他17.3%。主な販売先は米アップルグループ20.9%、米WDG15.8%。
社名は日本語の「記憶」とギリシャ語の「価値(AXIA)」に由来する。
〔製品用途別の区分〕
1.SSD&ストレージ
主にPC、データセンター、大企業向けのSSD(メモリードライブ)製品とメモリー製品が含まれる。
2.スマートデバイス
スマートフォン、タブレット、テレビなどの民生機器、車載、産業機器などの用途で使用される制御機能付きの組み込み式メモリー製品が含まれる。
3.その他
SDメモリーカード、USB(汎用直列型転送路)メモリーなどのリテール向け製品、製造合弁会社3社経由で計上されるWDG向けの売上収益などが含まれる。
キオクシアはWDGとの間で、製造合弁会社3社を設立している。同3社から製造委託を受け、無償貸与された生産設備にて生産している。
2024年3月期の連結売上収益の構成比は、SSD&ストレージ48.0%、スマートデバイス34.8%、その他17.3%。主な販売先は米アップルグループ20.9%、米WDG15.8%。
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・海外販売予定株数(米144A適用):売り出し3309万3600株(配分比率40%)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券の引受比率は合計で22.57%となる。内訳は未定のためここでは暫定的に均等配分している。
・3Q予想はレンジ表示となっており業績欄で記しているのは最低の数字。上限は売上収益4800億円、営業利益1380億円、親会社帰属利益(純利益)840億円、EPS 161.22円。
・普通株の他に甲種優先株式1200株、乙種優先株式1800株が日本政策投資銀行に発行されている。ともに社債型であり、議決権はなく普通株への転換権はない。
・既存株主とグループ役員・元役員などの新株予約権者16名には180日のロックアップが掛かる。
〈前回承認時との主な相違点〉
・証券コード:6600→285A
・世界シェア2位→3~4位
・海外配分比率:65%→40%
・公開株式数:95,518,300株→82,733,900株
売り出し:66,068,900株→50,380,100株
OA : 7,886,900株→10,791,300株
・前回想定価格3960円→前回仮条件2800~3500円→延期→今回想定価格1390円
・吸収金額:3470.2億~ 3782.5億円→2453.7億~3343.1億円→延期→
1000.0億~1150.0億円
・時価総額:2.1兆円→1.5兆~1.9兆円→延期→7493.0億円
・共同主幹事:ゴールドマン・サックスが離脱し、BofAが加入、幹事からはクレディ・スイスが離脱
〈ファーストインプレッション〉
事前観測よりも大幅に安い時価総額となり、さすがに安いのではないかという印象を受ける。通期の業績予想が開示されていないが、仮に4Qも3Q同様に推移するならPERは2.4倍だ。予想BPSが1301円なので、これ以上は落とせないということなのだろうが、ベイン系ファンドの持ち分の評価は4044億円となり、出資時の6070億円を3割強下回る。債務を含めた買収総額2兆円に対し、想定価格によるEV(企業価値)は1.7兆円だ。
ただ米ウエスタンデジタルとの統合構想はSKハイニクスの横やりで暗礁に乗り上げ、先行きは見通しにくい。いっそ横槍を入れてきた相手と統合すればとも思うが、WDとは製造部門を共有しており、WD以外との統合は現実的に難しそう。
ならば日米韓3社統合はどうかというと、この間、業界5位だったSKHはインテルからNANDフラッシュメモリー事業を買収し、2位にのし上がった。彼らのシェアが高まったことで3社連合は独占禁止法の問題が生じる。
そもそも統合破談はベインが買収にSKHを引き入れたことが原因なので、損切りは自業自得ともいえるが、そうしてでもいい加減エグジットしたいということなのだろう。逆にいえば投資家は彼らの足元を見て投資できるということであり、大幅値下げはその結果か。とはいえ統合問題が行き詰まっていることは確かであり、そのリスクと引き換えということになる。
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券の引受比率は合計で22.57%となる。内訳は未定のためここでは暫定的に均等配分している。
・3Q予想はレンジ表示となっており業績欄で記しているのは最低の数字。上限は売上収益4800億円、営業利益1380億円、親会社帰属利益(純利益)840億円、EPS 161.22円。
・普通株の他に甲種優先株式1200株、乙種優先株式1800株が日本政策投資銀行に発行されている。ともに社債型であり、議決権はなく普通株への転換権はない。
・既存株主とグループ役員・元役員などの新株予約権者16名には180日のロックアップが掛かる。
〈前回承認時との主な相違点〉
・証券コード:6600→285A
・世界シェア2位→3~4位
・海外配分比率:65%→40%
・公開株式数:95,518,300株→82,733,900株
売り出し:66,068,900株→50,380,100株
OA : 7,886,900株→10,791,300株
・前回想定価格3960円→前回仮条件2800~3500円→延期→今回想定価格1390円
・吸収金額:3470.2億~ 3782.5億円→2453.7億~3343.1億円→延期→
1000.0億~1150.0億円
・時価総額:2.1兆円→1.5兆~1.9兆円→延期→7493.0億円
・共同主幹事:ゴールドマン・サックスが離脱し、BofAが加入、幹事からはクレディ・スイスが離脱
〈ファーストインプレッション〉
事前観測よりも大幅に安い時価総額となり、さすがに安いのではないかという印象を受ける。通期の業績予想が開示されていないが、仮に4Qも3Q同様に推移するならPERは2.4倍だ。予想BPSが1301円なので、これ以上は落とせないということなのだろうが、ベイン系ファンドの持ち分の評価は4044億円となり、出資時の6070億円を3割強下回る。債務を含めた買収総額2兆円に対し、想定価格によるEV(企業価値)は1.7兆円だ。
ただ米ウエスタンデジタルとの統合構想はSKハイニクスの横やりで暗礁に乗り上げ、先行きは見通しにくい。いっそ横槍を入れてきた相手と統合すればとも思うが、WDとは製造部門を共有しており、WD以外との統合は現実的に難しそう。
ならば日米韓3社統合はどうかというと、この間、業界5位だったSKHはインテルからNANDフラッシュメモリー事業を買収し、2位にのし上がった。彼らのシェアが高まったことで3社連合は独占禁止法の問題が生じる。
そもそも統合破談はベインが買収にSKHを引き入れたことが原因なので、損切りは自業自得ともいえるが、そうしてでもいい加減エグジットしたいということなのだろう。逆にいえば投資家は彼らの足元を見て投資できるということであり、大幅値下げはその結果か。とはいえ統合問題が行き詰まっていることは確かであり、そのリスクと引き換えということになる。
仮条件分析
(BB参加妙味
:B)
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想定価格: 1,390円
吸収資金レンジ: 1000.0億円 - 1150.0億円(今期予想連結PER: -)
時価総額レンジ: 7493.0億円
仮条件: 1,390円 - 1,520円
吸収資金レンジ: 1000.0億円 - 1257.6億円(今期予想連結PER: -)
時価総額レンジ: 7493.0億円 - 8193.8億円
仮条件は想定価格を下限に130円幅で設定された。上限価格は想定を9.35%上回る。
なお、需要状況によっては、仮条件を変更することなく、1112~1824円の範囲で公開価格を決定する可能性があるとした。売り出し株数についても4030万4100~6045万6100株の範囲内、追加売り出し株数も連動して927万9900~1230万2700株の範囲で変更される可能性がある。
ただし、これらは公募売り出し額が800.0億~1312.2億円の範囲となることを要件とするほか、引受価額が会社法上の払込金額(1181.50円)を下回る場合は公募を中止する。
〈強材料〉
仮条件上振れ、超割安、S-1初適用、日の丸半導体最後の砦、ファイントゥ延期、市況底打ち、公開株比率低い
〈弱材料〉
ファンド出口上場、公開規模巨大、統合問題頓挫、関税問題再燃、関心表明なし
〈結論〉
弱めBとする。公開価格が仮条件上限ならば、初値は1520~1600円(中値PER:2.93~3.54倍)を想定する。
前回承認時からの大幅値下げにより割安感が強いうえ、初の「S-1方式」採用により失敗できない案件と化した。米WDとの統合を断念してからの妥協のIPOではあるが、小じっかりしたスタートを切れるとみる。
前回同様、業績予想が四半期のみのレンジ表示のため、どのようにバリュエーションを計るかが最初の課題となるが、今回使用したロイター端末の時間軸に合わせ、今期でも過ぎた四半期分は考慮せず、単純に予想EPSを4倍させて比較することにした。潜在株については新株予約権の行使価格が仮条件を上回るうえ、割合が小さいゆえ考慮しない。
10~12月期の業績は売上収益が前四半期比では-10.6~-0.2%減の4300億~4800億円、営業利益は-41.1~-17.0%減の980億~1380億円と減速する会社予想となっているが、前年同期比では1.7倍前後の売上収益と黒字を確保する。
世界における生成データ量の増加を背景に、引き続きデータセンター・エンタープライズSSD(メモリードライブ)の需要は増加するが、PC・スマートフォン向け需要は季節性要因と顧客の在庫調整により、弱含む状況が短期的に継続する。
仮条件のPERは下限価格で2.16~3.23倍、上限価格で3.54~2.36倍となり、ストレージ(補助記憶装置)競合が10倍前後に並ぶのに比べ、大幅に割安となっている。提携先の米ウエスタンデジタルがやや安く評価されているのに合わせても妥当株価からは半値以下の評価だ。事業買収でキオクシアを抜いて2位にのし上がるSKハイニックスは4.27倍とさらに安く評価されているが、これと比べても安い。業績は前回よりはるかに良いのにもかかわらずだ。想定価格でもある下限価格は解散価値にも近いだけに、ギリギリまで下げたことがうかがえる。
実質損切りになるのにベインキャピタルはよくのんだなあという感想だが、そこはやはり不満なのだろう。売り出すのは持ち株の1割にも満たなく、今回の売り出し株は東芝からの放出が中心だ。ファンドとしてはこれ以上、結論を先延ばしにしたくはなく、とにかくIPOさせることを優先したギリギリの妥協策なのだろう。
ただし、WDはHDD(ハードディスク駆動装置)部門も抱えており、今後はHDD事業に集中すべくメモリー事業のスピンアウト上場を年内までに計画している。2事業の比率は半々といったところで、WDの低評価がメモリー事業のキオクシアとの統合頓挫を嫌気してのことだとみなし、HDD事業のPERをシーゲートに合わせ逆算すると、メモリー事業は5.74倍で評価されている計算だ。
かなりの低評価だが、メモリー業界はサムスン電子の一強に残りはドングリの背比べ。業界下位だったSKHが台頭に戦う存在に躍り出たことで、2位争いが激化しているうえ、統合問題の頓挫で出遅れた状況にある点などがマイナス評価の要因として考えられる。
HDDはSSDの登場時、やがて役割を終えるものと考えられ、実際にもSSDに市場をかなり奪われた。イメージ的にはメモリー事業の方が高く評価されるべきようにも思える。
だが、23年を境にHDD市場の縮小は止まり、反転し始めている。今後は人工知能(AI)で増大するビッグデータの保管場所となるデータセンター(DC)向けを中心に伸びると予想されている。PC向けはノートタイプを中心にSSDが席巻したが、まだまだ記憶容量当たりのコストはHDDが圧倒的に安い。SSDの利点が生きにくいDC向けではまだまだHDDが強いのが実情だ。WDの両事業の業績も直近ではHDD事業の方が伸びているうえ、フラッシュメモリーよりも寡占化が進む。メモリー事業よりつい最近までオワコン扱いだったHDD事業を選ぶのもそうした背景があるからこそだろう。
こうしたことから妥当PERを5.7倍とすると、株価としては中値EPSでは3000円弱、下限では2450円の計算となり、6割以上の上昇が見込めることになる。上限なら3700円と2.4倍に上る。
ただ業績が拡大しているにもかかわらず、前回から半値以下の仮条件は市場の警戒感がよほど強いことがうかがえる。散々ケチの付いた1000億円級の成熟業態の案件が初動でここまで上昇するのはかなり難しく、実現したとしたら主幹事の値付け能力が疑われるだろう。妥当株価といっても通期の予想ではなく、信頼性に欠ける面があるのも否めない。仮条件外の値付け可能性が示され、バリュエーション的には可能性は十分あることにはなるが、ここまでの流れ的には考えにくい。例によって売出人へのリップサービスだろう。
そもそも海外勢との競争が激しいイメージの強い半導体関連はIPOでは人気薄の傾向でもあり、かなり強気な展開でブックビルディングを通過したソシオネクストでも初値は5%超の上昇にとどまった。直近ではリガクが公開価格割れしたままだ。ソシオの上昇率は超えられない壁とみて、想定初値の上限は1600円とする。
一方、今回は初の承認前に有価証券届出書を公開する「S-1方式」を採用しての上場になるうえ、共同主幹事は大手5社がそろい踏みだ。日本でも今後S-1方式が根付くかどうかの試金石ともいえるだけに、万全の販売体制を敷く。ファイントゥデイHDの上場延期で需給への懸念も一歩後退したことから、想定初値の下限は心理的節目の1500円ではなくあえて公開価格と同値で設定する。
吸収資金レンジ: 1000.0億円 - 1150.0億円(今期予想連結PER: -)
時価総額レンジ: 7493.0億円
仮条件: 1,390円 - 1,520円
吸収資金レンジ: 1000.0億円 - 1257.6億円(今期予想連結PER: -)
時価総額レンジ: 7493.0億円 - 8193.8億円
仮条件は想定価格を下限に130円幅で設定された。上限価格は想定を9.35%上回る。
なお、需要状況によっては、仮条件を変更することなく、1112~1824円の範囲で公開価格を決定する可能性があるとした。売り出し株数についても4030万4100~6045万6100株の範囲内、追加売り出し株数も連動して927万9900~1230万2700株の範囲で変更される可能性がある。
ただし、これらは公募売り出し額が800.0億~1312.2億円の範囲となることを要件とするほか、引受価額が会社法上の払込金額(1181.50円)を下回る場合は公募を中止する。
〈強材料〉
仮条件上振れ、超割安、S-1初適用、日の丸半導体最後の砦、ファイントゥ延期、市況底打ち、公開株比率低い
〈弱材料〉
ファンド出口上場、公開規模巨大、統合問題頓挫、関税問題再燃、関心表明なし
〈結論〉
弱めBとする。公開価格が仮条件上限ならば、初値は1520~1600円(中値PER:2.93~3.54倍)を想定する。
前回承認時からの大幅値下げにより割安感が強いうえ、初の「S-1方式」採用により失敗できない案件と化した。米WDとの統合を断念してからの妥協のIPOではあるが、小じっかりしたスタートを切れるとみる。
前回同様、業績予想が四半期のみのレンジ表示のため、どのようにバリュエーションを計るかが最初の課題となるが、今回使用したロイター端末の時間軸に合わせ、今期でも過ぎた四半期分は考慮せず、単純に予想EPSを4倍させて比較することにした。潜在株については新株予約権の行使価格が仮条件を上回るうえ、割合が小さいゆえ考慮しない。
10~12月期の業績は売上収益が前四半期比では-10.6~-0.2%減の4300億~4800億円、営業利益は-41.1~-17.0%減の980億~1380億円と減速する会社予想となっているが、前年同期比では1.7倍前後の売上収益と黒字を確保する。
世界における生成データ量の増加を背景に、引き続きデータセンター・エンタープライズSSD(メモリードライブ)の需要は増加するが、PC・スマートフォン向け需要は季節性要因と顧客の在庫調整により、弱含む状況が短期的に継続する。
仮条件のPERは下限価格で2.16~3.23倍、上限価格で3.54~2.36倍となり、ストレージ(補助記憶装置)競合が10倍前後に並ぶのに比べ、大幅に割安となっている。提携先の米ウエスタンデジタルがやや安く評価されているのに合わせても妥当株価からは半値以下の評価だ。事業買収でキオクシアを抜いて2位にのし上がるSKハイニックスは4.27倍とさらに安く評価されているが、これと比べても安い。業績は前回よりはるかに良いのにもかかわらずだ。想定価格でもある下限価格は解散価値にも近いだけに、ギリギリまで下げたことがうかがえる。
実質損切りになるのにベインキャピタルはよくのんだなあという感想だが、そこはやはり不満なのだろう。売り出すのは持ち株の1割にも満たなく、今回の売り出し株は東芝からの放出が中心だ。ファンドとしてはこれ以上、結論を先延ばしにしたくはなく、とにかくIPOさせることを優先したギリギリの妥協策なのだろう。
ただし、WDはHDD(ハードディスク駆動装置)部門も抱えており、今後はHDD事業に集中すべくメモリー事業のスピンアウト上場を年内までに計画している。2事業の比率は半々といったところで、WDの低評価がメモリー事業のキオクシアとの統合頓挫を嫌気してのことだとみなし、HDD事業のPERをシーゲートに合わせ逆算すると、メモリー事業は5.74倍で評価されている計算だ。
かなりの低評価だが、メモリー業界はサムスン電子の一強に残りはドングリの背比べ。業界下位だったSKHが台頭に戦う存在に躍り出たことで、2位争いが激化しているうえ、統合問題の頓挫で出遅れた状況にある点などがマイナス評価の要因として考えられる。
HDDはSSDの登場時、やがて役割を終えるものと考えられ、実際にもSSDに市場をかなり奪われた。イメージ的にはメモリー事業の方が高く評価されるべきようにも思える。
だが、23年を境にHDD市場の縮小は止まり、反転し始めている。今後は人工知能(AI)で増大するビッグデータの保管場所となるデータセンター(DC)向けを中心に伸びると予想されている。PC向けはノートタイプを中心にSSDが席巻したが、まだまだ記憶容量当たりのコストはHDDが圧倒的に安い。SSDの利点が生きにくいDC向けではまだまだHDDが強いのが実情だ。WDの両事業の業績も直近ではHDD事業の方が伸びているうえ、フラッシュメモリーよりも寡占化が進む。メモリー事業よりつい最近までオワコン扱いだったHDD事業を選ぶのもそうした背景があるからこそだろう。
こうしたことから妥当PERを5.7倍とすると、株価としては中値EPSでは3000円弱、下限では2450円の計算となり、6割以上の上昇が見込めることになる。上限なら3700円と2.4倍に上る。
ただ業績が拡大しているにもかかわらず、前回から半値以下の仮条件は市場の警戒感がよほど強いことがうかがえる。散々ケチの付いた1000億円級の成熟業態の案件が初動でここまで上昇するのはかなり難しく、実現したとしたら主幹事の値付け能力が疑われるだろう。妥当株価といっても通期の予想ではなく、信頼性に欠ける面があるのも否めない。仮条件外の値付け可能性が示され、バリュエーション的には可能性は十分あることにはなるが、ここまでの流れ的には考えにくい。例によって売出人へのリップサービスだろう。
そもそも海外勢との競争が激しいイメージの強い半導体関連はIPOでは人気薄の傾向でもあり、かなり強気な展開でブックビルディングを通過したソシオネクストでも初値は5%超の上昇にとどまった。直近ではリガクが公開価格割れしたままだ。ソシオの上昇率は超えられない壁とみて、想定初値の上限は1600円とする。
一方、今回は初の承認前に有価証券届出書を公開する「S-1方式」を採用しての上場になるうえ、共同主幹事は大手5社がそろい踏みだ。日本でも今後S-1方式が根付くかどうかの試金石ともいえるだけに、万全の販売体制を敷く。ファイントゥデイHDの上場延期で需給への懸念も一歩後退したことから、想定初値の下限は心理的節目の1500円ではなくあえて公開価格と同値で設定する。
公開価格分析
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公開価格: 1,455円
吸収資金: 1,203.8億円(今期予想連結PER: -)
時価総額: 7,843.4億円
公開価格は仮条件中値で決まった。引受価額は1389.89円。売り出し株数、追加売り出し株数上限は変更なく、後者は上限で決まった。ただ売り出しの内訳が変更されており、ベインキャピタル系ファンドからの売り出しは179万6200株削減され、その分は東芝が肩代わりすることになった。ベインの上場時の持ち分は51.64%になる。
訂正目論見書によるとブックビルディングの特徴は、(1)申告された総需要株式数は公開株式数を上回る状況であったことと、(2)需要件数は十分にあったこと――の2点のみで、価格に関しての言及はなかった。
中値決定を受け、想定初値は1400~1500円に引き下げる。三菱モルガンとMSMUFGの引受比率は95:5で分け合う形となっており、あれだけディスカウントしてもなお国内機関投資家の需要が弱いことをうかがわせる。ブックビルの需要状況についても上回るに「十分」の修飾語がなく、件数についても「多数」ではなく「十分」表現にとどまっている。
半面、海外投資家からの注目度は高かったとの観測報道が出ているが、具体的な需要倍率に関しては「複数倍」とだけされ、物は言い様の1桁台にとどまったことをうかがわせる内容だ。パターン的には同じく半導体関連でもあるリガクに近い需給状況と推測する。
リガクに関しては低倍率でブックビルを通過し、公開価格割れとなったわけだが、初値分析にも記した通り、買いはしっかりと入っていた。上場直前になって急速な地合い悪化に見舞われており、仮に一週間上場が早ければ無事に切り抜けていたとみている。ただどちらにしろ薄氷であることには違いなく、初値は公開価格前後に想定し直す。
なお、フラッシュメモリーに関してはPC向けの買い替え需要の鈍さが指摘されるが、来秋にはウィンドウズ10のサポート終了が控えている。業績予想が四半期分しか出されていないことで4Q以降のさらなる減速を心配する声もあるが、もともと次の四半期は顧客の在庫調整を受けての端境期である。さらに減速したとしても中期的には回復が期待できよう。
AIブームにより扱うデータ量の急増を受け、記憶媒体の市況はHDD、SSDともに回復が続くと予想されている。競合各社の関係部門の来期以降の業績についても増収がコンセンサスとなっている。合弁相手のウエスタンデジタルについては、フラッシュ事業の来期増収率は2.3%予想にとどまるものの一応例外ではない。
吸収資金: 1,203.8億円(今期予想連結PER: -)
時価総額: 7,843.4億円
公開価格は仮条件中値で決まった。引受価額は1389.89円。売り出し株数、追加売り出し株数上限は変更なく、後者は上限で決まった。ただ売り出しの内訳が変更されており、ベインキャピタル系ファンドからの売り出しは179万6200株削減され、その分は東芝が肩代わりすることになった。ベインの上場時の持ち分は51.64%になる。
訂正目論見書によるとブックビルディングの特徴は、(1)申告された総需要株式数は公開株式数を上回る状況であったことと、(2)需要件数は十分にあったこと――の2点のみで、価格に関しての言及はなかった。
中値決定を受け、想定初値は1400~1500円に引き下げる。三菱モルガンとMSMUFGの引受比率は95:5で分け合う形となっており、あれだけディスカウントしてもなお国内機関投資家の需要が弱いことをうかがわせる。ブックビルの需要状況についても上回るに「十分」の修飾語がなく、件数についても「多数」ではなく「十分」表現にとどまっている。
半面、海外投資家からの注目度は高かったとの観測報道が出ているが、具体的な需要倍率に関しては「複数倍」とだけされ、物は言い様の1桁台にとどまったことをうかがわせる内容だ。パターン的には同じく半導体関連でもあるリガクに近い需給状況と推測する。
リガクに関しては低倍率でブックビルを通過し、公開価格割れとなったわけだが、初値分析にも記した通り、買いはしっかりと入っていた。上場直前になって急速な地合い悪化に見舞われており、仮に一週間上場が早ければ無事に切り抜けていたとみている。ただどちらにしろ薄氷であることには違いなく、初値は公開価格前後に想定し直す。
なお、フラッシュメモリーに関してはPC向けの買い替え需要の鈍さが指摘されるが、来秋にはウィンドウズ10のサポート終了が控えている。業績予想が四半期分しか出されていないことで4Q以降のさらなる減速を心配する声もあるが、もともと次の四半期は顧客の在庫調整を受けての端境期である。さらに減速したとしても中期的には回復が期待できよう。
AIブームにより扱うデータ量の急増を受け、記憶媒体の市況はHDD、SSDともに回復が続くと予想されている。競合各社の関係部門の来期以降の業績についても増収がコンセンサスとなっている。合弁相手のウエスタンデジタルについては、フラッシュ事業の来期増収率は2.3%予想にとどまるものの一応例外ではない。
初値予想
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初値予想: 1,400円(今期予想連結PER: -)
初値買い妙味: A
初値苦戦を予想する。大幅な値下げによりPER2.26倍の格安値付けとなったものの、ブックビルディングは振るわず。総需要株式数は公開株式数を上回り、件数は十分にあったとのことだが、修飾語の有無から供給を満たす程度の需要しかなかったとみられる。言い換えれば上場後の買い余力はほとんど残っていないと判断できる。
ただ競合のPERが低くても5倍弱に過ぎないなか、これ以上ディスカウントを求められても限度があろう。初値は公開価格を小幅に下回る一方、シンジケートカバーの入らないうちに付くとみる。
フラッシュメモリー世界3位。米ウエスタンデジタル・グループ(WDG)とは製造合弁契約を結んでおり、両社合わせた世界シェアはビット生産量ベースで約31%(2024年4~6月期)に上る。
業績は前期まで市況悪化を受けて2期連続赤字と苦戦していたが、人工知能(AI)ブームを受けて昨年にストレージ(補助記憶装置)市場が好転。今期は3期ぶりに黒字で推移する。次期四半期である10~12月期は前四半期比10.6~0.2%減収、41.1~17.0%営業減益の980億~1380億円の会社予想となっているが、前年同期比では1.7倍前後の増収と黒字転換だ。PC・スマートフォン向け需要は季節性要因と顧客の在庫調整により、弱含む状況が短期的に継続する。
業績予想中値によるEPSを単純に4倍させたPERは2.71倍、下限EPSでも3.38倍にとどまる。通期の業績予想は出していないことに不安を覚える向きもいるが、予想対象期は在庫調整局面の端境期であり、来年にはウィンドウズ10サポート終了も控える。中長期的での四半期業績は再び上向くと期待される。競合各社のメモリー部門の来期以降のコンセンサスも拡大が予想されており、単純な4倍はむしろ保守的な計算だろう。
ストレージ競合各社のPERは10倍前後に並ぶものの、製造部門を共有する米ウエスタンデジタルが7.85倍、インテルのメモリー部門を買収した韓国SKハイニックスが4.92倍と出遅れる。
WDはHDD(ハードディスク駆動装置)事業も手掛けており、足元ではそちらの方が伸びている。今後はHDD事業に専念すべく、メモリー事業の年内分社化を発表している。HDD事業の評価を業界トップの米シーゲートと同水準だと仮定して逆算すると、メモリー事業についてはSKハイに近い4.54倍とさらに控え目に評価されていることがうかがえる。
この4.54倍がメモリー専業であるキオクシアの妥当評価だとすると、公開価格は倍値近くになる可能性を持ち、格安であるといえる。公開価格は中値決定だったが、仮条件は想定価格を下限にした上振れレンジだったのも、意見を聞かれれば十中八九が割安と答えたからだろう。
なのに現実には需要が低調だったのをどう解釈すべきかだが、これはバリュエーション以外の理由がネックとなっているからと考えられる。米WDとの経営統合問題が暗礁に乗り上げ先行きが見えにくくなっている点や、トランプ再選による貿易摩擦問題の再燃が挙げられる。財務体質も有利子負債比率49%に上り余裕は限られる。これらの懸念材料により、割安だとは考えていても社内稟議が通らず行動には移せなかった、といったところか。
メモリー業界は韓国サムスン電子一強であり、SKハイの台頭により2位以下はドングリの背比べだ。そのなかでSKハイだけの評価が突出して低いのは、米国企業ではないからとも解釈できる。サムスンについては別格な存在のうえ、半導体以外の事業も幅広く手掛けるため影響が薄まる。SKハイ株の今年の高値は夏に記録しており、その後にトランプ暗殺未遂事件の起きた7月中旬以降に急落した。以降、さえない展開が続いている。
とはいえ公開価格のバリュエーションはWDから逆算した値やSKハイも下回るわけで、非米国籍としての悪材料を織り込んだとしても割安なことには変わりない。中値決定を受けて売り優勢のスタートを予想するが、こうしたリスクを承知で買いを入れる勢力は皆無ではないだろう。初値は公開価格割れするも引受価額の1389.89円を上回る1400円前後で予想する。
初値買い妙味: A
初値苦戦を予想する。大幅な値下げによりPER2.26倍の格安値付けとなったものの、ブックビルディングは振るわず。総需要株式数は公開株式数を上回り、件数は十分にあったとのことだが、修飾語の有無から供給を満たす程度の需要しかなかったとみられる。言い換えれば上場後の買い余力はほとんど残っていないと判断できる。
ただ競合のPERが低くても5倍弱に過ぎないなか、これ以上ディスカウントを求められても限度があろう。初値は公開価格を小幅に下回る一方、シンジケートカバーの入らないうちに付くとみる。
フラッシュメモリー世界3位。米ウエスタンデジタル・グループ(WDG)とは製造合弁契約を結んでおり、両社合わせた世界シェアはビット生産量ベースで約31%(2024年4~6月期)に上る。
業績は前期まで市況悪化を受けて2期連続赤字と苦戦していたが、人工知能(AI)ブームを受けて昨年にストレージ(補助記憶装置)市場が好転。今期は3期ぶりに黒字で推移する。次期四半期である10~12月期は前四半期比10.6~0.2%減収、41.1~17.0%営業減益の980億~1380億円の会社予想となっているが、前年同期比では1.7倍前後の増収と黒字転換だ。PC・スマートフォン向け需要は季節性要因と顧客の在庫調整により、弱含む状況が短期的に継続する。
業績予想中値によるEPSを単純に4倍させたPERは2.71倍、下限EPSでも3.38倍にとどまる。通期の業績予想は出していないことに不安を覚える向きもいるが、予想対象期は在庫調整局面の端境期であり、来年にはウィンドウズ10サポート終了も控える。中長期的での四半期業績は再び上向くと期待される。競合各社のメモリー部門の来期以降のコンセンサスも拡大が予想されており、単純な4倍はむしろ保守的な計算だろう。
ストレージ競合各社のPERは10倍前後に並ぶものの、製造部門を共有する米ウエスタンデジタルが7.85倍、インテルのメモリー部門を買収した韓国SKハイニックスが4.92倍と出遅れる。
WDはHDD(ハードディスク駆動装置)事業も手掛けており、足元ではそちらの方が伸びている。今後はHDD事業に専念すべく、メモリー事業の年内分社化を発表している。HDD事業の評価を業界トップの米シーゲートと同水準だと仮定して逆算すると、メモリー事業についてはSKハイに近い4.54倍とさらに控え目に評価されていることがうかがえる。
この4.54倍がメモリー専業であるキオクシアの妥当評価だとすると、公開価格は倍値近くになる可能性を持ち、格安であるといえる。公開価格は中値決定だったが、仮条件は想定価格を下限にした上振れレンジだったのも、意見を聞かれれば十中八九が割安と答えたからだろう。
なのに現実には需要が低調だったのをどう解釈すべきかだが、これはバリュエーション以外の理由がネックとなっているからと考えられる。米WDとの経営統合問題が暗礁に乗り上げ先行きが見えにくくなっている点や、トランプ再選による貿易摩擦問題の再燃が挙げられる。財務体質も有利子負債比率49%に上り余裕は限られる。これらの懸念材料により、割安だとは考えていても社内稟議が通らず行動には移せなかった、といったところか。
メモリー業界は韓国サムスン電子一強であり、SKハイの台頭により2位以下はドングリの背比べだ。そのなかでSKハイだけの評価が突出して低いのは、米国企業ではないからとも解釈できる。サムスンについては別格な存在のうえ、半導体以外の事業も幅広く手掛けるため影響が薄まる。SKハイ株の今年の高値は夏に記録しており、その後にトランプ暗殺未遂事件の起きた7月中旬以降に急落した。以降、さえない展開が続いている。
とはいえ公開価格のバリュエーションはWDから逆算した値やSKハイも下回るわけで、非米国籍としての悪材料を織り込んだとしても割安なことには変わりない。中値決定を受けて売り優勢のスタートを予想するが、こうしたリスクを承知で買いを入れる勢力は皆無ではないだろう。初値は公開価格割れするも引受価額の1389.89円を上回る1400円前後で予想する。
初値分析
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初値: 1,440円(今期予想連結PER: -)
/ 上昇率: -1.0%
/ 高値: 1,689円
/ 安値: 1,440円
/ 終値: 1,601円
出来高: 58,604,900株 / 対公開株数: 70.8% / 初値出来高: 6,134,500株 / 初値売買代金: 8,833,680,000円
初値は苦戦するも下落率は1%にとどまった。売買代金は88億円と公開規模が近く公開関割れしたリガクの6割強にとどまったが、売却率が7.4%に抑えられたことで被害は少なく済んだ。仮条件中値による値付けのアナウンスメント効果により、短期筋の事前排除がより進んだ。
寄り付き後は強い展開となった。短期筋が初値で投げた瞬間が絶好の草刈り場となり、1分もたたないうちに残りの公開価格以下の売りも刈り尽くされた。その後しばらくは1400円台後半でのもみ合いとなり、いったん公開価格まで押す場面は見られたものの、公開価格未満で買える機会はなかった。公開株取得者の売りが一巡したとみられる10時過ぎには一段高となり、後場に入るとさらに強含んだ。ただ、後場後半は利益確定売りに押された。
競合に比べNAND型メモリーしかないことや、全世界にけんかを売るスタイルの次期米大統領など懸念材料は多いものの、ここまでディスカウントしてあれば需給がいったん拮抗(きっこう)すれば悪材料は出尽くしだ。
また、ウエスタンデジタルが今年中としていたスピンアウトを完了させれば、キオクシアの妥当株価もより分かりやすくなるうえ、業界再編が再び動き出す可能性もある。スピンアウトについては動きが途絶えており延期の可能性が考えられるが、いずれにしても今の株価は格安としかいいようがない。低調だったブックビルディングを踏まえると、リスクを請け負える投資家は限られるが、だからこそ中長期の株価は強気にみておきたい。
出来高: 58,604,900株 / 対公開株数: 70.8% / 初値出来高: 6,134,500株 / 初値売買代金: 8,833,680,000円
初値は苦戦するも下落率は1%にとどまった。売買代金は88億円と公開規模が近く公開関割れしたリガクの6割強にとどまったが、売却率が7.4%に抑えられたことで被害は少なく済んだ。仮条件中値による値付けのアナウンスメント効果により、短期筋の事前排除がより進んだ。
寄り付き後は強い展開となった。短期筋が初値で投げた瞬間が絶好の草刈り場となり、1分もたたないうちに残りの公開価格以下の売りも刈り尽くされた。その後しばらくは1400円台後半でのもみ合いとなり、いったん公開価格まで押す場面は見られたものの、公開価格未満で買える機会はなかった。公開株取得者の売りが一巡したとみられる10時過ぎには一段高となり、後場に入るとさらに強含んだ。ただ、後場後半は利益確定売りに押された。
競合に比べNAND型メモリーしかないことや、全世界にけんかを売るスタイルの次期米大統領など懸念材料は多いものの、ここまでディスカウントしてあれば需給がいったん拮抗(きっこう)すれば悪材料は出尽くしだ。
また、ウエスタンデジタルが今年中としていたスピンアウトを完了させれば、キオクシアの妥当株価もより分かりやすくなるうえ、業界再編が再び動き出す可能性もある。スピンアウトについては動きが途絶えており延期の可能性が考えられるが、いずれにしても今の株価は格安としかいいようがない。低調だったブックビルディングを踏まえると、リスクを請け負える投資家は限られるが、だからこそ中長期の株価は強気にみておきたい。